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48.お別れの日

当日は、笑顔で送ると決めていた。


一年に一回は会いに来る。そうサラが言ったから、それを楽しみにすれば良い。


以前日程の話になった時、


「なんか一年に一回の逢瀬って『織姫と彦星』みたいだから、その日は『七夕』にしたいとこなんだけど。テスト周辺の可能性高いから悩む……」


サラはウンウン唸っていた。

よくわからないなりに、サラがスケジュールで困っていることは伝わったので、私の誕生日である3月30日を、ニオと相談して提案してみた。


「え!?超奇遇!!私も同じ日!」


同じ誕生日の人と出会うとただでさえ嬉しいのに、それがサラとだなんて!と運命を感じた私たちはひとしきり大騒ぎした。


「ていうか、いいの?絶対予定あけやすい辺りだから助かるし、同じ日なのも最高なんだけど、ティナ生誕祭とかって、ふたりのラブラブイベントじゃないの?」


「『生誕祭』……。なんか凄い凄そう」

私の語彙が死んだ。


「うん、凄い凄そう……。だけど僕たちは大丈夫。家族でパーティするだろうし、サラが来てくれたらティナも両親も喜ぶよ。でもサラの世界のお祝いがあるかな?」


「今のところそんな予定ないよ!推しの生誕祭より勝るものなんてないし、もし何かあっても数日のズレならモジャモジャに何とか便宜図らせてやる!!じゃあそうさせてもらうね!ありがとう!」


と顔を綻ばせていた。



国民や上流階級の方々に帰還の挨拶を終えたサラは、スーツケースを2つ持ち、来訪したときと同じ広間に立った。


サラの希望で、この場にお偉い様はいない。

皆なんとか立ち会おうとしていたが、

「私、一応最高権力者だよね?奇跡は使い果たしたけど、まだ創世神とは繋がってるからね?」

というサラの一声で泣く泣く退散していった。

結果、私とニオと、トマさんと、ニオティム後援会員の人たちだけでの見送りだ。


「じゃあ、次はティナ生誕祭ね!」

差し出されたサラの手を、私は握って苦笑した。


「サラ生誕祭でもあるよ」

「ふふ、なんか自分の誕生日を生誕祭とか笑える」

「うそ。それサラが言う?“救国の乙女”なんだから、よっぽど私よりも生誕祭感あるよ……」

「あ、忘れてたその肩書」

「『なんでやねん』」


私は裏手でパシッと叩いてみた。

「ひゃああ、日本人じゃない人のツッコミ新鮮〜!」

いつもと変わらないノリに私は笑った。


「ねえ、ティナ」

「なに?」

「これ大事にするね。多分部屋の色を意識してくれたと思うんだけど、この石、貴方の瞳と同じ色なの。ゴールドも入ってるからすっごくティムって感じ!」


そう言ってサラは婚姻の儀で交換したパライバトルマリンのイヤリングを弾いてみせた。


「ちなみにね。私があげたそのイヤーカフは、男性モノだけど、ちゃーんとニオっぽい色の石選んであるから!私、あの時ちゃんとわきまえてたから!」


そういえば、あの時からサラは『ニオティム推し』だった。

何よりも“サラっぽい”チョイスなのだと知って、私は妙に感動した。

「ありがとう、私も大事にするね」


ブラックダイヤのイヤーカフを触って見せると、私は後ろに退いた。


入れ替わりでニオとトマさんが前に出る。

ニオが手を差し出して、サラがそれを握った。


「サラ。サラのおかげで僕の人生は本当に変わった。出会ってから気づいたことの多さにびっくりしてる。助けてくれてありがとう。振り回されることも沢山あったけど、色々……、言葉に言い尽くせないほど感謝してるよ。また会えるのを楽しみにしてるから」


「ニオ。いっぱい迷惑かけたね!でも沢山の潤いをありがとう。無茶振りにも応えてくれて助かった。本当に信頼してたよ。楽しかった、また来るね」


ニオと手を離すと、次はトマさんと握手した。


「サラ様、貴女の来訪する時代に生を受けて良かった。あの日、奇跡に立ち会えたことは俺の誇りです。2日程の旅でしたが、ご一緒できてすごく楽しかったです。ありがとうございました」


「トマと軽口叩き合うの、私も楽しかったよ。貴方の救いになれたならよかった。素敵な旅をありがとう」


トマと離れると、次は侍女さんや上流階級のお嬢様方といった後援会員たちだ。


「サラ様ぁ〜!お仕えできて光栄でした!」

「私たちニオティム後援会は、これからもニオ様とティナ様を陰ながら応援し、ニオティム小説や絵画を発展させていくことを誓います!」

「「「「誓います!!!」」」」


サラの教えた『卒業式スタイル』で、彼女達は宣誓した。サラは彼女達の手をひとりひとり握りながら「よろしくね!」と後を託していた。


このとき、私は侍女さんの一人に協力を仰いでいた。後ろに退き、皆が挨拶をしている間に身を隠し、手早くある衣装を着てヘアセットをしてもらった。


私は自分の中に“ティム”を入れて、サラの前に立った。



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