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巻き戻った令嬢~私が跡継ぎ産んであげる!  作者: じいちゃんっ子
第1章 改めまして、宜しくお願いしますわ!
2/8

第1話 早速ですが、お久しぶりです。

意識が失われた瞬間、身体が投げ出される。

酷い頭痛、死ぬって意外と先があるのね....


「お嬢様!!」


朦朧とする中、叫び声が聞こえる。

走馬灯にしてはおかしい、何も頭に浮かんで来ない。


「アヌシー?」


目を開けると1人の少女が私の手を握りしめていた。

思わずアヌシーの名を言ったが、そんな訳無い。

彼女は50歳。

さっき会ったばかりだから間違う筈がない。

きっと親戚なんだろう。

死ぬつもりで引き裂いた首筋の傷が浅くて死にきれなかったのね。

アヌシーの処置が間に合ったのか、余計な事を。


「良かった、意識が戻られたのですね」


アヌシーに似た少女は涙を流しながら私に飛び付いた。

駄目よ、首筋を切り裂いたんだから貴女に血が着いちゃう。


「あれ?」


首に手を当てるが傷がどこにも無い。

それに血飛沫が部屋を染めた筈だ。


「ここはどこ?」


先程の部屋では無い。

でもどこかで見た事が、まさか?


「お嬢様...」


アヌシーに似た少女は悲しそうに私を見る。

『お嬢様』って、私は48歳だよ。

そう呼ばれるのは抵抗がある。


「あれ?」


ふと自分の手を見る。

おかしい、シワ1つ無い艶々の手。

それに右手の指も揃っていて身体も小さく、

...両足が有る?


「やはり頭を」


私を見ながら悲しそうに首を振る少女。

これは確認するしかない。


「アヌシー?」


「はい」


やはりアヌシーみたいじゃなく、アヌシー本人の様だ。


「今はいつ?」


「あれから3日です」


質問の仕方が悪かったかな?


「今は何年の何月何日なの?」


「あのお嬢様...」


「答えて」


真剣な眼差しでアヌシーに迫る。


「分かりました。

今は王歴325年6月13日です」


「そう」


成る程、つまり38年前。

って事は私10歳?

今私が見てるのは最後の夢なんだろう、にしても随分昔ね。


「お嬢様」


「何かしら?」


「ひょっとして記憶を?」


「何故?」


記憶とはどういう意味だ?


「いえ、その....」


気になるな。そもそも、どうしてアヌシーは心配してるんだ?


「私に何かあったの?」


「覚えてらっしゃいませんか?」


「ええ」


38年前をすぐ思い出せる訳が無い。


「分かりました、お嬢様は階段から転げ落ちたのです」


「階段から?」


「はい王宮の」


「王宮の階段か」


思い出したよ。

私はネクシルとお茶をしたんだ。

忘れ物をした私の為にネクシルが部屋へ取りに戻って...


「マリア!!」


突然扉が勢いよく開いた。

私が一番会いたかった最愛の人。

なんて愛らしい姿なの!


「ネクシル!!」


「わ!」


ベッドから飛び降りネクシルに抱き着く。

アヌシーが驚いてるが構うもんか。

もう会えないと思っていた。

自分の足で駆け寄る、10年前に失なった私の両足!


素晴らしい夢。

ネクシルは王子、そんなに簡単には私の元に来られる筈がない。

悔いは無い、最後にこんな素晴らしいプレゼントを....


「アヌシー、マリアは一体どうしたんだ?」


「すみません、私にもさっぱり」


ネクシルの胸に身体を埋め、グリグリしてると困惑した2人の声が聞こえる。

一向に覚めない夢、ひょっとして?


「あのネクシル」


「どうした?」


「どうして私の家に?」


「マリアの見舞いに決まってるだろ」


「そうです、ネクシル様は毎日お嬢様の様子を尋ねに...」


「おいアヌシー!!」


「申し訳ありません!」


ネクシルが慌て、アヌシーは必死で謝ってる。

毎日私の見舞いにネクシルが?

確か前回は私の意識が戻ってから数分後にネクシルが現れて。

『報告を聞いて来た』って....


「そういう事か」


「何が?」


「いいえ、何でも」


分かった、私の屋敷から王宮まで馬でも30分は掛かる。

直ぐに王宮まで報告してもあんなに早くネクシルが駆けつけられる筈がない。

毎日見舞いに来てくれていたのね。


「今回もありがとう」


「は?」


これは夢じゃない。

込み上げる嬉しさに涙が止まらない。


その後駆けつけた医師達に身体の隅々まで検査をして貰った。

医師は毎回ネクシルと一緒に来ていたみたい。


「どうですか?」


心配そうなネクシルとアヌシー。

医師団で一番偉い先生に尋ねた。

私?全然大丈夫。だって2回目だし。


「「頭のコブ以外は特に...」」


「へ?」


いけない、つい一緒に言っちゃった!


「すみません、どうぞ」


「特に無いですわい」


長い口髭が震えてる。

どうやら怒らしてしまった。

ヘブライ宮廷医師長は怖いのよ。

でも裏ではスラム街で無料の診察をしてる良い人なんだ。

本人は隠してるけど。


「どうして笑っておる?」


「いいえ」


私の様子をヘブライ先生が不思議そうに見る。

そう私は前回余り感情を出す娘じゃなかった。


「お嬢様、淑女の嗜みは?」


「止めます」


懐かしい、前回私の愛読書。

[王宮貴族、淑女の嗜み]

これを読んで自分を縛ってたのよ。

でも今回はやめだ。

私は自由に生きるのよ!


「ヘブライ、頭を打つと性格まで変わるのか?」


「いや聞いた事ありませんな」


後でネクシルとヘブライ先生が相談してた。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  今まで、過去に戻りたいと思ったことがなかったけど…… このお話を読んで、性格が違う自分になれるのなら、もう一度やり直してみたいという気持ちに気づいてしまいました。  隠れた願望を気づかせ…
[一言] 48と50だったんですね。まあそこそこそこの年とは思ってましたが。 さてこれから物語がどう転ぶか。
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