あの夏が飽和する
うちわ卓で行われたセッションのpc目線のssです
親友に呼ばれた
親友いわく、「人を殺した」らしい
親友いわく、「自分が許せない」らしい
親友いわく、「人のいない所で死ぬ」らしい
僕自身も人を殺した事があるから気にしなくていい、証拠隠滅くらいなら手伝う、と言ったが、その意志は揺るがないらしい。
最期に一緒に出かけよう、と言われた。
特に断る理由もないし、2人で少し出かけた。
人のいない所へ、親友の死に場所へ、2人の思い出の場所へ。
人のいない田舎へ行った、川へ行った。
綺麗な川だ、空気が澄んでいてとてもいい場所だ。
テントを立て、2人で夜が更けるまで話し込んだ。
僕の経験した不思議なことを沢山話した、親友の話も聞きたかったけど、聞けなかった、多分辛いことも話したくないこともあったのだろう。
僕の話を聞いて親友は笑ってくれた、楽しんでくれた、辛そうだった親友の少しでも助けになれば良かった。
最期の旅行とは言ったが、僕は親友を死なせるつもりはなかった、この旅行で少しでも親友の気持ちが楽になれば、現実に向き合う時間が取れれば、そういう気持ちだった。
次の朝、親友の声で目が覚める。
朝食を食べ、ゆっくりと話す、今日は目的地に向かうらしい、おそらく「あの場所」だろう、いくら僕だってここまで来れば分かる。
ゆっくりと目的地まで、他愛もない話をしながら山道を歩いていく。
ふと、後ろから何か音と気配を感じる、おそらく警察とか、そこら辺だろう。
僕は親友を連れて逃げた、目的地は知っている、親友の手を引き、「あの場所」へと向かう。
目的地に着く、やっぱり「あの場所」だ。
僕達の出会った思い出の場所
君の死のうとしていた場所
僕の生きようとした場所
いつ見ても綺麗な場所だ、後ろから追ってきていたのはやっぱり警察だ、親友を引き戻そうとした、親友の置かれた状況を考えればそうなるのも分かる。
親友を説得しようとした、その瞬間
「それじゃあ無月とはここでお別れ」
親友に突き飛ばされた
「…ありがとね、無月、ここまで付き合ってくれて」
「一緒にいて最後まで楽しかったよ」
「ありがと、来世でまた遊ぼうね」
「どうして?」そう考える間もなく、僕は背後の人達に受け止められた。
普段なら全然なんて事ない筈のその突き飛ばし、親友に対して油断、いや、油断ではなく気を許していたからだろうか、何も抵抗出来ず集団の方へよろけていってしまった。
よく見ると彼女の手にはハサミが握られていた。
困惑している僕を後目に、彼女は叫ぶ。
「ここにいる人達!!聞け!!!」
「私は今から死ぬ」
「誰も近づかないでね」
「無月!!!またね!!!」
僕は理解する、そして応える
「…あぁ、またな、いつか会いに行くよ」
そして彼女は満足そうに笑い、その手に持ったハサミで首を切った。
その細い首からは紅い血が、彼女の白い髪とは対象的な赤が、夕焼け時の空へと飛び散る。
彼女の物語は、ここで幕を下ろしたのだ。
夏の暑さが身に染みる、ああ、夏が、僕らの旅が終わったんだ。
―――数ヶ月後
僕は彼女の墓参りに来ている。
「久々に来たなぁ、墓参りとか」
「さて、あいつの墓は…っと、あそこか」
「おーい、会いに来たぞー、元気してるかー…って、まあ聞こえてるわけもないか」
「お前の分もしっかり生きるからな、僕がそっちに行くまでちゃんと元気にしてろよ」
「じゃ、今度また来るよ、またな」
僕は彼女を救うことは出来なかった。
でも、彼女は僕に「またね」と言った。
いつか、「また」会えるはずだ。
その事を胸に、僕はこれからも生きていく。
そして、また、夏が来る。
やっぱり楽しいね、ss書くの
オリシ作って回してくれたyuzuさんに圧倒的感謝