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このシャバからの追放

魔法使い「いやー熱いね。追放」


戦士「追放?」


魔法使い「知らない?最近どこのパーティも誰かしら追放してるよ」


戦士「なにそれやばくね」


魔法使い「だからさ、そろそろ俺たちも追放されるかもしれないじゃん」


戦士「されないでしょ」


魔法使い「いやいやされるっしょ!今ガチで熱いんだから追放!!!」


戦士「なんでちょっと追放に前向きなんだよ」


魔法使い「ほら、うちの勇者って新しいもん好きじゃん」


戦士「うん」


魔法使い「だからちょっと良さそうだと思ったらすぐ導入しちゃいそうなんだよね追放」


戦士「追放を導入」


魔法使い「お試しでさ」


戦士「お試し感覚で追放」


魔法使い「その時に真っ先に追放対象になりそうなのが俺とお前ってわけよ」


戦士「なんで?」


魔法使い「うちのパーティで勇者以外の男、俺らだけだから」


戦士「あー」


魔法使い「な?だから追放って言われた時の準備しとこうぜ」


戦士「準備?」


魔法使い「追放ってのは決まりがあってさ、基本的に理不尽なものなわけよ。勇者がそいつを嵌めようとしたとか、本来能力があって実はすごく貢献してるのにそれに気づいてもらえずだとか」


戦士「なにそのルール」


魔法使い「だからさ、追放を言い渡された時にしっかり貢献を説明したり、とにかく勇者が追放したくなくなるように説得すればいいと思うんだよね。だから今からその練習をしとこうぜ」


戦士「最初からわかりやすく貢献すればいいじゃん」


魔法使い「うるさいな。それじゃはじまんねえだろ」


戦士「やりたいだけだろお前」


魔法使い「よし、じゃあお前勇者な。俺を追放して」


戦士「失せろゴミ」


魔法使い「えっ、なに急に」


戦士「追放ってこんな感じじゃないの……?」


魔法使い「そんな有無も言わせず切り捨てられたらどうしようもないじゃん。勇者怖すぎ」


戦士「勇者だからね。怖いよ勇者は」


魔法使い「もう少し優しくして」


戦士「えー魔法使いくん。君を追放する」


魔法使い「そんな……どうして……!」


戦士「パーティの金を無断で持ち出したから」


魔法使い「いや、それは……」


戦士「それと女子メンバーへのセクハラ報告も多数あるし」


魔法使い「待って待って」


戦士「?」


魔法使い「それガチで追放される奴じゃん」


戦士「ガチで追放するんじゃないの」


魔法使い「ダメだよお前、追放される奴が追放に値しちゃ」


戦士「追放されるのに?」


魔法使い「追放される奴は追放に値しないの!それが追放の作法なの!!」


戦士「なに言ってんのお前」


魔法使い「あーもうわかったお前じゃダメだ。俺が勇者やるわ」


戦士「で、俺が悪代官やればいいのね?」


魔法使い「おい何がはじまんだよ」


戦士「よいではないか」


魔法使い「よくねえよ」


戦士「じゃあ俺どうしたらいいのさ」


魔法使い「お前はそのままでいてくれたらそれでいいから」


戦士「俺も、お前はお前のままでいるのが一番だと思うよ」


魔法使い「別に励まし合いたいわけじゃねえんだよ」


戦士「違うか」


魔法使い「おい戦士!貴様を追放する!」


戦士「急だな」


魔法使い「うるさい……追放だ追放!なんとか言ってみたらどうだ!」


戦士「追放ですか………僕を追放して本当にいいんですね?後々苦労することになりますよ?」


魔法使い「ほう……貴様がいなくなることでこのパーティが崩壊するとでも?」


戦士「フフフ……後日弁護士から連絡が入るでしょう……」


魔法使い「おい待て。やだよそんな苦労」


戦士「今更泣きついてきてももう遅い!」


魔法使い「もう遅い!じゃねえよ。なんだそれ」


戦士「こんなんどう見ても不当解雇だからな。労基にチクれば一発よ一発」


魔法使い「なんかやだ。そんなやり方」


戦士「わがままだな」


魔法使い「もっとストレートなやり方でお願い」


戦士「はいはい」


魔法使い「おい戦士!お前を追放する!」


戦士「ほー貴様風情がこのワシを追放するとはええ度胸じゃのう……夜道には気ぃつけや…………月夜の晩ばかりじゃあないけぇのう………」


魔法使い「怖いよなにそのキャラ」


戦士「追放したくないでしょ?」


魔法使い「追放したら何されるかわかんないからじゃんそれ」


戦士「これもダメなの」


魔法使い「普通そんな怖そうな人は追放されないから。追放されるのはもっと気弱そうな奴だから」


戦士「酷い話だなそりゃ」


魔法使い「世の常だから」


戦士「やるせないな」


魔法使い「戦士!お前を追放する!」


戦士「ど……どうしてですか……?」


魔法使い「お前はこのパーティのお荷物だからな!!」


戦士「酷い……僕はいつもみんなのために頑張ってきたのに…………」


魔法使い「頑張ってきただぁ?なんの役にも立てないパワーバカのお前がぁ?」


戦士「僕は……あなたの言った通り前線でみんなの盾として戦ってきたじゃないですか!」


魔法使い「ハハハ!あれはお前があまりにも弱いから囮役にしてたんだよ!サンドバッグご苦労だったな!」


戦士「こ……こんな酷いこと言われたの初めてだ……」


魔法使い「オラオラオラ!わかったらとっとと消えな!!この役立たずのゴミが!!」


戦士「はい……今の全部録音したので…………消えます……」


魔法使い「おい待て待て待て」


戦士「これ持って垂れ込めば一発よ一発」


魔法使い「お前そればっかじゃねえか」


戦士「だってやっぱりこれが一番効くと思うんだよね」


魔法使い「いや、そうかもだけどさあ……」


戦士「ちゃんと法律があるんだから。泣き寝入りしないでしっかり勉強して武器にすればいいんだよ」


魔法使い「……まあ確かに言われてみたらそうかも」


戦士「だから今後もし勇者に追放されそうになったら俺たちは法律を盾にビシッと言ってやればいい」


魔法使い「…………わかった。もし追放されたらちゃんと戦うわ俺」


戦士「あっ、勇者さん」


魔法使い「えっ」


勇者「おーお疲れ」


戦士「お疲れ様でーす!」


魔法使い「お疲れ様でーす!」


勇者「あっ、ちょうどよかった。魔法使い追放ね」


魔法使い「えっ」


勇者「ほんじゃ」スタスタ


魔法使い「ちょちょちょちょ」


勇者「ん?」


魔法使い「ん?じゃないすよ!えっ、追放?俺パーティから追放されるんすか!?」


勇者「そうだよ」


魔法使い「そんな有無を言わさず追放って…………理由は?」


勇者「流行ってるし」


魔法使い「それだけ!?えっ、マジでそれだで俺追放されちゃうんすか!?」


勇者「まあ他にも色々あるけど……ちょっと試しにね」


魔法使い「勘弁してくださいよー!お試しでクビにされたらたまんないっすよー!」


戦士(魔法使い!魔法使い!)ヒソヒソ


魔法使い「えっ、なに」


戦士(さっきのやれ!さっき練習したやつ!今こそ使いどきだろ!!!)ヒソヒソ


魔法使い「えっ、あっ、そっかそっか……よし………」


勇者「なにコソコソ話してんの」


魔法使い「勇者さん!!俺を本当に追放していいんですね!!!」


勇者「うんいいよ」


魔法使い「フフフ……これは不当解雇なので後日弁護士から……」


勇者「ていうかお前パーティの金盗んで使い込んだろ。あれ被害届出しといたから、多分そろそろ警察から連絡くるよ」


魔法使い「えっ」


戦士「やっとんのかい」


勇者「あと、女子メンバーの着替え盗撮したろ」


魔法使い「ああああ何故それを……!」


戦士「しっかり追放に値してんじゃねえか」


魔法使い「勇者さあああああああん!!!この通り!この通りなのでクビにしないでくださいいいいいいい!」


戦士「いい大人が足にすがりてついて泣いとる」


勇者「今更泣きついてきてももう遅いよ」


魔法使い「そんなあああああああああ」


戦士「言われちゃった」


魔法使い「許してくださいよおおおおお…………魔が差したんです!ちょっとくらい……ちょっとくらいよいではないですか!よいではないですかあああああ!!」


勇者「よくないよ」


魔法使い「クッ…………このワシを追放するとはええ度胸じゃのうワレエエエエエエ!!!!」


戦士「そっちに切り替えたか」


魔法使い「月のない夜には気をつけるんやでええええええ!!刺されるかもしれんからのおおおお!!」


勇者「はい。今の恐喝録音したからね。これも警察に提出するね」


魔法使い「ああああああああああ」


戦士「やっぱ勇者って怖いわ」



……………………。



魔法使い「あぁ……もうダメだ……終わった…………」


戦士「まあ気にすんな……悪人が痛い目見るのは世の常だから」


魔法使い「サラッと追い討ちかけてんじゃねえよ………なんとかしてくれよ………」


戦士「俺は……塀の向こうでもお前はお前らしくいればそれでいいと思うよ」


魔法使い「それ励ましてんのか」

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