34.きっと、もうすぐ
サラ付きを希望する侍女が増えた。取り巻きもできた。
それは明確に、あの劇の後からで、サラは着々と『お仲間』を増やしているようだった。
ニオと私を絡ませては、全員で分担しつつ何かしらメモをしていると思っていたが、どうやら小説なんかも書いてもらっているらしい。
怖い。本当に怖い。
今はサラと大勢の取り巻きの前で、騎士衣装を着た私は、同じく騎士衣装のニオに『壁ドン+顎クイ』をされていた。
画家が黙々とその光景をスケッチしている。
「あ、あの。まだ……?」
恥ずかし過ぎて顔を伏せそうになると、そのたびにサラから指示を受けているニオが、私の顎を上向かせる。
「はあ、生殺しが過ぎる」
ニオの呟きを聞きもらさなかった彼女たちが、きゃあ、と色めきだった。
最近のニオはなんだかヤバイ。
殺気のような色気のような、よくわからない凄みが身体の内側から溢れ出てきている気がする。
「耐えられなかったらキスしてもいいからね?」
ポンポンと花を咲かせながらサラが言う。
「サラ様。こんな大勢に見られている状況で、出来る訳ないですよね?」
苛立ったニオが怒りをぶつけ始めた。
「少なかったらできるの?!人払いしようか?てかニオ、また敬語になって……」
「こんなの仕事だと思わなきゃやってられません。敬語で理性保ってるんだから、黙っててくれませんか?!」
いつになく感情的なニオに、また周りが歓んだ。
そして怒鳴られたサラは、ウルッと目を潤ませた。
「なにそれ最高……。愛しい相手が傍にいるのに、職場だからって、場を弁えて欲望を必死で抑えるニオ尊い……。そしてずっと真っ赤なティム、かわいすぎ愛しい……」
ブワワッと溢れるように花が咲いた。
その量に、私もニオも我に返って言った。
「あ、これ。もしかして」
「もうすぐじゃない?」
確実に、別れの時は近づいているようだった。