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ep.6 継承と魔法

あらすじ

スキルを試そう



「おお?なんだなんだ?何を始めようってんだ、シモン」

「フフフ、ヒナタ君の『スキル継承』を使って魔法使いになるのさ」


 庭に出るとレイラと取っ組み合いをしているウルガンが話しかけてくる。ちなみにエロイはあきらめたように苦笑していたが、シモンの発言に興味を持ったようで近づいてくる。


「できればエロイ君とレイラ君も協力して欲しいんだ。二人もまた魔法使いだからね」

「構いませんよ。私も興味がありますし」

「スキルを消せる能力だったら良かったのです。具体的には『木工道具召喚』などを消せるなら素晴らしいのに」

「ああん?俺の飯のタネを消そうだとぉ?」


 ほんと仲が悪いなエルフとドワーフもどき。

 

 そもそもぶっつけ本番で試していいのだろうか。『スキル継承』が取り返しのつかないスキルだったらどうするつもりなのだろう。


「待ってくれよシモン。俺の『スキル継承』には不安な点があると思わないか?」


 シモンは『スキル継承』に大きな期待をしているようだが、実は浅慮なのではないだろうか。『スキル継承』がスキルを譲渡してしまうものであった場合、継承したスキルをもう一度元の人物に戻すことができるかわからない。

 更に言うなら魔法を使ったことがない人が魔力とやらに触れて平気なのか、という疑問もある。


 疑問をぶつけようとするが、シモンは「分かってるよ」と頷き、自論を語る。

 

「十中八九、心配ないよ。大きな制限やできないことは祝福の紙にできないと書かれるからね。それに、ここには四人の『魔力生成』を持った人がいるから、付け替えて戻すということもできる。僕の好奇心だけで魔法を使おうと言ったわけじゃないんだ」

「そうか……。まあ、そこまで自信があるなら任せるけど」

「さっそくだけど、ミティ。僕に『魔力生成』を継承してくれるかな?」

「いいよ。あとで返してね」

「もちろんさ!」


 『スキル継承』の説明文にあった「両者の合意の元でスキルを継承させることができる」の中の合意を口に出して確認したのだろう。

 ミティはスキルを譲渡する能力だと思っているらしい。それならば『スキル譲渡』というスキル名だと思うのだが。


 ここで一つ問題がある。


「なあ、スキルってどうやって使うんだ?」

「任意発動型のスキルならスキル名を口に出すと同時に「使用する!」という意思が大事だよ。僕が植物紙を作るときは気合を注入するような気分だ」

「なるほど。やってみるよ。……『スキル継承』!」


 自分の中から生命力や、魂のようなものが消費されたと感じた。経験のない喪失感に吃驚してしまうが、同時にこれが命数というやつなのかと不思議な確信を得る。

 『スキル継承』は間違いなく発動し、継承を行う対象を探しているようだ。このままでは何も起こりそうにないので、シモンに触れてみる。


「うおお、なんか出たぞ」

「僕には見えないようだ。触れていないと継承できないのかな?」

「ああ、そうみたいだな」


 シモンに触れると透明なウインドウが目の前に浮かび、『シモン・イリアルデ/魔力生成/継承先』と書かれている。こちらに近づいてきたミティの頭に手を乗せようとしたらシュバッと掴まれてもう一枚のウインドウが浮かぶ。こちらには『ミティ・ミラー/魔力生成/継承元』と表示されている。

 ウインドウを観察していると「スキルを選択して継承を行ってください」と文字が浮かび上がる。

 なんともゲームチックな仕様だが分かりやすくて結構だ。


「じゃあ、継承するぞ」

「ああ、一思いにやってしまおう」


 二つのウインドウの『魔力生成』の文字に触れると『継承完了』の文字が浮かびウインドウと共に消え去ってしまう。


「終わったみたいだが」

「?? 魔法、つかえるよ?」


 ミティは右手の上に水の球を三つほど作り出す。

 もしかして失敗? アタシの能力使いづらいの?


「うーん、僕の体におかしな感覚はあるよ。これが魔力だとするなら成功しているはずなんだけど……」

「それでは女神像で確認したらどうでしょう?」

「そうだね。よし、みんなで行こう!」

「俺は仕事があるからやめとくわ。それに俺は魔法のことなんかさっぱりだしな」

「私は南の森の木々を愛でに行かなければなりませんのでここで失礼します」


 自由か。まあ、この二人がいても喧嘩するだけのような気がするので構わないのだが。


 2人を置いて女神像の前に着くと早速シモンが紙を取り出し確認する。


―――――――――――――――――――――


名前:シモン・イリアルデ

年齢:24歳

命数:643

スキル:『記憶力強化』『植物紙生成』『魔力生成1/10』


記憶力強化:常時記憶力を強化する。

植物紙生成:植物紙を生成する。形や厚さは任意で変更できる。命数1。

魔力生成1/10:常時魔力を生成し、一定量を貯蔵する。貯蔵量は本来の能力の10分の1。


―――――――――――――――――――――


 命数多すぎだろ。いや、長期的に生きていくなら妥当な貯金なのだろうか。

 それよりもかなり劣化している『魔力生成1/10』の能力だ。こうなるのかぁ。


「なるほど。劣化した能力を付与するのが『スキル継承』の能力なんだろうね。10分の1とはまた扱いに困るけれど、使い続けたら成長して本来の『魔力生成』に近づける可能性もあるよね」

「びみょう」

「しょぼい」


 はっきり言うなよロリシスターズ。


 そんなことよりもこれはまずい。シモンの予想を聞く限り微妙すぎる能力だ。なんだ10分の1って。

 唯一の希望は継承したスキルが成長する可能性だが、検証をしなければ。


「スキルが成長するかどうかの検証はシモンさんがやるとして、ヒナタさんも『魔力生成』を継承してみては?こういう場合、検証する実験体は多いほうがより考察しやすいかと」


 実験体と書いてモルモットと読むのだろうか。涼しい顔してエロイのマッドサイエンティスト気質が見え隠れしているように感じる。


「それはやってみたいんですけどね。命数ってそんなに使っていいのか」


 そう、忘れてしまいそうだが命数10を消費しているのだ。調子に乗って使っていて死んでしまうんなんてアホくさい。


「今日はおごりだって言っただろう?十や二十は構わないよ!」

「我々のギルドは荒稼ぎしているので気にせずに実験しましょう」

「あ、ありがとな。二人とも」


 好奇心を抑えられない青年二人に軽く引いてしまうがタダでもらえるなら貰っておこう。


「カティからけいしょうしたまへ」

「ん?まあいいけどね。ヒナタ君、パァーっとやってしまってよ」

「ああ」


 先ほどと同じ流れでスキルを継承すると、体の中から何やらもやっとしたものが発生しているのが感じられる。

 これが魔力なのか。少しづつ体の中に溜まっていく感覚からして今すぐに魔法を使うとはいかないようだが。


「さあ、ヒナタ君も確認してくれ」


 シモンから紙を受け取り女神像で確認する。


―――――――――――――――――――――


名前:霧島 日向

年齢:21歳

命数:280

スキル:『高速思考』『スキルを継承』『魔力生成3/10』


高速思考:集中力に応じて体感時間を極端に長くすることができる。

スキル継承:両者の合意の元でスキルを継承させることができる。命数:10

魔力生成3/10:常時魔力を生成し、一定量を貯蔵する。貯蔵量は本来の能力の10分の3。


―――――――――――――――――――――


 継承したスキルの劣化幅が一定じゃない……?

 いきなりおかしな結果が出てしまった。


「これは興味深いですねぇ」

「まさか人によって継承後のスキルの能力が変化するなんて思わなかったよ」

「検証、研究が必要ではありませんか?」

「こんな珍妙な能力逃せないよね。能力値の幅がスキルや人によって違うなら完全に能力を継承できる相性ってやつを発見できるかもしれない」


 研究者たちに火をつけてしまったようだ。まずは継承した『魔力生成』で魔法を使えるか検証したいし、二人の笑顔を見ていると不安になる。まあ、魔力が溜まっていないのでまだ検証できないのだが。


 どんな検証が始まるのかと戦々恐々としているとクイクイと袖が引かれ、振り向くと空色の髪――――カティがこちらを見ている。


「カティからけいしょうした」

「そうだな。それが?」

「カティからけいしょうした後輩は、カティの弟子」

「その論法はおかしい」


 スキルを継承したら継承した相手が弟子になるなんてルールはないぞ。『スキル継承』は俺しかもっていないのだし。


「カティも師匠から魔術をけいしょうした。魔力をけいしょうしたヒナタはカティの弟子」

「カティすごい。弟子もつのは大魔法使い」

「むふー」


 そういう理屈か。魔力だろうと魔術だろうと継承するのは弟子という彼女の中の先入観があるのだろう。

 ぶっちゃけ弟子を持つということがステータスになっているようだが。


「ミティも弟子欲しい。新人、弟子になる?」

「ダメ、後輩はカティの」


 カティの……なんだよ。弟子だろ。まるで所有物じゃねーか。

 ミティは首をかしげて少し考えると、テッテッテと走ってエロイと話し込むシモンの袖を引く。


「シモン」

「なんだい?」

「ミティからけいしょうしたから、弟子になって」

「もちろんさ!未知の技術、魔法だからね。根掘り葉掘りすべての知識を教えてもらうつもりだよ!」


 今まで無表情だったミティは食い気味のシモンを前に絶望したような顔になる。決定的に何かを間違えてしまったミティは苦虫を嚙み潰したような表情で戻ってくる。


「やっぱり新人がいい」

「新人はカティのだからダメ」

「けち」


 だから俺は所有物じゃねーよとツッコミたい。


 双子が俺を取り合って両側から引っ張り合いをされていると話し合いを終えた二人がこちらに迫ってくる。

 その表情はにこやかだが決して逃がさないという決意が感じられた。


「さあ、実験の続きと行こうか。なに、命数の心配をする必要はないよ」

「『スキル継承』の検証を終えたら継承したスキルの検証も待っていますからね。休む暇などありませんよ」

「弟子はカティと修行」

「新人はミティがうばってみせる」


 はは、人気者はつらいぜ。

 一体いつになったら一人になれるのか。そういえばこっちの世界に来てからずっとシモンと一緒にいる気がする。


 暖かくも不安しかない中で実験が始まろうとしていた。

なんとか流奥義とかを継承しても別に師匠が使えなくなったりしませんよね。

むしろ継承者が修行をする流れでしょう。



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