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勇者の不意打ち

 オラァ!


『勇者の攻撃!魔物は倒れた!』


 ハァ……ハァ……やったぞ。ついに魔王軍の幹部を倒したぞ…………さすが魔王の片腕とも称されるだけあってとんでもない強敵だったな。でもなんとか勝つことができた…………さあ魔王の間は目の前だ、待ってろ魔王。この勇者が今お前を討伐してや……ん?

 

 キーン!


 クッ!あぶねえ!まだ一匹残ってやがったのか!へっ、油断したところを後ろから襲うなんてやってくれるじゃねえか。だが残念だったな。この程度の不意打ちじゃあ俺は倒せねえよ…………ん?……その深く刻まれた額のシワ………お前はたしか、魔王軍大幹部で魔王の脳と言われた男……やれやれ、こりゃまたとんでもねえ強敵と戦わなきゃいけねえようだな………でもやるしかねえか……。


 オラァ!


『勇者の攻撃!魔物は倒れた!』

 

 ゼェ……ゼェ……やった……やったぞ……幹部を二人も倒した…………これでもう誰にも邪魔させねえ。待ってろ魔王!!今行くぞ!…………ん?


 キーン!


 くっ……またかよ………なんか……ズリぃよお前ら。いっぺんにまとめてこいよ…………んでお前は…………えっと……誰?いや、ごめん。さすがにお前はちょっとわかんない。片腕のやつと脳のやつは動画とかで見たことあったんだけど、ごめんお前はちょっと本当にわかんないや。ほんとごめんね。だから自己紹介してくれる?………うん。うん。あぁ君も幹部なんだ……それで?……うん……魔王の……左腕?…………えっそんなんもいんの?いやまあ、理屈で言ったらそら手は2本あるけど……てことはなに最初の人は右腕だったってこと?ていうかそれより何より俺……あの、なんかその……すごい嫌な予感するんすけど……でも、うん。そうね、やるしかないよね。俺、頑張るよ。頑張ってお前倒す。


 オラァ!


『勇者の攻撃!魔物は倒れた!』


 ゼェ……!ゼェ……やった……やっと倒した……魔王の左腕。右腕の奴よりちょっと細身だったから多分魔王って右利きなんだろうな………。


 キーン!


 ほらきたほらきた。絶対来ると思った。なんか嫌な予感してたもん俺。なんなら脳が来た時からもうちょっと予感してたもん。ていうかちょっと休憩させてよ。最悪来るのはもういいけど休憩くらいさせてよ。ずるいんだよお前ら……はぁ…………まあいいや……で、お前は……ああそう。魔王の瞳ね。なんか素敵だなお前。素敵なやつ来ちゃったな。はいはい。倒しますよ。急かすなって。


 オラァ!キーン!


 ちょっ、早いって!!!!何倒したとほぼ同時に来てんだよ!瞳の死に被せて登場してんじゃねえよ!ナレーションが追いつかなくなっちゃったじゃねえか!あぁ!?魔王の鼻!?知らねえよお前なんか!てかなんだよ鼻ってお前!なんかお前かわいそうだな!うん。鼻はかわいそうだわ。瞳と差ありすぎだろ。まあいいけど。はいバイバイ。


 オラキーン!!


 おおもう俺の攻撃と同時じゃん。すげえな。オラキーンってなっちゃったよ。オラキーンって。なんだよその擬音。んでお前らは……ええと……あ、魔王の耳ね。左右二人いっぺんに来てくれたのね。ありがと、助かるよその配慮。でもあれだな。もしかしてこれで最後かもな。だって瞳も鼻も耳も倒したらもう魔王顔ないじゃん。うん。これで終わりでしょ。最後だね。お願い。最後って言って。


 オキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーン!!!!


 あああああああもう多いって!!!!!急になんだよお前ら何十人来てんだよ!!てか俺めっちゃすげえな!全部剣で防ぐじゃん!俺どうやったの今!すげえ!ねえ!俺すごくない!?……ん?ああごめん、なんかお前らのことより自分の凄さの方が上に来ちゃってつい……だって、お前ら多すぎて全然詳細聞く気起きないんだもん。めんどくせえよ。なんか小せえし。てかちょいちょいなんか光ってるやついるじゃん。なんなん君、レア?

 ああもうわかったって。はいはいわかったから。ちゃんと聞くから、一斉に喋るな。文句言うな。はいじゃあ一番左の彼から、そう君。ちょっと太めの。はい言って。ちゃっちゃと自己紹介して、君はどこの部位なの?うん……魔王様の、左下の奥歯?あっ、はいもういいです。残りの人もういいです。もうお前らの存在だいたいわかりました。どうりでたまに銀色のやついると思ったわ。ていうかなんかお前らもうボロボロじゃん大丈夫?なんか流血してるやついるし……やたら足元もおぼつかない奴多いし……なんなの酔ってんの?


 オラララララララララァ!

 

 はい倒した。みんな倒しました。次の方どうぞー。

 

 ……………………お?


 …………もう出てこない?流石に出てこないか?……やったのか?……そうか……ついにか……うん。そうだよな。魔王の歯まで全部倒したもんな。魔王もう総入れ歯だもんな。


『勇者の攻撃!魔物は倒れた!』


 よっし、ナレーション出た。ふぅ……これでやっと…………。


 キーン!


 んもおおおおおお来るならすぐこいよ!何ちょっと間置いて来てんだよ。ちゃっちゃと来いよ。何やってたんだよ。おせーよバカ。んでお前は……あっ、ごめんちょっと待って。当てさせて。うん。なんか飽きてきちゃったから。俺にも楽しませてよ。

 ええっとねぇ…………いうてパーツはもうないよねえ。歯まで出ちゃったし。あっ、ツノ?違う?違うかぁ………んーじゃあ……魔王の鼻糞!えー違うのぉ?……んーちょっともうわかんないなあ……。なんかヒントないのヒント。うん。なんかライトなやつ。あんま答えと直結しないやつ。

 えっ、下半身?下半身なのお前?マジかよこっから下半身ゾーン入るのかよ………まあでも下半身ならシンプルに右足とか?あっ、惜しい?じゃああれだ左足!!えーーー違うのー?じゃあもうわかんないわ。お前なんなの。いいってもうヒントとか。もうこっち飽きてんだから勿体ぶらずに教えろって。

 え?魔王の左足親指?…………え……マジ?そんな刻む?下半身そんな刻んでくるの?お前……あの、右腕さん見習えよ。右腕さんをよ。一人で手一本担当してたぞあの人。ふざけんなよまじで。


 オラァ!


 はい次の方どうぞ。


 キーン!


 はいこんにちは。自己紹介してね。


 はぁ、魔王の股関節さんですか……あの、ごめんちょっと君さ、本当にいいの?いや……うん。なんて言うかさ、田舎のご両親とかなんて思ってんのその仕事のこと。大丈夫?胸張って言える?お母さん、僕魔王様の股関節になったよって言える?大丈夫?お母さん泣いてない?

 ていうかなんで股関節なんだろうな。もっと他にあるじゃんな。えっ、魔王の股関節に似てるからなの?実力とかじゃなくて魔王が自分の部位に似てる異名をつけてくれるシステムなのこれ?………へー………いや、似てるでしょって顔されても俺股関節のルックスがパッと出てこないんだわ。ごめん。まあでも確かに言われてみれば脳の人顔シワシワだったし、さっきのやつは左足の親指みたいな顔してたかも…………てことは魔王もしかして…………あっ、ごめんこっちの話。気にしないで。

 あと、ずっと思ってたんだけど……魔王軍幹部多くない?魔王以外みんな幹部じゃん。なんなんお前ら。ベンチャー企業なん。幹部候補生募集的なやつで集まったん?

 

 まあいいや。


 オラァ!

 

 はい、次、魔王の右脛さん。

 

 オラァ!


 胸鎖乳突筋さんこんにちは。何それ君どこの子なの。


 オラァ!


 あぁ、臀部さんまで。


 オラァ!


 魔王の心の闇……?なんかすごいね君。


 オラァ!

 

 オラァ!


 オラオラオラオラオラ!!!!!!


 ……………………


 ………………


 …………

 

 ……


 …


 …………ゼェ……ゼェ………あーもー無理……もう疲れた。もう何匹倒したかわからん。夢に出るわこれ。てか俺すげえタフだわ…………でも、流石にもう無理かも。ちょっとなんかもう……精神的な疲弊がやばい…………あ?なんだよ魔王の毛細血管。何か言いたいことあんなら死ぬ前に言えよ…………嬉しいお知らせがある?なにそれ………うん…………うん…………え!?お前で最後!?マジで!?ガチで!?ほんとに?嘘じゃない?そんなこと言って後からタンパク質とか出てこない?白血球とかも?ほんと?信じていいの?…………うおおおおおマジかよ!めっっちゃ嬉しいいいいいい!ありがとー毛細血管!!俺、地元帰ってもお前のことは一生忘れない!じゃあ殺すね!


 オラァ!


『勇者の攻撃!魔物は倒れた!』


 …………おぉ……おおおおお出てこない!もう幹部出てこない!!なんか久しぶりにナレーション聞いた!!やったああああああああ!やったぞ毛細血管!信じてたぞおおおおおおお!!!ありがとおおおおおおおおお!!!あの世で見てるかあああああ!?

 




 …………いやー長かった。本当に長かった。戦いすぎてもうなんか今更魔王とか言われてもって感じだけど、うん。まあ、一応俺勇者だしな。きっと魔王も待ちくたびれてるだろうし。めんどくさいけど顔だけでも出しとくか。よし、行くか。


 ギィ……コツコツコツ……………。

 

 やあ、お前が魔王か………なんだか初めて会った気がしないな………。

 その右腕、確かにあいつを彷彿とさせる雰囲気だ………もはやなんか懐かしさすらあるよ。その左足の親指もあいつに似てる……あぁ臀部の膨らみなんてあいつの頬にそっくりじゃないか…………あっ、髪の毛役の幹部は出てこないなあってずっと思ってたんだけどなるほど道理で……いやごめんなんでもない。気にしないd


 キーン!


 おっとっとっと。落ち着けよ。喋ってる途中で魔王が不意打ちとはとんだご挨拶だな……あれかな、髪のこと言ったからかな。だったらごめんね。いやだから落ち着けって。ほんとごめんって………。

 だが残念だったな。俺もう不意打ち慣れし過ぎててまず食らわねえんだわ。おかげさまでな。あとついでに言うと、俺幹部たちと戦いまくったおかげでレベル40くらい上がっちゃったんだわ。だから多分お前のこと瞬殺できると思うわ。なんかごめんな世界の命運を賭けた魔王対勇者の最終決戦なのにこんな感じで。でもこれに関してはお前らにも責任あるからな。反省しろよマジで。


 だからさ、一つだけお前に忠告というか………戦う前に言っといやろうと思ってささ…………。


 魔王……お前もしかしてさ………………。



 歯槽膿漏じゃない?


 


 

 


 

 

 





 



 

 

 




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