表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

1.勇者、魔王、国産牛! 二度目の選択肢

前回のあらすじ。国産牛ちゃんが追放されました。

 勇者と魔王は行きつけの超高級レストラン『楽園』へと、道中で拾ったステーキ肉を運び込みました。

「道中で拾ったのは間違いないけど、仲間だった子の成れの果てじゃん!」


 こちらのお店は予約制で、本来は正装でないと入店が拒否されますが、二人は勇者と魔王の証明書を持っているため、メイド服姿でも例外的に入れます。

「勇者はともかく、魔王は証明されても入店拒否されるでしょっ!」

 魔王は法のもとに平等です。

「魔物は法律に守られていないって言ってたじゃん!」


 ですが、魔王は法律を作る側にいます。これが何を意味するか、あなたは分かりますか?


「……うん、もういいよ、続けて」

 はい。


 勇者と魔王は、能力『お金の力』を使います。

「それは能力じゃないと思うっ!」

 持って来たステーキ肉を調理するよう女性コックさんに要求し、予約もなしにテーブル席へと座りました。


 席について数分後、本来そこに座るはずだった少女二人が来店します。お二人は貴族令嬢なのでしょう。きらびやかなドレスを着ていました。


 困惑した表情で近寄って来た令嬢達と口論になる前に、勇者と魔王は空力を器用に操れる最強の風魔法『エアロ』を使い、その二人をお店から追放します。

「まさかの一般人追放!」


 いやぁああああ~っ! 吹き飛ばされた令嬢二名が高級レストランのドアに衝突し、そのまま外へと消えました。ドアも外れてしまいました。

「あらら……」


 一部始終を目撃していた従業員や他のお客は報復を恐れ、勇者と魔王に何も口出し出来ません。

 ですが一人だけ、警察に通報しようとする勇敢な女性従業員がいました。

「その人に身の危険が迫りそう!」


 あなたのおっしゃる通りです。


 勇者と魔王が能力『瞬間移動』を発動し、受話器を持った女性従業員を二人で囲い込みました。

「瞬間移動の使い道があまりにもしょぼいんだけど!」


 揉めごとを回避してあげたのに、どこへ電話しようとしているのかしらぁ? 勇者は女性従業員のお胸をつかんで、脅します。

「勇者のやることじゃない!」


 お姉様。きっと修理屋さんですわ。さっそく壊れてしまったドアを無償で修理しようとして下さるなんて、出来る従業員ですわねぇ。そうですわよねぇ? 魔王は女性従業員のスカートのお尻の穴辺りに、拳銃の先を押しつけました。

「なんで拳銃持ってんの!」

 もしものための護身用です。

「攻撃魔法を使えるんだから不要でしょっ!」

 持っていたら、構えがかっこいいです。

「まあチートキャラが不要な拳銃持ってたら、そーいう理由しかないよね!」


 女性従業員は脅しに屈します。青ざめた表情で懇意(こんい)にしている修理屋さんへと、電話するのでした。勇者と魔王は笑顔になります。

「ホントやだ、そいつら!」


 勇者と魔王は瞬間移動で席に戻りました。どんなお肉が出てくるのかしらぁ、楽しみですねぇ勇者お姉様と、二人で瞳を輝かせて、わくわくしています。メイド姿の二人は大変美しく、周囲の人間からも注目を浴びていました。

「令嬢を魔法で追放したからじゃない?」


 しばらく経って、極上のビーフ・ステーキが二皿分、運ばれて来ます。香りからして、あなたが想像する最高級のお肉だと言えました。

 仲間の犠牲によって生まれたこちらのステーキを、勇者と魔王は神様に感謝を捧げなら、頂くことにします。

「……感謝を捧げる相手が間違ってない?」

 あなたは疑問を抱いているようですが、疑問を抱く余裕もないほど、お肉のすごい胸部の勇者と魔王は、お肉に夢中です。


 魔王がおいしくステーキを味わっていると、勇者が塩漬けのグリーンペッパーをかけているのを目にしました。勇者は便利な能力『アイテムボックス』を使い、グリーンペッパーの小瓶を取り出していたのです。

「アイテムボックスまで出て来た!」


 アイテムボックス内に収納していたグリーンペッパーは、旅の途中で購入してから一切劣化していません。このコショウによって、よりいっそうステーキは美味(おい)しくなりました。勇者はとてもおいしそうに、グリーンペッパーつきのステーキを食します。


 姉の香辛料が気になった魔王は能力『鑑定』を使い、グリーンペッパーを鑑定しました。

「そんなもんに鑑定使うなって!」


 カンテイケッカガ、デマシタ。

「昔のゲームみたい!」


 グリーンペッパーとは、青胡椒(あおこしょう)とも呼ばれ、完全に熟していないコショウの実です。実の色は、緑色。粒々の実を、生、あるいは塩漬け、凍結冷凍したものがグリーンペッパーと呼ばれ、(さわ)やかな香りのする香辛料(スパイス)として、重宝されています。


 勇者の持つグリーンペッパーのステータス表示。おいしさ100。香り100。ステーキとの相性100。温度100。

「温度百度なのっ?」

 いいえ。温度が何度かを言っているわけではありません。温度100というのは、温度が適切に保たれていれば、上限の100となります。少しでも温度が高かったり、低かったりしたら、90、80……と、数値が下がります。

「分かりにくい!」


 魔王は憤慨(ふんがい)し、怒鳴りました。――わたくしに内緒でそんな素敵な香りのするコショウを使っているなんて許せませんわ! この高貴で偉いわたくしにもよこしなさい!


 あなたは魔王の要求に対して、勇者の行動を選ぶことが出来ます。


 1.無視する。

 2.金銭を要求する。

 3.追放する。


「また追放がある! でも、また3番を選ぶのも芸がないから、1番で」


 勇者は魔王を無視し、グリーンペッパーをかけたステーキを味わい続けました。


 魔王はさらに怒ります。無視をするんじゃないですわ! わたくし達は双子の姉妹なんですから、グリーンペッパーを分け与えなさいっ! いえ、グリーンペッパーを所持していたことを黙っていた謝罪として、全部よこしなさい!

「所持って言葉をコショウに使わないと思うけど!」


 怒鳴り声を聞いた勇者は、うんざりとした美少女顔を魔王に向け、言います。高級なお店の中で大声を出すなんて、マナー違反よ。静かにお食事も出来ないの? お店で騒いだら、コックさんにも失礼でしょ?

「自前のコショウをかけるのは失礼じゃないんだろうか……」


 勇者はまだ続けます。魔王のくせに高級店の秩序を乱すなんて、最低ね。誰のお陰で勇者パーティーにいられると思っているのよ? リーダーで勇者でもある、このとても偉い私のお陰でしょう? 姉に少しぐらい敬意を払いなさい。おいしいお肉を食べられているんだから、黙って食べていればいいのよ。


「そいつホントに勇者なの?」

 勇者です。


 魔王は勇者に責められ、涙目になります。絶対に許しませんわっ、勇者お姉様ぁ! うわあああああんっ! 魔王は三つ編みやお胸を激しく揺らしつつ、泣きながらお店を飛び出して行ってしまいました。


「そいつホントに魔王なの?」

 魔王です。


 ふん、騒がしい愚妹(ぐまい)だったわ。勇者はそうつぶやいて、お食事(ディナー)を続けました。

「冷静な勇者だなー……」


 魔王城に逃げ帰った魔王は、最強の魔王軍を引き連れて、高級レストランへと戻ります。魔王軍は全員、見た目が美少女で、薄いピンクか薄い緑色のメイド服を着ていました。


「魔王軍と言うより、もはやメイド軍団じゃん!」


 魔王と彼女の魔王軍は、レベルもステータスもすごく高いです。当然、翼もなく大空を飛べて、素早くレストランへと向かえます。

絵面(えづら)がヤバそう!」


 一方その頃、最初にいた草原では……。


 ところで、あなたはチートスキルと聞いて、どんな印象を受けますか?

「反則級の能力のことでしょ? めっちゃ強くなったりとか、すっごく都合の良い力を簡単に発揮しちゃったりとか」

 その通りです。


 草原に存在していた国産牛の魂が、チートスキル『リサイクル』を発動します!

「だっさいチートスキル名!」


 自分自身に使うことで、国産牛は見事に復活を遂げました!

「蘇生しちゃった!」


 復活した国産牛も、嗅覚を頼りに、元は自分の体だったステーキのあるお店へと向かいます。

「もうあいつらに関わらないほうがいいんじゃないかな……」


 勇者はお店で、まだステーキをおいしそうに食べていました。あいつらは足手まといで、思うような活躍もしていない、役立たずだったわよね。そう文句をつぶやきながら。


「これ、復讐されるパターンだよね」


 そうです。

 魔王は勇者へと復讐するつもりです。


 高級レストランの前を魔王と魔王軍が占拠し、国産牛も遅れて到着しました。


 お店の外が騒がしいのを知った勇者は席を立ち、見に行くことにします。

中編、いかがだったでしょうか?


魔王がコショウに鑑定スキルを使う作品を初めて見たという方は、本編サキュリバーズのほうもご愛読よろしくお願いします。


今回も読んで下さり、ありがとうございました。

次回は最終回! 最後となる後編もお楽しみ下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ