サッカーの熱はうるさい
「それじゃあ、クラスマッチの競技決めるぞ」
その先生の一言に、教室中がざわつく。来週は一学期最後の行事、クラスマッチが開催される。2日間行われ、運動競技は、バレー、バスケ、卓球、テニス、バドミントン、サッカー、野球があり、文化競技は、オセロ、将棋、チェス、囲碁だ。ちなみに、力の差を考えて運動系は男女別だ。
「クラスマッチかー、一はなににする?」
「運動以外を強く支持する」
「そ、そうか」
一からものすごい意志を感じたので、少しビビった。隣の2人も話していた。
「私はやっぱバレーかな」
「私もかけっちとおんなじー!」
「絶対負けない!!」
翔がメラメラと闘志を燃やした。バレー部魂がすごい。おそらく、たいていの部活動生が自分の競技に出るだろうから、その間で熾烈な争いが起こると予報できる。
「悠斗はなにでるのー?」
「俺はー、、、サッカーにしようかな」
「いいじゃん、ちな俺はオセロにしまーす」
本当に何が嫌で何がやりたいという願望はなかったので、いちばん無難なサッカーを選んだ。
「みんな何にするのー?」
そんな話をしていたら後ろから話しかけられた。声の主は奏だった。
「奏でちゃん!」
「奏はなににでるの?」
「うーんとねー、テニスにしようかなって思ってる!」
テニスをしている姿を想像すると、やはり美しく見えてしまう。
「お、おい、まじで仲良くなったのかよお前ら」
「なんだ?」
俺だけに聞こえる小声で一は何か言ってきた。奏は男子からもちろん人気がある。なので、一も奏を雲の上の存在のように感じていた。
「まあ、前話して仲良くはなったな」
「お前、結構すごいことだぞ」
「悠斗くんと一くんは何に出るの?」
急に話しかけられた一は体をビクッとさせて、オドオドした声と表情になっていた。
「俺はサッカー」
「いいね!一くんは?」
「えっ、あっと、俺は、、、俺もサッカーです!」
「えっ!?」
さっきはオセロと言ったのに、急にサッカーをすると言い出した。なんでそうしたのか疑問に思ったので、小声で聞いてみた。
「なんでオセロって言わないんだよ」
「だったサッカーの方がかっこいいじゃんかよ」
理解した。奏の前だからオセロなんていう地味な競技ではなく、サッカーというかっこいい競技にしたかったのだろう。
「一くんもサッカーなんだ。じゃあ優勝してね」
「はい!もちろん!」
いつもと違って、ひかり並みの元気さがある一はかなりの違和感があった。
最終的に俺たちのクラスから出場する競技は、ひかりと翔が出るバレー、俺と一が出る1、2組合同のサッカー、奏が出るテニス、そして将棋だ。ちなみに、オセロだが、一が抜けたことで最低人数に達さず出場できていなかった。
「いやー!楽しみだね!」
「私たちの応援きてよね」
「翔は心配いらなくないか?」
このクラスには女子バレー部が3人いるし、翔は部の中でトップクラスの実力を持つ。あまり負けるイメージがわかない。
「いやいや上手い先輩も沢山いるし」
「誰かさんが足引っ張らなければな」
一がそう言うのと同時に俺たちはひかりの方を見た。
「はぁ!?私バレーできるし!」
ポカポカと一を叩きながら怒る。ひかりは運動能力は高いが、球技になるとダメダメだ。
「ひかりは球技ダメだもんねー」
「かけっちまでー!、、、否定できないけど、」
「大丈夫。私たちに任せてよ」
ひかりが翔に抱きついて、「ありがとー!」とワンワン泣いた。
「てか、あんたらは勝てそうなの?」
片手でよしよしとひかりを撫でながら、俺たちのサッカーがどうなのか聞いてきた。
「正直、な」
「ああ、俺たちのチームにサッカー部2人しかいないんだよな。俺は運動できないから足引っ張るだろうし」
俺たちのチームは人数が足りなかった関係で、1組と2組の合同チームになった。その中でもサッカー部が2人という少なさだ。他のクラスには多くのサッカー部が在籍しているので、勝つのは難しいだろう。
「なるほどねー。あんたらも大変なわけだ」
「大丈夫!みんなで応援行くから!」
さっきまで泣いていたが、急に元気になりだした。情緒がどうなっているのかわからない。
「え、みんなって、渚さんも?」
「もちろんでしょ!!」
「うぉぉー!やってやるぞー!」
奏が来ると聞いただけで一のやる気ゲージがマックスになった。これほど人を動かせる奏は天才としか言いようがない。
「やるぞ!優勝!!」
「おーーー!」
なんでかわからないが、他のサッカー選択の人と円陣を組み、声かけをしていた。俺も引っ張られ輪の中に入ったが、周りの熱が強すぎて頭がこんがらがった。
「ねぇかけっち、男子って単純だねー」
「んね」
クラスマッチへの熱は誰よりも大きい一であった




