2.先輩と後輩君のデート 前編
「眩しいな。」
カーテンの隙間から陽の光が差し込み俺の顔を照らしていた。
「起きるか。」
今日は土曜日だ。起きるには早いが目が覚めたのだから仕方ない。
俺は軽めの朝食をとり、ソファーに寝転がった。
するとチャイムが鳴った。誰かと思いドアを開くと先輩がいた。
「せ、先輩!?」
「うふふ、おはよう。後輩君」
先輩は悪戯っぽく笑い、挨拶して見せた。
ちょっといいな…って何考えてんだ。
「んで、先輩今日はどういったご要件で?」
「そうね。突然だけど私とデートしない?」
「!?」
なぜ、デートなのだ!?
まさかこれは何かの罰ゲームなのか?
「どうしたの?もしかして私とデートしたくないのかしら?」
「い、いえそういう訳では…」
「なら、なんなのよ」
うーん…どう答えたものか。
「先輩はいいんですか?」
「?」
「いや、俺とデートなんて…先輩の株が下がってしまうのでは?」
先輩はキョトンとしたが、やがて悪戯っぽく笑いこう言った。
「だって私、あなた以外の人には見えてないもの」
そーだったぁ~
「そ、そうでしたね…」
俺はなんだか少し恥ずかしくなった。
「あ、ところで先輩」
「何かしら?」
ずっと気になっていた。そう、
「先輩はなぜ俺の家を?」
俺は先輩に家を教えた覚えはない。
「そうね。あなたのマンションの前に病院が見えるでしょ?」
「まさか」
「そう、その病院の上から3番目の部屋に私、入院してるのよ。」
そうきたか。
「そこで昨日、あなたがこの家に入っていくのが見えたのよ。」
俺はなんだか背中が寒かった。
「とりあえず、用意してらっしゃい」
「そうですね、ではリビングで少しお待ち下さい。」
「そうさせてもらうわ」
俺は自分の部屋に行き寝間着から着替え始めた。
「おーい妹よ、兄は出掛けてくるが鍵は閉めないからなー」
返事はない。まぁいいが。
「よし、行くわよっ!」
「はいっ!」
俺たちは駅まで歩いた。
「ところで先輩。どこに行くんですか?」
「そうね。あなたはどこか行きたいところあるかしら?」
俺は基本外に出ないため、行きたいところなどは別にない、が気になるところはある。
「そうですね、あそこに行きたいです。」
「ねぇ、後輩君…ここはどこかしら?」
「アニメイトですっ!」
そう、アニメイトだ。前々からここら辺のアニメイトは行きたいと思っていたのだ。
「先輩!見てくださいよ」
「何をよ」
俺はネギを持った少女の人形を見せた。
「熱音メクですよ!」
「あつ…ね…メク?」
先輩は知らないみたいだ。
「私はアニメなどに関しては疎い方なのよ」
そうだったのか。
「すみません。気が利かなくて…」
「いいのよ、楽しければ」
そういった先輩の顔は少しつまらなそうだ。
俺たちはアニメイトを出たあとは近くのレストランに行った。
「1名様ですね。」
「あっちが…そうです…」
「?」
店員は少し困った顔で俺を席に案内した。
「やはり先輩が見えないのは少し不便ですね。」
「し、仕方ないでしょっ!」
しかし、外食とは久しぶりだ。
「先輩は何を食べます?」
「そうね。じゃあハンバーグにしようかしら」
「ここのハンバーグ結構大きいですよ?」
「何が言いたいのかしら?」
「顔が怖いです。」
先輩の顔がなんだかなまはげのようだった。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ハンバーグ定食と日替わりランチを」
「かしこまりました」
一人でこんなに…とか思われてそうだな。
「迷惑かけるわね」
「いえ、気にしないで下さい」
「じゃあここから、今日デートに呼び出した理由を話そうかしら。」
「えっ!?」
「何よ」
「いや、俺に気があるのかと」
「何でそうなるのよ」
「今日呼び出したのは私が元の体に戻れる方法を一緒に考えて貰おうと思ったのよ」
「なるほど」