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告白と未来

 夕暮れのグラウンドは、今日一日の熱気を冷ますように、静かな空気に包まれていた。オレンジ色の光が、赤土のトラックや、緑の芝生を柔らかく染めている。大会の興奮も冷め、部員たちは次々と帰っていく。残ったのは、僕と美咲だけだった。


「……今日、ありがとうございました。先輩のおかげで、自己ベスト出せました」


 息を整えながら、彼女が小さく笑う。その笑顔は、夕陽に照らされて、僕には何よりも輝いて見えた。大会という大舞台で、彼女が全力を出し切れたこと。そのことが、自分のことのように嬉しかった。


 そして、その嬉しさが、彼女の笑顔から伝わってくる喜びと混ざり合い、僕の胸を熱くする。


 僕は深呼吸をして、言葉を探した。頭の中では、何度も何度も練習したセリフが、ぐちゃぐちゃになって消えていく。今、僕の心臓は、100メートルを全力で走った後よりも速く脈打っていた。


「……美咲、今日ずっと思ってたことがある」


 彼女は驚いたように、大きく目を見開いた。その瞳が、僕の言葉を待っている。言葉を続けるべきか、それともこのまま何も言わずにこの時間を終わらせるべきか。一瞬だけ迷ったが、彼女の真剣な眼差しが、僕の背中を強く押した。


「俺……ずっと、お前のことが好きだった。美咲の、ひたむきに走る姿に、俺はいつも励まされてた。…俺の隣で、ずっと走っててほしい」


 沈黙が一瞬だけ流れた。まるで時間が止まったかのようだった。そのあと、美咲の白い頬が、夕焼け色に赤く染まり、でも嬉しそうに微笑む。


「私も、先輩のこと……好きです。初めて先輩の走りを見たときから、憧れてました。……先輩の、隣で走れたらって、思ってました」


 その瞬間、僕の心臓は喜びで爆発しそうだった。グラウンドに吹く風が、僕の頬を柔らかく撫でる。時間が止まったのではない。僕たち二人だけの、新しい時間が、今、動き出したんだ。


 僕は、自然と美咲の小さな手を取った。僕の大きな手のひらが、彼女の柔らかい手のひらを包み込む。彼女の手は、少し汗ばんでいて、それがまた愛おしかった。


「これからも、一緒に走ろう」


 そう言うと、彼女は僕の顔を見上げて、満面の笑みで頷いた。


「はい、先輩」


 陸上も、恋も、これから二人で全力で進んでいく――


 夕陽に照らされるトラックの先に、僕たちの未来が広がっていた。それは、ただ走るだけの日々ではなく、僕たち二人が互いに支え合い、高め合っていく、新しい日々の始まりだった。


 きっと、この先もたくさんの困難があるだろう。それでも、僕の隣には彼女がいて、彼女の隣には僕がいる。その確信が、僕を強くしてくれた。

読んでくださりありがとうございました。

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