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 よし!これでこの魔物はくたばったはずじゃ!

 残すはあの魔王のエリアのみじゃ!あの魔王を倒せばワシらの長かった旅もついに……ん?なんじゃ?後ろ……?

……ぐわあ!!こ、こやつまだ生きておったとは!!マズい!足を掴まれてしまっては反撃ができん……引きずり込まれる!!この魔物め、もう勝ち目はないとわかってせめてワシだけでも道連れにしようと……!クソ!このままじゃ本当に……!もう魔王の間は目の前なのに!!……………………………………………………………………た……助けてくれええええええ!!!!


その夜。


 あっ、勇者。乾杯前にちょっと、ワシからもいい?

 ……えーみんな今日もお疲れ様。ワシらの長い旅もついにここまで来ました。みんなと旅を始めて五年……?いや、もっとか。まあとにかく、本当に長いことワシら勇者パーティは苦楽を共にしこの冒険をしてきたわけです。そして、その悲願がついに目の前にあります。明日、ついにワシらは魔王との最終決戦に臨むのです!みんな頑張ろう!!!!!

 

 ……で、本来ならこのまま乾杯といきたいところですが、お酒が入っちゃう前に、ワシから、その……一点、確認というか……まあそんな感じのアレがありまして……あっ、うん。早めに終わらせるから。ごめんね。ちょっとそのまま聴いてもらえる?


 あのー……今日ね、最後の幹部を倒した時にワシ、足掴まれて殺されかけたじゃん?で、あの時は結局みんなが助けてくれて、そのおかげでなんとか無事にこうして今もワシ生きてるじゃん。それは本当にありがとう。本当に感謝してもしきれないくらい、ほんと、うん、ありがとう……でも、ちょっと、ちょっとだけワシあの時気になっちゃったんだけどさ…………ええと、勘違いだったらマジでごめんなんだけど……その…………みんな、ワシを助けるまで、ちょっと変な間がなかった?


 あっ、いや、うん。そうね。確かにワシが「助けて」って言ってからはすぐにみんな来て助けてくれたもんね。うん。それは大丈夫。そこはわかってる。問題はその前っていうか……あのー、ワシの「助けて」が出るまで一瞬みんな動き止めたよね……?あれさ、なんか待ってた?

んーと……ほんとこれ勘違いだったら申し訳ないんだけど……なんかワシ的にはあの間がね。あの間が……「ワシを置いて先に行け」待ち……だった感じしちゃったんだよね…………あーうん。そうだね。ごめんね。仲間だもんね。そんなわけないよね。うん。ワシもそう思いたい……思いたいんだけど……うん、まあいいやこれは。うん。これ以上言ってもね、お互い証明とかできないし、水掛け論だし。ね。まあ結局こうして助けられたわけだから。だから今日のことはもういいの。ワシ的には全然。それは本当よくて……。


 だから、ワシの言いたいのは明日のことなの。明日の最終決戦を前に、ちゃんと今、確認しときたいの。ちゃんと、はっきりと伝えておきたいの。みんなにワシの気持ち知ってて欲しいの。

 

 えぇと……じゃあ言うよ。言っちゃうよ。


 あのー……ワシは、確かに大賢者よ。年齢も百四十歳を超えた仙人よ。常人の倍は生きてるよ。髪も全白髪だし。髭も真っ白のロングだし。なんか、布巻いたボロい服で大きい杖で魔法使うし。人間時代の魔王はかつての相棒だったし。隠居してたところをお前さんらに頼み込まれて最後に仲間になったし。見た目長老だし。このパーティの師匠的ポジションだし……だから、こう、キャラ的にというか、属性的にというか、もしかしたら誤解されてるかもだから言うんだけど……ワシ、こんな感じだけど生への執着エグいからね?この身を犠牲にして仲間や世界を救ったりとか絶対やんないからね?だからこの年齢まで生きてこれたんだし。それだけはわかってて欲しいの。


 いや、ワシだって言いたくなかったよこんなん。でも、なんか今日のみんなのあの間になんかすごいそっち系の期待を感じちゃったもん……あっ、今こいつら泣く準備してんなとかちょっと思っちゃったもん……あのね、百四十年も生きてりゃそういうのすごいわかっちゃうのよ本当に。ヒシヒシと感じちゃうのよ。若者から老兵への妙な期待みたいなの。

 だから、改めて言うけど、ワシは絶対に死にたくないから。まだまだこの世に未練あるから。来週からグアムだし……サマージャンボ買ってるし……ローンだってこないだやっと完済したとこだし……絶対嫌、絶対死なないワシ。


 まあだから……とにかく変な期待だけしないでくれたらそれでいいから……そうね、例えば……魔王倒すとするじゃん明日。で、みんなでやったーって喜んで、よしほな帰ろうかってなったらなんか知らんけど急に魔王城がなんかこうバラバラーって、よくわかんないけど崩壊?し始めてさ、んで崩れてきた瓦礫がワシにバーンってこう……ワシの背中にバーンってなって……なんかワシだけ下敷きになって、ヤベーどうしよみたいな状況になった時に……そういう時に……ギリッギリまでワシを助けることを諦めないで欲しいの。ワシ絶対死にたくないから。マジでそのパターンで死ぬのが一番嫌だから。

 

 いや、だって魔王討伐よ?百四十年の人生で最高のステイタスよ?世界の英雄よ?もう絶っ対明後日から人生変わるし。間違いなくスターだし。テレビ出れるし。何言ってもバズるし。良い方に解釈されるし。絶対モテるし。同窓会でチヤホヤされるし。地元でデカい顔できるし。一生我が世の春確定だし。もうリアル酒池肉林……て感じなのに!!それなのに!!めっちゃ苦労して魔王倒すだけ倒してそのご褒美もらえないまま死ぬとかマジで無理!なんか銅像建てられたり勲章やらもらって死んだ後にいくら崇められてもしょうがないし!生きてるワシを崇めて欲しいし!いい思いさせて欲しいし!そんなんなるくらいなら魔王に負けて世界が滅んだほうがマシだし!

 

 だからもし仮にお前らがまだギリ助かりそうなワシを早々に見限って逃げたら……マジえげつない断末魔残して絶命するかんねワシ。もう、一度聞いたら二度と耳から離れなくなるような。逃げたこと一生後悔するようなの叫ぶかんね。多分めっちゃ霊になって憑きまくるし。ガンガン呪うし。


 とか言ってるキャラほどいざとなったらなんか変な仏心が湧いて『ワシはもう十分生きた、これからはお主らの時代じゃ。世界を頼んだぞ』とか言い出して魔王を抱いて自爆するみたいなパターンも……絶対ないからね。てかそれだけは、特にないから。だってワシ、後進の育成とか全く興味ないタイプだもん。いまだに天才小学生とかに嫉妬してるし。出る杭は打ちたいし。今日生まれた赤子より長生きしたいって思ってるし。だからワシが死んだ後の世界とかどうでもいいもん。むしろワシが死んだ後にめっちゃ発展して世界が便利になったりしたらクソムカつくからワシが死んだ一秒後に世界が滅ぶのがベストだもん。うん。ワシ、そういうタイプのジジイだから。諦めてねみんな。


 ふー……まあそんなワケだから。うん。ワシは人柱枠ではないってことだけ覚えててくれたらいいから。それだけマジ忘れないで。ワシの青春こっからなんだから。頼むよ。


 というわけでちょっと長くなっちゃったけど……改めて我々勇者パーティの永遠の結束と、子供たちの明日を祈って……カンパイ!!

 

 ……………あれ?なんか今ちょっと変な間がなかった?

 


 

 

 

 



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