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第一話

 導は次の日も来てくれた。

 私はとりあえず、昨日もらった苺についてお礼を言った。

 その苺はとても美味しくて、すぐ食べ尽くしてしまった。

 酸味が強く、その中にほのかな甘みを感じる苺だった。

 私は酸味が強いものが好きなのかもしれない。

 導は「また持ってくるよ。親戚の苺農家の方からの貰い物なんだ」と言ってくれた。

「昔の私は酸っぱいものが好きだった?」

「酸っぱいもの言っても梅干しとかレモンとかそういうのはあんまり食べてたイメージがないけど、ポンカンだったり、それこそ苺だったり、甘酸っぱい系の果物は好きだったかも。」

 導の話からすると、味覚においては今の私と過去の私とであまり違いはないのかもしれない。

 実際、今の私の体と過去の私の体の違いなんてほとんどないわけだし、好きな食べ物が同じことなんて何も不思議に思うことはない。

 食べ物の好き嫌いは精神ではなく、体に起因するものなのだろう。おそらくだが。

 そう思うと、私の癖だったり行動だったりも過去の私と似ている可能性があったりするのだろうか。

 はたまた、癖や行動は記憶に起因するもので、記憶を失った私には残っていないものなのだろうか。

 私を使って実験をすれば、論文の一枚や二枚は書けそうなものだ。

 思考がまとまったので導の方を向くと、彼はニマニマとした笑みを浮かべて私の方を見ていた。

 一瞬、鳥肌が体を駆け巡った。

 前の貼り付けたような表情もキモさを感じたが、私を面白がるようなこの表情も同等のキモさだ。

「そんなジトーっとした目を向けなくてもいいじゃん」

 彼は不満そうな表情だ。

 その気持ちの悪い表情が悪いという他ない。

「なんでそんなにニマニマとしているのでしょうか?」

「さっきみたいに、考えると止まらなくなる様子が過去の結珠にそっくりだっただけなんだ。記憶がなくてもこうも似るものかと。ああやって考えている時の結珠は可愛いんだよな。口を開くとお説教ばっかりだけど」

 簡単に可愛いなんて言いやがって。

 導は恥ずかしくないのかな。

 いや、そんなわけない。

 導には私に見せてない素顔がある。

 私のサイドエフェクトがそう言ってる。

 実際、全部が全部作り物ではないのだろうが、導が私に一切の繕いもなく接していることはないだろう。

 というか説教ばっかりってなんなの。

 ツッコミどころが多いのが悪いでしょ。

 私は導が猫被りをしていると断定して、その仮面をどうにかして剥ぐことを決心した。

「…というか、なぜ今日も来たんですか?」

「なぜって、それは結珠が心配だからに決まってるだろ」

 彼はその胡散臭げな笑顔いっぱいの表情でそう言った。

「別に私はあなたに来て欲しいなんて頼んでいません。大体、彼氏ってなんですか。私はまだ信じていませんよ」

 こんな胡散臭いやつが私のタイプなわけないんだよな。

 彼が本当に私の彼氏なのかは未だに疑問の多いところだ。

「そう厳しいことばっかり言わなくてもいいじゃん。一旦友達からでもいいから仲良くしようよ」

 うっ、少し鳥肌がたった。

 こういうのが嘘っぽいというかなんと言うか。

 とはいえ、そんな悪意は感じないし、本当に嘘を言ってるわけでもないと思う。

 私は何に違和感を感じているんだろう。

 強いて言えば彼は無理をしているような気がするからなのかもしれない。

 私は彼の心の内を見抜こうと思い、彼の瞼と瞼の細い間にある黒目をじっと見つめた。

 彼は私に負けじとじっと見つめ返してきた。

 彼はきっと優しいのだろう。

 こんなにぶっきらぼうな私のところに二日連続で来てくれる。

 その時点で優しいと私は思う。

 それとも前の自分がすごい人徳の持ち主なのか……いや、それはないか。

 たくさん人徳があれば、もっとお見舞いに人が来てもいいものだし、何より今の私の人格が元の私に似ているのだとしたら私は万人から好かれるような人間ではないと思った。

 ただ、私の性分として嘘が気になるのだ。

 ありのままであって欲しい。

 そういうきらいが私にはある。

「…そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど」

そう言って導は窓の外に顔を向けた。

「……あっ、ごめん考え事してた」

 さっき導から指摘された、前の私と似た考えすぎる癖が出てしまった。

 とっとと思考をまとめてしまおう。

 結論として、導はおそらくだが何か目的を持ってわざわざ苦手なキャラを作って私に会いに来てくれている、私はそう解釈した。

 そして、今の私は彼の猫被りの違和感よりも彼が企んでいることの方に興味が湧いてきている。

 そこで私は、違和感の問題は先送りにして甘んじて彼の作戦に乗っかってあげることにした。

「わかった。じゃあ何をするの?」

 そう言うと、彼は私が話に乗っかると思っていなかったのか少し面食らった表情をしていた。

「…じゃあ、ここは一つ、花札をやってみないか?」

 そう言って彼は自分の鞄から花札を取り出した。

「ルールは覚えてる?」

 そりゃ、記憶喪失だから忘れてるに決まって……

「…なんかわかるかも」

「え?本当?…そっか覚えてるんだ」

 彼は嬉しそうな表情をしていた。

「結珠記憶喪失になる前も花札をやってたんだ。もしかしたら覚えてるかなって思ってたんだけど覚えてて良かったよ」

 花札を混ぜ終えた後、どの役を取り入れるかについて決めて試合を始めた。

 12回戦の末、結果は私の完勝だった。

 あまり思考はしていなかった。

 なんとなく、いいと思ったカードを出し続けていたら勝ってしまった。

 これはあれだ。前頭葉ではなく大脳基底核が働いてるってやつだ。

「つ、強すぎる。今なら勝てるかと思ったけど、その強さはいまだに健在か」

 彼は頭を抱えて項垂れていた。相当勝ちたかったようだ。

「記憶喪失の女の子相手に本気で勝とうとしてたのか導、君は?」

「記憶喪失前の君の腕前について知っていれば、手を抜くなんてことをする奴はいないよ。記憶喪失の状態であれ僕も一回くらいは君に勝ってみたかったのさ」

 記憶喪失前の私は相当な花札実力者だったらしい。それにしても、以前の自分か…

「ふとした疑問なんだけど、記憶喪失前の私ってどんなだったの?」

 彼は少し間を置いてから口を開いた。

「記憶喪失前の君は僕にとってはクールでなんでもできて、本当に憧れだったんだ。僕はいつか君のようになれたらってよく思っていた。でも…」

 彼は一瞬暗い表情をしたように見えたが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

「本当に格好良かったんだよ」

彼は少し笑ってから今日はそろそろ用事があると言って帰っていった。

結局、2本目を出すの死ぬほど遅くなったー。設定もかなり忘れてるけど、上手い感じにまとめていくぞ!

p.s.

1000文字程度しかなく、物足りない気がしたので結構加筆しました。読んでね♡2025/8/17

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