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33.なんという辱め


舞台は『ネルスの町』から始まる。


小さな男の子と女の子が遊んでいた。すると様子を見に来た女の子の両親が、怪物に連れて行かれてしまう。

『おとうさん、おかあさん……』

泣き暮れる女の子に、男の子が寄り添う。

『シア。君は一生俺が守るよ』 


“シア”は幼馴染の“レオ”の家に引き取られたが、レオの家は共働きだった。

この町の治安は悪く、女の子一人で留守番をすることがあれば、レオ一家に心配をかけてしまう。

そこでシアは、“シグ”と名乗り、男装して生活することをレオ一家に提案した。


彼女の両親は行方知れずなまま10年が過ぎた。

そんなとき、怪物の情報が手に入る。

異世界から聖女が召喚され、彼女と共に闘う人物を国の重鎮たちは募った。聖女を護衛しなければならないので、その資格があるのは男のみ。


レオは剣の腕前が突出していたため、国側から打診が来た。彼は悩んだが、シアの両親を助けるため、参戦を決意した。


怪物への恨みが人一倍強く、レオと離れたくないシアも、魔法の才能があったため、“シグ”として国にアピールした。シグも国に無事認められた。


シグとレオ。ふたりは協力して聖女を支えつづけた。両想いのはずなのに、性別を偽っていることもあり、表面上の付き合いしかできなかった。


日常のパートが終わり、戦闘につぐ戦闘。

そして怪物のアジトでの最終決戦。


聖女の魔力は尽き、薬も使い果たしていた。

打開策はただひとつ。“愛の力”を得ることで、聖女の奇跡は発動するのだが、その愛の力を得る術はなかった。


意図せぬ怪物の攻撃により命を喪ったシグを必死に心臓マッサージする聖女は、初めてシグが女性であることに気づく。


困惑しながらもシグとの楽しかった日々を思い出し、懸命に蘇生措置を行っていると、フラフラとレオがシアに近づいてきた。


『シア……』


その瞳は絶望に染まっていた。

項垂れる彼に怪物が近づく。

『シアのいない世界なんて意味がない。いっそ、俺も殺してくれ』


レオはポケットからペンダントを取り出して口付ける。

それは昔、シアから誕生日に贈られたものだった。


『シア。君は俺のすべてだ。永遠に愛している』


そう言ってシアを抱き寄せキスをした時、怪物の爪は振り下ろされた。

しかし間一髪。

愛の力で聖女の奇跡は発動し、シアは蘇り、怪物は消滅した。


3人は手を取り合って喜び、怪物に捕らえられた人々を助け、世界に平和が戻った。

レオとシアは聖女の祝福を受け結婚し、幸せに暮らしました。


〜Fin〜



「ブラボーーーー!!!」


拍手喝采の観客(主にサラ)をよそに、私は必死で何かを考えようとしていた。

なんだか登場人物に、違和感というか、既視感的なものがあった気がするんだけどな?


カーテンコールが目に入らない。

私はドッと襲ってきた疲れを隠すことが出来なかった。


「なんだこれ……羞恥プレイか……?」

ニオが頭を抱えて言った。


「ふたりを参考にしてね、脚本家さん付けて考えたんだぁ!まあ本家ティムの美しさには敵わないけど。よく出来てるでしょ?私毎日通う予定なんだー!」


キャピキャピしているサラに、どうしても私は物申したかった。


「なんか、あの。愛の誇張凄くない……?これ広まるの?

オレもう外歩けないよ……」


「え?何言ってるの?

ラストのシチュエーション、セリフは多少変えてるけど、超あんな感じだったよ。超忠実だよ?

めちゃくちゃ皆見てたから、既に広がってるトコには広がってると思うよ」


「……え」

「本家ニオのは、最近使ってる万年筆だよね?あの時出してたの」


バッとニオを振り返ると、顔を隠して呻いていた。

耳はめちゃくちゃ赤かった。


「ああ、もうさ。あの時萌えるのは不謹慎だと思ったけど、過去となった今ではただただ旨味しかないのよ!!『ティナ……、ずっと愛して(←低音ボイス)「サラ様勘弁して下さい敬語に戻しますよ!!」


「ええぇ、かっこいいのにぃ」


その後、都では『レオシア』という言葉が流行する。

元ネタとなった私たちも、ふたりで歩けば当然のように『ニオティム』と囁かれ、数々のあることないことエピソードが横行し、本気で暫く外を歩けなくなった。

──この辱めは一生忘れない。

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