病ンデル童話選【シンデレラ】
グロ・サイコ・殺人・厨二病要素満載ですのでご注意。
私はシンデレラと呼ばれていました。
本当の名前ではありません。
かまどの前、消し炭や灰の中にうずくまっていた私に継母と姉達が付けた名前です。
父の死後、継母や姉達には厳しく躾けて頂きました。
お掃除、皿洗い、水汲みとありとあらゆる、下働きがするような家事をひと通り。
いいえ、決して恨んでなんていませんわ。
だってこれは、お母様たちの愛だったのですから。
ぐずでのろまな灰被りの醜い私がこれから先、一人でも生きていける様にと。
憐れんでくれての温情。
継母や姉達の厳しい愛のムチだったのです。
けれども。
そんな私の日常ははある日、優しい魔法使いによって終わりを告げました。
魔法使いは私に与えてくれたのです。
金色の美しい馬車に金糸銀糸のドレス。
そして輝くガラスの靴と・・・貴方の愛を。
「君は誰よりも美しい」
貴方はそう言って、私に愛をささやき、口づけを送ってくださった。
そして私は貴方の妻となり・・・この国の王妃となりました。
私に祝福の言葉を送ってくれる、優しいこの国の人々。
おめでとうシンデレラ。君はとても恵まれていたね。運が良かったね、と。
・・・ふふ。
――皆の祝福に私は嗤う)。
恵まれていた? 運が良かった?
冗談じゃない。
これはね、計算し、嘘を付き、必然を重ねて手に入れた幸せよ。
運なんてそんなぬるい言葉で片付けないで。
私の人生は嘘によって壊された。
初めに、私に嘘を付いたのは死んだ父。
「一生、おまえの母さん以外は愛さないよ」
母の葬儀の日、そう私に言った父は舌の根も乾かないうちに新しい母と姉を連れてきた。
「実の子と変わらぬ愛をあなたを約束するわ」
父が婚約した日、そう言った義母は父が死んだ途端、私を嫌悪し、虐め抜いた。
「あなたみたいな美しい妹が出来て私達は幸せよ」
父が再婚した日、そう言った姉達は灰まみれの私を見て、哀れでみすぼらしいとお腹を抱えて笑ったわ。
世の中は裏切りと嘘ばかり。
そうよ、騙される方が愚かなだけ。
嘘をつかれ、騙されても泣くしか出来なかった過去の私はなんて馬鹿だったのかしら。
だから私は・・・計算し、嘘を付く事にしたの。
私は誰よりも美しい?
そんなの知っていたわ。
だから私は美しい顔を灰で塗りたくり、豊かな胸と華奢な体を隠すためにぼろをまとい、かまどでうずくまっていたのよ。
・・・格下の男達に見つからない様に、その時が来るまで、じっとね。
魔法使いなんているわけない。
私は母の墓を暴き、一緒に埋葬された副葬品を全部売ったの。
母の墓以外にも、墓地にある全ての墓を暴いたわ。
そして手に入れた、金色の馬車に錦糸銀地のドレスと輝くガラスの靴。
身だしなみさえ整えれば、誰よりも美しい私が王子の心を捕らえるのは容易な事。
靴を落としたのは偶然じゃないわ。
わざと落としたのよ。
そうすればミステリアスな私に王子はますます夢中になって、国中を血眼になって探すでしょう。
思惑通り、王子は私を探しだし、私は晴れてハッピーエンド。
私は嘘と計算で、すべてを手に入れたのよ。
そうだわ、記念にお姉様達にはこのガラスの靴を差し上げましょう。
あんなに履きたがっていたんですもの。
でも、この靴はお姉様達には小さ過ぎるわ。
だから・・・そうだわ!
ガラスの靴に合わせてつま先と踵をを切り落としてあげましょう。
お母様の目は抉ってさしあげますわね。
常日頃から私の顔など見たくない、とおっしゃってましたものね。
・・・まあ、どうしましょう!
お母様もお姉様もいなくなってしまわれたわ!
仕方ありませんわ、お父様が大事にしていたお屋敷は・・・いっそ取り壊してしまいましょう。
――かくして、復讐を遂げた私は満面の笑みを浮かべる。
そして、赤黒い血のこびりついたガラスの靴を満ち足りた気持ちで眺め・・・床に叩きつけた。