サンプルまとめ
お昼です
「サッキカラ、ナンノシリョウヲツクッテイルノ?」
うっ。二ノ宮さんが俺の肩に手を置いている。社長は帰ったし、他の営業は直帰してしまっている。事務所には俺と二ノ宮さんの2人。
「モンスター化した人からのトイレに対する要望をまとめているんですよ」
「ソレハ、オモシロソウネ」
二ノ宮さんの指が俺の首に触れる。動揺を気付かれないようにノートPCのモニターを直視するが、心臓はバクバクだ。
「ノドガカワイタワ」
「今日は暑かったですもんねー。さっさと終わらせてビールを飲みたい気分ですよ」
指はまだ俺の首にある。爪がツンと当てられて思わず声が出そうになった。
「フフフ、ジョウダンヨ」
全然冗談に聞こえない!やっぱり吸血鬼なのか?二ノ宮さん。
「ワタシハカエルカラ、トジマリヨロシクネ」
「了解です」
ふう。なんとか無事だった。
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"資料見ましたよ、忽滑谷さん!流石です!"
朝イチ、トイレメーカー営業からの電話に出ると、開口一番褒められた。昨日遅くまで頑張った甲斐があったというものだ。
"やはり1番の課題は尻尾ですね。実際に会ってみると、結構尻尾生えてる人が多くて。尻尾を清潔に保つのが凄く難しいと思います"
"尻尾ってズボンの中に入れる派と外に出す派、どちらが多いか分かります?"
"今は出す派が多くなってきてますね。初日なんかはそもそもズボン穿いてない人も多かったですけどね。今はズボンに切り込みを入れて出してますね。大体"
"なるほど。と、言うことはパンツにも切れ込みを?"
"いえ、パンツは穿いてない人が多いようですよ"
"ええ!モンスター化した人ってノーパンなんですか?"
"完全に人型を保っている人は穿いてると思いますけど、トイレの相談のあったお客さんはほとんど穿いてなかったですね。尻尾もそうですけど、その、男性は特にアソコのサイズとか形とか色々としっくりこないようです"
"なるほど。資料の1番最後にある屋外型ってのは今のところケンタウロスになった人だけですけど、他にもいると思います?"
"下半身が丸々変わっちゃってるとやはり屋外型のトイレが必要になると思うんですよ。今のところお客さんには居なかったですけど、虫のモンスター化とかしてるとやはり屋外型になるのでは?"
"なるほど。貴重なご意見ありがとうございます!商品開発部と共有します"
電話を終えると、二ノ宮さんと目が合った。会話の内容も聞かれていたかもしれない。
「ワタシハハイテルカラネ?」
「えっ、いや、はい」
周囲を見渡すと社長も他の営業もトロンとした表情をして中空をぼんやり眺めている。今日はやばい日だ。俺は逃げ出すように事務所を出た。
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