村人Aと村人G その②
その①は3話目くらいにあると思います。
村人G「俺さ、諦めたんだよね」
村人A「入りがこの上なく暗いね」
村人G「世界に絶望したっていうかさ」
村人A「どうしたのよ」
村人G「俺、この世界の主役にはなれないなって気づいちゃってさ」
村人A「あっ、やっと気づいたんだ」
村人G「うん」
村人A「だいぶかかったね」
村人G「かかりましたね」
村人A「まあでもよかったんじゃない?現実見れるようになって」
村人G「だから俺、新たなる夢を見つけてさ」
村人A「明るいね急に」
村人G「叶うと思う?」
村人A「多分無理だと思う」
村人G「なんでだよ!なんで最初から無理だって決めつけんだよ!諦めんなよ!大丈夫だよ!」
村人A「なんで俺励まされてんの」
村人G「俺を諦めるなよ!」
村人A「傲慢だね」
村人G「でさ、その夢ってのがさ」
村人A「続けるんだ」
村人G「馬鹿にしないで聞いてほしいんだけどさ」
村人A「俺はお前を馬鹿になんかしないよ」
村人G「ありがとう。俺、お嬢様になりたいんだ」
村人A「お前馬鹿だろ」
村人G「ば……馬鹿ですって!?もう一度言ってみなさいよあんた!!」
村人A「早速キャラ仕上がりすぎだよ」
村人G「なれないかな?」
村人A「お前がお嬢様って無理があるよ。無理しかないよ」
村人G「まあお嬢様って一口に言っても色々種類があるじゃん」
村人A「どんなお嬢様になりたいの」
村人G「生まれながらのお嬢様かな」
村人A「もう遅いよ。前世で願っとけよ」
村人G「そうなの?俺まだ42だよ?」
村人A「42年遅いよ」
村人G「やだやだやだ俺もお嬢様になってみんなにチヤホヤされて生きたいもん!!!やだやだやだ!!!」
村人A「お前悪いとこだけお嬢様っぽいね」
村人G「やだやだやだこんなしみったれた人生クソ喰らえだもん!!」
村人A「根がおっさんのまんまだよ」
村人G「でもお嬢様みたいに楽して生きたいじゃん」
村人A「お嬢様だってきっとあれはあれで色々悩みとかあるでしょ知らんけど」
村人G「どんな?」
村人A「人間関係とかじゃない?なんか別のお嬢様にイジワルされたりとか」
村人G「なるほど、まあお嬢様界隈も一枚岩ではないからねえ」
村人A「そんな強固な結束持ったお嬢様集団も怖いけどね」
村人G「よし。じゃあ俺がお嬢様になった時のリハーサルしとこう」
村人A「しなくていいよ」
村人G「俺、かよわいお嬢様やるからお前イジワルなお嬢様やって」
村人A「やめて俺そんなとこ誰かに見られたら恥ずかしくて死んじゃう」
村人G「初めまして………あの、わたくし新人のお嬢様でございますの……」
村人A「あーらあなた新入りですって!?随分みすぼらしいドレスを着てらっしゃるのねオホホホホホ!!」
村人G「ノ……ノリノリだなおい」
村人A「お前がやれって言ったんだろ。引くなよ」
村人G「そ……そんなドレスの事を悪くいうなんて………!」
村人A「フンッ!生意気なお嬢様だこと!!そんな小汚いドレスで社交界に出るなんて恥晒しもいいとこですわ!」
村人G「非道い……このドレスは亡きおばあさまが私のために毎晩一針一針懸命に縫ってくれた大切なドレスを売ったお金で買ったこの春のトレンドアイテムなのに……」
村人A「ばあちゃんかわいそうだろ」
村人G「おばあさまの怨念を晴らすためにもカードバトルで決着をつけましょう!」
村人A「おばあちゃんはお前を恨んでると思うぞ」
村人G「どうかな?」
村人A「ダメだと思う。まずカードバトルの強さが価値観の基準になってるタイプの世界線がお嬢様に向いてないよ」
村人G「マジかよ今時のお嬢様ってカードバトルしないのかよ」
村人A「太古の昔からお嬢様にカードバトルは存在しないよ」
村人G「ゴールドカードを限度額一杯に攻撃表示!」
村人A「そっちかよ」
村人G「難しいもんだねお嬢様ってのも」
村人A「お前が勝手に難しくしてんだけどね」
村人G「お嬢様が無理ならプリンセスの方がまだ可能性あるかな」
村人A「ないよ。似たようなもんだよ」
村人G「でも俺よくお星さまに願い事をしたり朝はお花さんたちとお話ししてるよ?」
村人A「すごいね。ちょっとプリンセスの素質あるよそれ」
村人G「お!マジで!?」
村人A「マジマジ。おっさんって部分にさえ目を瞑ればプリンセスに近い存在と言えなくもないよ」
村人G「じゃあちょっとプリンセスになった時のリハーサルしたいからさ」
村人A「やらない」
村人G「俺がプリンセスやるから」
村人A「やらない」
村人G「お前イジワルなお嬢様やってね」
村人A「ツッコまない」
村人G「うふふふ。小鳥さん達おはよう。さあ、今日も素敵な朝の始まりね!歌を歌いましょうラララ〜♪」
村人A「あらあらあらあらとんだプリンセスがいたものですわね!?こっちはいい気持ちで寝てんのに朝っぱらから下手くそな歌響かせてんじゃないわよ!この腐れ王女が!」
村人G「非道い……たかがお嬢様のくせに王の実娘である私に楯突くなんて……」
村人A「やだよそんな王族意識バリバリのプリンセス」
村人G「さあ兵士どもこのくそ生意気な小娘をとっとと捕まえなさい何処の馬の骨かもわからぬお嬢様風情がこのプリンセスである私にそんな口きいてタダで済むと思ったのかしら今すぐ絞首台送りにしてあげるわぁ〜♪」
村人A「ギリギリ歌にしても遅いよ」
村人G「ラララあの世で後悔するといいわぁ〜♪」
村人A「ラララつけていい感じのリズムにしてもダメだよ」
村人G「ラララプリンセスになるのも難しいもんだな」
村人A「リズムに嵌ってんじゃないよ」
村人G「クソ……!お嬢様にもなれない、プリンセスにもなれない、こんなんじゃ俺の人生八方塞がりだよ」
村人A「最初からその二方向は塞がれてたと思うよ」
村人G「じゃあお前はいいのかよ!こんな脇役の人生のまんまで!」
村人A「俺?……俺は、別に…………」
村人G「なんかないのかよお前にも!大陸に渡って絨毯を売りたいとか!地底人になって人類を脅かしたいとか!あっただろお前にもそういう誰もが憧れるような夢が!」
村人A「そんなピンポイントな夢なかったよ」
村人G「じゃあこのままでいいっていうのかよ!このままここに立って、いい歳してイジワルなお嬢様役とかわけわかんねえことやってるだけの人生でいいってのいうのかよ!」
村人A「お前がやらせたんだろ」
村人G「お前にも夢くらいあんだろ!」
村人A「…………まあ俺は……正直、お前と毎日こうやってここに立って喋ってるだけで楽しいし……強いていうならこんな毎日がずっと続くのが夢……かな?」
村人G「A……」
村人A「べ……別にお前がいい奴だからそんなんじゃなくてただちょっとそう思っただけだから……勘違いしないでよ!」
村人G「……つまりツンデレお嬢様になりたいってこと?」
村人A「なんでだよ」




