男子の恋バナはうるさい
「いえーい!」
「勝ったよー」
試合後の女子が2階に上がってきた。みんなの表情は柔らかだった。
「お疲れ様」
「悠斗ー、、、最期のあれなにー?」
ひかりのアタックの時に、つい口から出てしまった応援が聞こえていた。俺は無言になり赤面する。
「なになに恥ずかしがってんのー?このこのー!」
ここぞと言わんばかりにひかりがからかってくる。恥ずかしくなり、何も反論できない自分がもっと恥ずかしかった。
「まあまあ、ひかりその辺にしてあげなよ。みんなの応援のおかげで勝てたんだし」
ひかりの方をポンとと叩きながら翔が言った。他の女子もうんうんと頷いている。
「翔さん、、、」
「やっぱ翔さんさいこー!」
というように男子は盛り上がっているし、女子も嬉しそうにしていたから良かったが、本当は応援中に何が起こっていたのかは彼女らは知らない。
得点が12-10あたりからその話は始まった。
「なあなあ、彼女にするなら誰がいい?」
「どうした急に」
話し始めたのは将、桐山将だ。
「思春期男子の唐突な疑問だ」
将は男子版ひかりと言っても過言でないほどの陽キャで、思春期男子を詰め込んだ男と言える。
「俺はひかりさん」
「俺もー」
「やっぱ奏さんだろー」
各々の恋人にしたい人を言い出した。やはりクラスの大体がひかりと奏で分かれ、奏は分かるとして、あのひかりがねと納得がいかなかった。
「おいおいー、お前らはどうなんだよ」
俺と一、そして健吾に向かって聞いてきた。
「もっちろん渚さんだよ」
一は即答だった。他の男子と同じく奏のファンであるということだ。
「一、わかってるな。んで、2人は?」
将は興味津々な顔で聞いてきた。そんな将に対して健吾が口を開いた。
「別にいないかな。好きな人そもそもいないし」
「俺も同意見」
誰かを好きになったことがなく、そうなれば必然的にこの人と付き合いたいという気持ちも出てこない。ひかりと翔はずっと一緒だが、友達以上になることは一生ないだろう。
「ちぇー、つまんねーの」
将は俺たちから視線を外し、他の男子の中で同じ話題について話し始めた。
「意外だったよ」
「なにが?」
「悠斗とひかりさん付き合ってるのかと思ってたよ」
急に絶対にないようなことを言われてびっくりした。
「んなわけないだろ」
「ふーん」
絶対にひかりのことを恋愛対象として見ることはない。これまでずっと一緒だがそんなことは微塵もなかった。しかし、健吾は少し疑ってるようだ。
「それはそうと、渚さんたぶん悠斗のこと好きだぞ」
「なにいってんだ?」
最近仲良くなったが、あっちから好意は全く感じないし、ひかりや翔と比べても全然話さないから、そんなことはないだろう。
「いや、最近話しかけられること多いじゃん。しかも、渚さんの目線がお前を向いてるんだよ。今日は13回だ。」
「うわお前、まじかよそんなのみてんのか」
最近視線は少し感じるし、話しかけられることが多かったのもわかる。だが、それ以前に視線を向けた回数もわかるほど奏を見ている一に驚いた。
「そんなの普通だろ。渚さん派の男子はどの男子にどれくらい視線が集まっていたか記録してんだぞ」
「お前ら、キモすぎな」
一のひとつのことに夢中になったら止まらないという性格はよく分かってるが、こんなに悪い方向に行ってしまうとは思わなかった。しかも、この能力持ちが他にもいるということが怖い。
というような話があり、俺の中ではかなり濃い時間だったのだが、何もないことにされた。
「次の試合、何時?」
「3時だよ」
「じゃあ応援行けるね」
健吾が礼儀正しく翔に質問する。あまり親しくしすぎず、かつ親しさも込めていくという、健吾のコミュニケーション能力だ。
「ねえねえ悠斗くん」
そう言って座っている俺の顔を覗き込んできたのは奏だ。
「みてた?わたしの試合」
「見てたよ、がんばってたね」
ふふっと微笑して、俺から顔を逸らした。少し頬が赤かったように見えたが、それがどういう意味かはわからなかった。恥ずかしそうに口を開く。
「次の試合、頑張るから応援しててね」
「もちろん!」
そういってすぐに女子の輪の中に戻っていった。俺の後ろから妬みや嫉妬で刺すような視線を感じた。たぶん気のせいだろう
男子の恋バナはうるさかった




