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ep.21 契り

あらすじ

ドラゴンに挑んだ男2人



 淡々と過去を話すライオネル。その眼は悲しみよりも懐かしさを感じているように見える。


「……それで、どうなったんですか?」

「小一時間戦って、俺はドラゴンの片目を奪ったが右手を喰われてな。そのままドラゴンは空に逃げていったんだが、ガウェインの奴は立ったまま鎧の中で蒸し焼きになってた。奴のスキルの関係上、ブレスで炙られると命数が勝手に消費されちまうから復活はできなかった」


 強力なスキルの代償。それは容赦なく二人の命数を削り切って行ったのだ。右手を喰われながら竜の目を奪ったライオネル。全身を蒸し焼きにされながら最期まで立っていたガウェイン。二人とも世が世なら英雄と呼ばれるに相応しい戦いをしたのだと思う。


「壮絶、ですね」

「往生際まで誇りやらを抱えて立ってた奴に相応しい最期だ。だがな、あいつの残したものを後生大事に抱えていた奴がいてな」


 手酌で酒を注ぐ。こんなにも酒が似合うイケメンは初めて見る。


「奴の形見の盾をな、ディアナの嬢ちゃんが持ってたんだが、最近なくしちまったんだろ? 噂は聞かねぇが相当落ち込んでるぜ?」

「ああ……そういう事だったのか」


 思わず顔をしかめてしまう。

 神殿で復活したディアナ。気丈なイメージと違い、呆然としていたのは死を経験したからではなかったのか。


「なんだ? あの嬢ちゃんのことが気になるのか」

「そりゃ気になりますよ。良い腹してるんで」


 なんだそりゃ、と笑いながら酒を煽るライオネル。ゆっくりとコップを置き、傍にあった布で包まれた棒を取り出す。


「んで、こいつが竜の目を突いた槍だ。スキルで量産はできるが、命数100もする業物だぜ?」

「本当に光ってんのか……。確かに、すごそうな槍っすね」


 差し出された赤槍は立派な造りをしている。しかし、俺は槍を見ること自体初めてだし刀を使う知識が少しだけあるだけだ。


「利息だ。もってけ」

「えぇ? いや、貰えないっすよ。使えませんし」

「使わなくていいんだよ、兄弟。お前は俺の命の恩人だ。その礼でもあるし、借金主でもある。何よりお前が気に入ったんだよ」

「気に入ったってどこが?」


 ライオネルに大したことはしていない。継承ではとんでもない命数を稼がせてもらう予定だし。気に入られる要素があっただろうか?


「なんでも神様をとっ捕まえてきたらしいじゃねぇか。そんな破天荒なことが出来る奴が来てくれるなんて嬉しいぜ。……でもよ、お前、ウチには入らねぇだろ。騎士団にもだ」

「……どうしてそう思ったんです? 何も言ってませんよ」

「分かるさ、兄弟。男の目を見れば大体分かんだよ俺ぁ」

「まいったな。それで、槍を渡してどうしようってんですか」


 目をかけてくれるのは嬉しい。しかし、ライオネルの言った通り俺は『赤槍の獅子』にも『騎士団』にも入るつもりはない。これは何を貰っても曲げたくないところなのだ。


「子分共にこう言ったことがあってな。『この槍をくれてやる奴は俺の兄弟分だ。その義兄弟とは何があっても裏切らねぇ』ってな。だからお前を俺の弟分にする。ギルドが違ったって義弟は義弟だ。この恩は忘れられねぇからな」

「だから兄弟呼びなんすね。ってか、義弟になるのは確定なんすか」


 地味に厄介なのは勝手に兄と弟を決められていることだ。もしかしたら俺が年上かもしれないじゃないか。


「あぁ? 兄弟、お前はガキじゃねぇか」

「ガキって……俺は21っすよ」

「はぁ? いいとこ15くれぇだろ……。でも俺のが年上だぜ? 俺は23だからな」


 僅差である。そんなに若く見えていたのだろうか。大して苦労もしてきていないから顔つきが幼くても仕方ないか。

 異世界に来て三日で兄弟ができるとは思わなかったが、なんだかこの男に認められることがたまらなく嬉しかった。


「分かったよ……よろしく、兄貴」

「おう、弟よ。盃を交わさなきゃあな。俺の弟なら酒は飲めるだろ」

「なんだそりゃ。まぁ、好きだよ」


 俺の地元は焼酎で有名なのだ。得体の知れない異世界の酒なんて何するものぞ。


「男前の兄貴に」

「恩人の弟に」


 にやりと笑い合い、コップを飲み干す。想像よりもキツイ酒だが飲めなくもない。

 こうして、俺は異世界で誰よりも兄貴らしい兄貴ができた。



兄貴と呼べる男。

良い男を書きたい。


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