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婚約者が親友と浮気したので婚約破棄したら、なぜか幼馴染の騎士からプロポーズされました  作者: 鳥柄ささみ


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29 ……張るほど胸がないわ

「……リさま、マリーリさま、マリーリさま?」


 目の前にずいっと出されたミヤの顔。

 マリーリはパチパチと瞬きしたあと、ミヤの瞳に視点が合った。


「ん? あぁ、ミヤ。どうしたの?」

「どうしたもこうしたもありませんよ。ぼんやりし過ぎです」

「そう、かしら?」

「そうですよ。……昨夜ジュリアスさまと何かありました?」

「んー、別に」

「えーー、本当にぃ〜?」

「本当の本当」

「怪しぃ〜」


 ミヤが疑いの眼差しで見つめてくる。

 確かに、マリーリは朝からぼんやりとしっぱなしで朝食でカトラリーは落とすわ、服にジャムを落とすわ、歯ブラシと間違ってヘアブラシを咥えようとするわでずっとミヤから体調が悪いのではないかと心配されていたのだ。

 額に触れられてももちろん熱はなく、昨日動きすぎて疲労からくる体調不良ですかねぇ、と言われマリーリがそれを否定しつつ今に至るが、こうもぼんやりとしていてはやはり心配性のミヤは気掛かりであるようだった。


「まさか、身籠っ……」

「ち、違うわよ! できてない!!」


 ミヤからのキラーパスに思わず大きな声を上げる。

 たまにとんでもないことを言い出すミヤに、マリーリはヒヤヒヤした。


「えーーー、でも昨日はあんだけイチャイチャしてたのに、今朝はジュリアスさまと顔も合わせてませんでしたし、絶対何かありましたよね?」

「ミヤの気のせいよ」

「えーーーー、絶対マリーリさま隠してる!」


 洞察力が凄まじいミヤに隠し通せる自信はなかったが、とりあえずしらばっくれるマリーリ。

 ミヤはやはり信じてくれる様子もなく訝しげな表情のままだ。


「……まぁ、言いたくないならいいですけど。ところでこのあと新しく雇用する方の面接するんですけど、採用する上での希望とかあります?」

「希望……? 特には」

「もう、そんなこと言って……。一応奥様なんですから、その辺ちゃんと指標みたいなの設けないとダメですよ」

「そうなの?」

「そうです!」


 ミヤにキッパリと言われてしまって、困惑する。


(指標、指標と言っても……)


 今まで娘という立場で受け身だったため、急に指示する立場になって戸惑う。

 だが、だからといってこうして戸惑っているままでは使用人達に示しがつかないのも事実であった。


「そうね。じゃあ、フィーリングが合って、悪口や陰口を言わない人がいいわ。そういう人はきっと和を乱すだろうから」

「なるほど、承知しました。……マリーリさま」

「な、何?」


 何か変なことでも言ってしまったか、と身構える。

 自分やみんなにとって一番重要なことを言ったつもりであったが、ダメだっただろうかとマリーリは不安になってきた。


「もっと自信を持ってください。私達はマリーリさまだからここでお世話になって奉仕しているんです。もっと胸を張ってください」

「胸を、張る……」


 自分のささやかな胸を見下ろす。


「……張るほど胸がないわ」

「いや、そういうことじゃないです」

「え、と……?」

「たまに天然入るのやめてください。もう〜、とにかく! 自信持ってくださいってことです。私達はマリーリさまのためにお仕えしてるんですから、マリーリさまがしたいようにしてください」

「わ、わかったわ」

「本当にわかってますぅ〜?」


 再び疑いの眼差しを向けられる。

 存外ミヤはしつこい。

 いや、いつまでもうじうじしてしゃきっとしないマリーリも悪いのだが。


「本当にわかったから」

「そうですか? ……ならいいですけど」

「そういえば、ジュリアスは?」

「ジュリアスさまなら早々に馬でお出になられましたよ。夕方までには戻られるとか」

「そう。じゃあ、せっかくですし私はアトリエにでもこもっていようかしら」

「えぇ、ぜひそうしてください! エントランスが寂しいので、できればそこに飾るようにまぁまぁ大きめのものをお願いします」

「えーーーー、ちょっと待って、飾る気!? 嫌よ。恥ずかしい」


 思わぬミヤからのお願いに、すぐさま拒絶するマリーリ。

 実際趣味でやってる素人の絵を飾るなんて、狂気の沙汰としか思えなかった。


「えー、何をおっしゃいます! マリーリさまの絵はとてもお上手なんですからご謙遜なさらないでください! そもそも、せっかくジュリアスさまがアトリエを用意してくださったんですから、ぜひ描いてください!!」

「えーーー? 嫌よ、というか無理よ。私は素人よ? 勘弁してちょうだいな」

「でも、わざわざジュリアスさまがアトリエまで作ってくださったんですよ? それなのに趣味だけでいいんです? せっかくとてもお上手なんですし、絵は飾られたほうが生きてくるんですよ?」

「そう、かもしれないけど……」


 ミヤに言われてマリーリもだんだんそうかもしれない、と思ってしまう。

 その辺りはミヤの思うツボなのだが、単純なマリーリはそんな策略などつゆ知らず、術中にハマっていく。

 ミヤは最後のもう一押しとばかりに追撃した。


「ほら、せっかく描いてもらったのに飾られない絵が可哀想だと思いません?」

「それは……もう、わかったわよ。描けばいいんでしょ、描けば」

「さすが優しいマリーリさまですね! あぁ、できれば花の絵がいいです。明るくて朝見たときや来客の方々の気分が上がるのがいいですね」

「随分と注文が多いわね……」

「ふふ、よろしくお願いします」


 なんだかミヤに乗せられてしまったような気もするが、仕方ない。

 まだ昨日のパーティーでの疲労も残っていることだし、ジュリアスもいないということで好きなことをさせてもらおうと思う。


「何かあれば呼んでね」

「もちろんです。あぁ、先日の引っ越しの際に道具は搬入してますが、もし足りないものがありましたら遠慮なくおっしゃってくださいね」

「大丈夫よ、それくらい自分で探しながら用意するから。それにミヤ達はこのあと面接でしょう? しっかりと見極めよろしくね」

「もちろんです。私、人を見る目だけは確かですから」

「えぇ、期待してる」


 実際ミヤは本質を見抜くのが得意なので、きっと優れた洞察力でより良い人材を雇用してくれるだろう。

 その辺りに関しては全幅の信頼を置いているため、特に不安はなかった。


「では、よろしくね」

「はい、マリーリさま」


 ミヤが恭しく頭を下げるのを見てから部屋に戻る。

 そして汚れてもいい絵画用のチュニックを着てから、マリーリはアトリエに向かったのだった。

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