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八戸さんのひらめき

"不動産サイトでしたっけ?"


電話の向こうからトイレメーカーの営業は疑問符を返してきた。


「いえ、それは別のです。私が言っているのはサーモ、熱の方です」


"忽滑谷さん、ごめんなさい。それがなにか便座と関係あるんですか?暖房便座ならもう何十年も前からありますよ?"


「今、モンスター化した人向けのウォシュレットはハンディタイプが主流ですよね?」


"そうですね。肛門の位置がバラバラなので今までのウォシュレットでは対応出来ないですから"


「ならば、肛門の位置をウォシュレット側で探せるようになればいいのでは?」


"ははは!忽滑谷さん、それが出来れば苦労しないですよ。でもウォシュレットにカメラをつける訳にはいかないでしょ?そんなことしたら炎上しちゃいますよ"


「だから熱、サーモなんですよ!」


"……えっと、つまり、肛門は温度が高いってことですか?"


「そうなんです!臀部で一番熱が高いところが肛門なんです!もう、圧倒的に高温なんです!!」


"お、落ち着いて下さい、忽滑谷さん。そもそも何か根拠があるんですか?"


「ふふふ。それがあるんですよ」


デスクに座っている八戸さんがウンウンと頷いている。


「最近ウチに新人が入りましてね、蛇のモンスター化した子なんですよ」


"蛇?"


「ええ。蛇です。蛇って熱を感知する器官があるらしいんですよ。ピット器官。で、その子も熱に対して敏感なんです」


"……その子、肛門の位置が分かるんですか?"


「100パーセント分かります!ウチの男性陣で確認しました」


"なるほどなるほど。それはちょっと興味深いですね。最上級グレードの便座になら搭載出来るかもしれません"


「やはりハンディタイプのウォシュレットって面倒くさいですからね。自動で洗ってくれるのに慣れていると」


"ふんふん。なんだかいけるような気がしてきました。早速、商品開発部に相談してみます!"


そう言ってトイレメーカーの営業は通話を終了した。なかなか理解してもらえなかったが、最終的にはよい方向に話が転んだ。


「ドウデシタ?」


「好感触だと思うよ。とはいえ、企画が通って商品化されるとしても大分先だと思うけどね」


八戸さんの頭の蛇がウネウネと落ち着きがない。もしかして、喜んでいる?


「売り出されるとしたら、どんな商品名がいいと思う?」


「……ピットin」


「お、それいいね。今度伝えておくね」


それを聞いて益々、蛇達が騒ぐのだった。

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