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壁|w・)読み直しができませんでした。

誤字脱字などあればご報告いただけると助かります……。


 翌日。学校の自分の教室に入ると、いつものように誰もがこちらを見て、そして目を逸らす。さすがに昨日で分かっているのか、二度見されるようなことはなかった。

 夏樹の席をちらりと確認する。夏樹はいつものようにイヤホンで耳を塞ぎ、雑誌を読んでいた。何の雑誌だろうか。少し興味がある。

 ただ、声をかけることはできない。迷惑をかけたくないから。

 そうして自分の席に座って待つことしばらく。いつものように、奴らは来た。


「うげ、いきなり嫌な顔見たよ」


 そんな、嫌でも聞き慣れた声。振り向かなくても分かる。椎橋だ。


「聞いてんの? あんたのことなんだけど」


 徹底的に無視したいところだが、後が怖い。内心でため息をついて、春菜は椎橋を見た。


「おはよう……、椎橋さん」

「はっ。その髪、戻さないんだ? 根暗には前の髪型がお似合いだよ」

「その……。もう、切っちゃったし……」

「知るか。明日には戻せよ。あんたの顔なんて見たくないの。戻さないと分かってるよね?」

「そんな無茶な……」

「無茶でもやれ。命令」


 理不尽にもほどがある。春菜が思わず頬を引きつらせていると、それが、視界に入った。

 ふーちゃんだ。ふわふわ浮かぶふーちゃんは、普段では考えられないほどに冷たい目で椎橋を見下ろしていた。そしてその口角が、ゆっくりと持ち上がる。すごく悪い笑顔になった。


「え」

「なに? 何か文句でもあんの?」

「いや、えっと……」


 いつの間に取っていたのか、ふーちゃんの手にはチョーク。周りから見れば、あのチョークは空中に浮かんでいるように見えるはずなのだが、他の人は気付いていないようだ。

 けれど確かに、ただの白いチョークが浮かんでいるなんて誰も思わない。意識していなければ気付かないかもしれない。


 ふーちゃんは春菜へとにっこり微笑みかけると、そのチョークを、投げた。

 椎橋に、ではない。

 夏樹に、だ。


「いて」


 夏樹が小さな声を漏らす。直後に、ころん、とチョークが床に転がった。え、と誰もが、椎橋ですら一体何がと凍り付く中、夏樹はチョークを拾い上げた。そして、大きな舌打ち。とても怖い。

 夏樹が、般若を思わせるような表情で周囲をぐるりと見回して。そして、春菜と目が合った。


「あ」


 その表情の変化は劇的だった。怒りで歪んでいた表情からは一瞬で険が取れ、それどころかとても嬉しそうな、まさに花が咲いたような笑顔になっていく。

 普段ではまず見せないその表情に多くの人が困惑する中、夏樹はチョークを黒板の方へと放り投げて、春菜の方へと歩いてきた。


「おー! 春菜! 本当におんなじクラスだったんだな! おはよう!」

「あ、うん。えっと……。おはよう?」


 視界の隅で、椎橋がぎょっとして体を仰け反らせたのが分かった。少し面白い。なお、天井付近ではふーちゃんが笑って身をよじらせている。元凶が何をやっているのか。


「なんだよ、来たなら声かけてくれよ。少なくともあたしが来た時はいなかったよな?」

「うん。その、本を読んでたから、悪いかなって……」

「あん? あんな本どうでもいいよ。……いや、どうでもよくないかな」


 夏樹は少し考えると、不意に椎橋へと目を向けた。はて、と首を傾げる。


「誰、こいつ」

「な……」


 絶句する椎橋の代わりに、春菜が紹介することにした。


「えっと……。椎橋さん。クラスメイトだよ」

「ああ……。いたな、そんなやつ。なに、友達なの?」

「あー……」


 どうしよう。これはどう答えたらいいんだろう。椎橋へと目を向ければ、かつてないほどに蒼白になっていた。まさか、ここで夏樹が関わってくるとは思っていなかったんだろう。昨日は一切関与してこなかったのだから。

 春菜も、そして椎橋も黙っていると、面倒くさくなったのか夏樹が鼻を鳴らして、


「ま、いいや。この子、かりてくよ」

「あ、ああ……」

「ほれ。来い」

「うん……」


 夏樹に手を引かれ、席を離れる。そのまま、夏樹の席へ。

 夏樹は気付いているのだろうか。教室から音が消えていることに。誰もが固唾を呑んでこちらを見守っていることに。

 多分、気付いてないんだろうなあ。興味なさそうだし。

 夏樹は先ほどまで読んでいた雑誌を春菜に渡してきた。


「えっと……」

「ちょい待ち。お隣さん、いるかい? いないね? 春菜、そこ座れ」

「ええ……」


 横暴だ、春菜が頬を引きつらせて、席の主を探す。すぐに、友達と一緒にいたのであろう女生徒が目に入った。苦笑を浮かべ、どうぞと手のひらを見せてくれる。春菜は小さく会釈して、座ることにした。


「それで、なに?」

「おう。これだよこれ」


 夏樹が見せてきたのは、とあるゲームの特集だ。なんだろう、と見てみると。


「え。ええ!? 続編!? うそ!」

「さすが春菜だ。これ、やってたんだな。そうだよ続編だよ出るらしいぞ!」

「うわ、うわ、びっくりした! 信じられない!」


 特集されていたのは、半年前に発売されたアクションゲームについてだ。爽快感のあるゲーム性に、伏線が張り巡らせたストーリー、そして魅力溢れるキャラクターと、最近のゲームにしては珍しく大ヒットとなったゲームである。

 その続編についての情報が載っていた。てっきり、一作完結だと思っていたのだが。


「あたしもこれはやり込んだものだよ。春菜は?」

「やった! もうすっごく!」

「だよなー! いやあ、さすが春菜だ!」


 ばしばしと春菜の肩を叩いてくる夏樹。少し痛いが、けれど悪い気はしない。

 いじめや嫌がらせではない。あくまで親愛によるものだから。それが、なんだか言葉にできないほどに、嬉しい。


「よし、春菜、放課後暇だな?」

「その、園芸部で少し用事があるけど、その後なら……」

「園芸部。へえ。よし、あたしも行く。それが終わったら家に来い」

「え」


 驚いたのは春案だけではない。聞き耳を立てていたクラスメイトたちもだ。

 春菜が聞いてきた話に間違いがなければ、未だかつて夏樹が誰かを自宅に招いたことはないはずだ。夏樹の自宅がどこにあるのかすら誰も知らないとまで言われている。専用のジェット機で通学しているのでは、とまことしやかに噂されるほどだ。


壁|w・)誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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[良い点] ふーちゃんナイスアシスト! でもチョークより消ゴムとかの方がよかったかも [気になる点] 自家用ジェットなるほど たしかにヘリより速いですね。 でも学園に滑走路とかあるとは…… […
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