サンプル集め
ひっそりと再開
"サンプルですか?"
"ええ、お尻のサイズだけでも。本当はお尻の穴の位置のデータも欲しいんですが"
"いやー、モンスター化した人って怒りやすくてですね、、"
"忽滑谷さんなら大丈夫でしょ!商品開発には絶対に必要な情報なんです。御社には特価を出しますから、お願いします!!"
結局押し切られてしまった。
モンスター化した人用の便器についてメーカーの営業さんに相談したところ、逆にサンプル採取をお願いをされた。きっと色々なパートナー企業にお願いしているのだろう。
メーカーとしても急に降って湧いた需要に全く追いついていないのだ。
実際のところ、ウチの会社にもHPを通じていつもの何倍もの予約が入っている。ざっと人類の1/6がモンスター化したのだ。当分、水回りのリフォームの需要は衰えないだろう。
俺以外の営業は既に外回りに出ていて、事務所には二ノ宮さんと社長しかいない。今日はまだ社長は正気を保っているようだ。
「行ってきます」
「イッテラッシャイ」
結局、二ノ宮さんはなんのモンスターになったのだろうか?吸血鬼?サキュバス?確認したい気持ちはあるけれど、プライベートに踏み込むようで憚られる。
そういえば二ノ宮さんはトイレ大丈夫なのだろうか?パッと見、身体のサイズは変わってないようだけど、モンスターならではの悩みがあるかもしれない。
「……ドウシタノ?」
「いえ、なんでもないです!行ってきます!」
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「それでは手を上にお願いします」
蜥蜴のモンスター化した男性のヒップをメジャーで測ろうとするけど、尻尾が邪魔で上手く測れない。
「マダナノカ?」
「いえ、もう大丈夫です」
そもそもリザードマンの場合はサイズ云々ではない気がする。
「失礼ですけど、どうやって用を足しているんですか?」
「ギャクニマタガル」
「逆、ですか?」
「ソウダ。シッポガジャマダカラナ」
リザードマンの表情は読みにくいが、多分困っているのだろう。
「なるほど。どんな便器ならばやり易そうですか?」
「シッポヲオクバショガアレバイイカモシレナイ。アト、」
「あと?」
「オシリガキレイニフケナイ」
うーむ。想像以上に大変だ。尻尾を持つモンスターは皆、困っているに違いない。
「今はどうやって?」
「フイテナイ」
おおおおい!さっきそのあたり触ってたんですけど!なんか付いてる気がしてきた!
「……色々と課題がありますね。メーカーに相談します」
「タノム」
「お任せ下さい」
ハンカチで手を拭いながら、客先を後にした。
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