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教育

週一定期!

「……意外とスピード出すのね」


結局、八戸さんはウチの会社で働くことになった。そして今は社用車のハンドルを握って国道をかっ飛ばしている。


「キョウハ、スイテマスネ。ハシッテテ、キモチイイデス」


「時間は全然大丈夫だから、ゆっくりでいいよ」


「ハハハ。ヌカリヤサン、シンパイショウ」


なんかハンドル握ると人変わってないか?横目で見ると、頭の蛇が四方八方に気を配っている。


「もしかして後ろも見えてる?」


「ヘビガ、オキテイルトキハ、ミエテマスヨ」


やっぱり見えてるんだ。八戸さんに死角なし。気をつけないとな。


「チナミニ、ネツデ、イキモノモタンチデキマス」


ピット器官!頭の蛇達、結構優秀だな。


「ところで、これから行くお客さんだけど、メールは確認した?」


「ウシノ、モンスターニナッタオキャクサン、デスネ」


そう。これから訪問するのは牛のモンスター化、つまりミノタウルスになったお客さんだ。


「トイレの相談をしたいってことだけど、今回の気をつけるポイントは?」


「シッポト、ベンキノサイズ、デスカ?」


「そうだね。シッポ用のハンガーと便器のサイズ、後はトイレットペーパーのホルダーの位置とかウォシュレットなんかも気にした方がいいね」


「リョウカイデス!」


「って、なんでスピード上げたの!?」


「ヤルキノ、アラワレデス!」


やっぱりハンドル握らせると危ない!



#



「イヤー、マイッタヨー」


そう言うのは今回のミノタウルスのお客さん。今までのトイレを使っていたら切れ痔のようになってしまったらしい。まぁ、なかなか綺麗に拭けないし、既存のウォシュレットは合わないから仕方ない。


「ナルホド。マズ、シッポヲアゲテオク、ハンガーガヒツヨウデスネ」


「ハンガー?」


説明を引き継ぐ。


「ええ、そうです。今あるトイレのタンクにシッポを止めるハンガーを付けた方が良いですね。シッポを真上に上げてないと綺麗に拭けないですからね。後、ハンディタイプのウォシュレットも必要ですね」


「ソンナモノ、アルノ?」


「エエ、アリマス。コチラデスネ」


八戸さんは最近メーカーが出したタンクから給水するタイプのハンディウォシュレットのカタログを見せる。


「これなら毎回水を入れる必要がないので楽なんですよ。今のタンクの蓋だけ交換すればすぐに使えるので喜ばれてます。テールハンガーとハンディーウォシュレットと可変式の便座をセットで導入されるお客さんが非常に多いですね」


「ナルホドナー。コウジヒハ、ケッコウカカル?」


「これぐらいだと2万もしないですよ。ちなみにお風呂は大丈夫ですか?湯船を交換される方が凄く増えているんですよ」


「ジツハ、ユブネガチイサクテネー」


「なるほど。その場合は──」



#



もうすっかり夕暮れ。3件の訪問を終えての帰路はそれなりに混雑していた。


「ヌカリヤサン、スゴイデスネ」


「えっ、何が?」


「オキャクサンニ、ツギカラツギヘト、テイアンシテ」


「まぁ、そこそこベテランだしね。それに実際に困っているお客さんが多いから、提案するのも楽だよ」


「キレジ、タイヘンソウデシタネ」


「ね。怪我とか病気になった時が困るよね。今まで通りにはいかないだろうし。ウチはリフォーム屋だから出来ることは限られてるけど、お客さんの生活が少しでも良くなればって思いながら働いてるよ」


「ワタシ、ガンバリマス!」


「その意気だよ」


「ハイ!」


「って、またスピード出てる!」


「イキゴミヲ、スピードデ、ヒョウゲンシマシタ」


その日はなんとか無事に会社に着いたのだった。

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