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ep.3 「嫌だ、と言ったら?」

あらすじ

自分のスキルが謎


「以後お見知りおきを」


 そう言って厭らしい笑みを浮かべるその男、アラリコは周囲を見渡し目を見開くと大げさに驚いて見せる。


「おお、これはこれは。ディアナ様にシモン殿ではありませんか! 各ギルドの代表が集まっているとは、とても話が早くてよろしいことです」

「白々しいことを。分かっていて来たのだろう?」

「ええ、ディアナ様。ヴコール様にお聞きしたからこそ慌てて参上した次第でございますとも」

「……くどい、アラリコ。」

「これは申し訳ございません。ヴコール様」


 ヴコールは周囲を睥睨すると俺に視線を固定する。その顔つきはどう見てもどこぞの武将か山賊の頭である。震え上がりながらもその視線を受け止めようとして……視線を外してしまう。怖すぎ。


 ディアナの背中に隠れつつ観察すると、ヴコールとアラリコの周りはこれまた厳めしい表情をした、これまた盗賊のような男三人が固めている。シモンのいう無法者の山賊まがいという言葉が現実味を帯びてしまった。


 しかし、俺にはとても頼りになる人物がいるのだ。そう、へそ出し女騎士(?)のディアナたそである。シモンには何も期待していない。ひどく短い付き合いだが俺と同じようにディアナの背中に隠れた姿は余りにも頼りない。


「小難しい話はいい。まずはその男が女神より授かった祝福を確認させてもらおう」

「嫌だ、と言ったら?」


 言いたいセリフランキング上位の拒否をかましてみる。こんなガチ無法者っぽい人たちに『スキル継承』を知られたら、おそらくかなり面倒くさいことになると思ったので精一杯の勇気を振り絞った。


「ヒナタ殿。この村、暫定的に『契約と代償の村』と呼んでおりますが、少ないながら法が定められております。新たなる使徒はそのスキルを開示すべし、と。間違いありませんね? ディアナ様」

「……ああ、そのとおりだ」


 ああ、そうだった。保身を考えるあまりつい先ほど聞いたことを忘れてしまっていた。

 そこへシモンが申し訳なさそうに発言する。

 

「ヒナタ君、ここは開示するしかないよ。このルールは最初にここへ来た5人の使徒が定め、今まで全員が遵守してきたものなんだ」

「何をおっしゃいますか、シモン殿。最初の5人の使徒の1人はあなたではありませんか」

「……そういう事なんだ。ごめんね?」


 このクソもやし野郎が原因であると。腹は立つが、郷に入っては郷に従えという言葉もある。新入りの俺がゴネても無駄だろう。


「分かりました。ディアナさん」

「ああ、これがヒナタの祝福だ。確認しろ」


 ディアナはそれまで持っていた俺の祝福が記された紙――もうステータスでいいや――をアラリコに手渡す。

 受け取ったステータスをヴコールとアラリコが確認し、ヴコールが目配せをしたように見えた。俺の勘違いでなければ「アラリコに任せる」と言っているようだ。


「あなたはとても素晴らしいスキルをお持ちのようだ。その力の真髄は検証せねばなりませぬが……。どうでしょう? 『赤槍の獅子』に入っていただけないでしょうか」

「待て、それは早計だ。ヒナタはつい先刻この地に来たばかりで、この世界の把握もままならない状態で所属する勢力を選べというのは酷だろう。それに、私も『騎士団』に勧誘したいと考えている」

「あー、僕もだよアラリコ君。彼は服装や言動を見る限り高度な文明から来ているようだし、君たちとは合わないと思うよ。僕は良き友人になれると確信しているけれどね。どうだい?『賢者の宿』に参加してくれないだろうか?」


 さっそく勧誘合戦である。まさか異世界にきてほんの十数分でこんなにも人気者になれるとは。ナチュラルに『赤槍の獅子』を馬鹿にするシモンはブレない。

 

 そんなことはさておき、3人の意見の中でまともなのはディアナだけだ。そんな中で現在判明している勢力は、


ヴコールの『赤槍の獅子』。名前はかっこいい。

ディアナの『騎士団』。くっころだろうか?心惹かれる。

シモンの『賢者の宿』。空気が読めないタイプのシモンとは良い友達になれるとはあまり思っていない。


 この3つだ。明らかに情報が足りていない。心情としてはくっこ……ディアナの『騎士団』に入団したいところだが、生死に関わる異世界一発目の決断である。慎重に行きたい。

 所属する勢力の規模や活動、ルールに拠点など、知りたいことが多すぎる。


 なので、


「前向きに考えときます」


 秘儀、先送りである。夏休みの宿題が終わらず登校してしまい「やったけど(持ってくるのを)忘れました」と言い放った時の記憶が蘇る。怒られはするが案外何とかなってしまったものだ。


「うん、賢明な判断だよ。それじゃあ、最近導入した方法で判断してもらおうか」

「それは?」

「各ギルドの拠点に一日ずつ泊まって貰うのさ。もちろんその間に君に危害を加えるのは禁止だし、食事もでる。ギルドは3つあるから、無理にとは言わないけれど三日後には判断をして欲しいんだ」


 ホームステイや職場体験みたいな感じだろうか。三日もあればじっくりと考えることができそうだ。……『赤槍の獅子』の拠点に泊まるのは些か不安が残るが。

 何はともあれこれは乗るしかない。


「わかりました。それでお願いします」

「よし、そうと決まれば今日は僕ら『賢者の宿』に来てもらおうか! 順番としては今回はウチからでよかったよね?」

「ええ、今回の順番は『賢者の宿』、『騎士団』、『赤槍の獅子』ですな」


 順番まできっちり決まっているのか。対立しているように感じたが、話し合いをできる程度には各ギルドは関係性を保っているらしい。


「ヒナタ、別にすべての拠点を回らずとも判断していいんだが、ぜひ『騎士団』の拠点に来てくれ。歓迎するよ」

「はい、楽しみにしています」


 ディアナが笑顔で誘ってくれている。実に眩しい笑顔だが、それ以上に真っ白のお腹が輝いている。近くで見ると腹筋がうっすら割れているのが見て取れる。触りたい。

少し心配そうな表情をしてディアナと青年は歩いて行った。もう少しお腹を眺めていたかったのに。


「それではヒナタ殿。明後日を楽しみにしておりますよ」


 ヴコールが無言で背を向けるとニチャアをいう音が聞こえそうな笑顔をみせたアラリコは男たちを引き連れて帰っていく。


「全く。アラリコ君は頭は回るのに品がないよ、品が。それじゃあ、さっそく僕らの拠点に案内しようか。『賢者の宿』というくらいだからね、各ギルドの中でも一番綺麗でしっかりした造りの拠点だよ」

「よろしくお願いします、シモンさん」

「シモンでいいよ。それに堅苦しい言葉使いも。君とは仲良くなりたいからね」


 よかった。そろそろ自然な煽り発言にツッコミを入れそうになっていたからな。


「わかったよ、シモン」

「いいね! 僕は友人と言える存在が昔から少なかったんだ。きっと知能がかけ離れていると友達になるのは難しいのだろうね!」

「うん、原因はそれじゃないな」

「えっ? 君は分かるのかい?」

「たぶんな」


 そんなことを言いつつも少しワクワクしてきた自分がいる。

 各ギルドの勢力などを把握することも大事だが、異世界のことをもっと知りたいと思っていた。スキルの検証もしたいところだし、最初に契約した使徒で知識を溜め込んでいるようにみえるシモンに色々と聞けるだろう。



シモンはナチュラルに人を煽るタイプ。

主人公は心の中ではクソ失礼なタイプです。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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