ババア来襲
ちょっと前に書いていたやつを供養させてください。
ドンドンドン
ちっ。うるさいな。また隣の部屋のババアか。テレビの音がしただけで一々文句言いに来やがる。もう23時まわってんだぞ。晩酌を邪魔しやがって。どう考えてもお前の方が迷惑だろ。
ドンドンドンドン
「うるせえ!」
俺は玄関まで走り、ドアを叩き返す。本当に頭にくるババアだ。
ズゴンッ!
外からの衝撃で玄関ドアが内側に凹んだ。なんかやばい。どうなってんだよ。色々と洒落にならんだろ。糞ババア。
ズゴンッ!ズゴンッ!
追い討ちされた玄関ドアがボコボコになって今にも破られそうだ。流石にこれはおかしい。俺は台所に行って包丁と鍋蓋を装備し、ババアに備える。
ズゴゴン!
玄関ドアが破られのっしのっしとババアが部屋に入って来た。顔はババアだが体型が全然違う。筋骨隆々でシャツがパンパンだ。いや、顔も違うな。よく見ると角が生えてやがる。
「ウ、ウルルルセエエエ!テレビイイイ」
おいおい。人間辞めたのかよ。
「勝手に人んち入ってきて何言ってんだよ!」
「バラエティバングミイイミルナアアアアア!」
「んなもん俺の勝手だろ!さっさと出て行けよ!」
「エヌヌヌエイチケケケケエエエミロオオオ!」
ババアが大口を開けて飛びかかってくる!
咄嗟に鍋蓋を口に咬ますと、ガチガチと必死に噛んでいる。ババアが馬鹿でよかった。さっと心臓の辺りに包丁を刺し入れる。
ゲハッ
ババアはやっと鍋蓋から口を離した。油断は出来ない。包丁を何度もグリグリしてから蹴り飛ばすと、ババアはしばらくもがいて動かなくなった。
「ふん。俺は民放が好きなんだよ」
毎日ババアとの戦闘をシミュレーションしていた甲斐があった。モンスター化は想定外だったが日々の反復が効いたな。俺の勝利だ。
不思議と臭いのしないババアの死体を開いたままの玄関から追い出して外の様子を伺う。これだけ暴れたのに静かなもので野次馬もいない。6戸のアパートでおかしいのはババアだけか。
ふっと力が抜けて急激に眠気が襲ってきた。そもそも今日は寝不足だったのだ。玄関のことは気になったがどうしようもない。這うようにベッドに辿り着き、身体を投げ出した。とりあえず、おやすみ。