新入社員
週一定期!
「忽滑谷くん。このサイトどう思う?」
社長が俺に見せてきたのは無料で求人広告の出せるサイトだ。レイアウトは野暮ったいが、俺でも聞いたことがあるぐらいなので、それなりに有名な筈だ。
「まぁ、タダならいいと思いますよ。って、ついに新人を入れるんですね!」
「流石に営業が足りなくなってきたからね。それに今はモンスター化した人を正社員として雇用するとお国から補助金が出るんだよ」
なるほど。ケチケチ社長の重い腰を上げさせたのは、補助金か。
「最近の問い合わせの半分以上がモンスター化に絡んだものですからね。営業マンとしてもモンスター化している人の方が喜ばれるかもしれませんね」
「やはりそう思うかい?よし!じゃ、求人載せちゃうから、面接決まったら忽滑谷くんも同席してね!」
「えっ、面接にですか?」
「そうだよ。新人を採用したらしばらくは忽滑谷の下につけるからね」
それはつまり、通常のノルマをこなしながら新人教育もするってことですね!?社畜性能試されるわぁ。
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経験不問。要普通免許。モンスター化した人の気持ちがわかる人大募集!という求人に対して、最初の1週間は全く反応が無かった。しかし2週目からはだんだんとアクセス数が増え始め、もう既に5件の応募があったらしい。
そして本日は2件の面接が予定されている。もちろん定時後だ。いつもは物置になっている応接室を大急ぎで片付け、あとは待つばかり。
「忽滑谷君、きっとあの人が1人目だよ!」
窓から地上の様子をずっと窺っていた社長がはしゃぎながら言った。どんだけ楽しみなんだ。
「どんな感じの人なんですか?」
「うーん、トカゲ?」
「ちょっと社長!面接では絶対にそーいうこと言わないでくださいよ!!」
「えっ、ダメなの?」
「駄目ですよ!この事務所がどうなってもいいんですか!?」
「大袈裟だなぁ。まぁ、気をつけるよ」
社長を注意しているうちに事務所の呼び鈴が鳴った。
「わっ、来た!」
「もういいですから、社長は応接室に行っててください」
社長は少しシュンとして応接室へ入っていった。
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「弊社を志望した理由を教えてください」
「ワ、ワタシハ、リフォームギョウカイニキョウミガ……」
んなわけあるかい。俺がこの会社に就職したのも自転車で通えて給料がそこそこ良かったからで、リフォーム業界に興味があったわけではない。
「なるほど!リフォーム業界に興味があったんだね!それはウチにピッタリだ」
おい社長。面接久しぶり過ぎて馬鹿になってません?
「営業職なので社用車で客先に行くことになりますけど、運転は大丈夫ですか?」
「カラダガ、オオキクナッテシマッタノデ、アメシャヲ、ヨウイシテイタダケタラト」
「……アメ車ねぇ」
流石の社長も言葉に詰まる。そもそも社長はケチなのだ。社用車は軽以外考えられない筈だ。
「ホンジツハ、アリガトウ、ゴザイマシタ」
リザードマンの面接を終えて社長はグッタリしていた。そもそもはしゃぎ過ぎなんだよなぁ。
「忽滑谷君、もう帰っていい?」
「駄目ですよ!もう次の面接者が来ますよ」
「いやー、もう疲れちゃって。忽滑谷君に任せるよ」
「決定権は社長にあるんだから、社長は必須です!」
「えー!って、もう来ちゃったね」
事務所の呼び鈴が2度鳴らされた。
「社長は応接室でドンと座っててください!」
社長は渋々、応接室に引っ込んだ。
「どうぞー」
事務所のドアを開けて面接者を迎え入れる。
「って、八戸さん!?」
「シ、シツレイシマス」
事務所に入ってきたのは、コンビニの無気力女店員こと、八戸さんだった。




