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ep.19 漢の契約

あらすじ

兄貴にツケ払いを要求された



 シモンを呼び出し、俺とライオネルとヴゴールの四人で女神像に集まった。

 シモンが書いた契約書に俺とライオネルがサインをする。ちなみに文字は全て血文字である。木炭という手もあったのだが、女神が保証する契約は血文字でないといけないらしい。


 ライオネルはヴゴールに肩を借りて立っている。ヴゴールも相当な大男だったが、身長はそれに負けていないだろう。目算で185cmはありそうだ。


「二人とも、契約を確認するよ?」


 そう言って声に出して読み始めた契約内容はまとめるとこんな感じだ。


・ライオネルは今日に継承するスキル一つにつき、ヒナタに300の命数を支払う。

・支払いはライオネルが右腕を取り戻した時から始まり、月毎に分割して返済する。

・毎月の返済命数は両者の合意の下で決定される。

・ライオネルの所有命数が101を下回る場合、返済を遅らせる事ができる。

・契約に違反した場合、女神の罰を受ける。


 大まかにはこんな感じだ。細かいことはシモンに任せているので問題はないだろう。


「僕も忙しいんだよ? ほいほいと呼び出されちゃ困るね」

「良いじゃねぇかシモン。立会人としての報酬は俺が払ってやるからよ」

「はぁ、血を抜いたからか頭がクラクラするよ。それじゃあ女神様に契約書を提出するからね」


 そう言うと手に持っていた契約書を女神像の持っている石板に押し付ける。

 見覚えのある紫色の光が溢れ、契約書がとけるように消えていった。


「……これで契約完了なのか?」

「問題ないよ。ライオネル君が契約違反したら天罰が下るのさ」

「おいおい、なんで俺が契約を破る前提なんだ?」


 ヴゴールに寄り掛かるライオネルは少し疲れているようだ。ヴゴールはとなりで心配そうな顔をしている。意外だな、どういう関係なんだ?


 しばらくすると、『赤槍の獅子』のパシリ、クリスがお目当てのスキル所有者をかき集めてきた。それぞれにスキルを継承させて欲しい旨を伝えると、『赤槍の獅子』のメンバーは二つ返事で頷いた。

 渋ったのは『騎士団』の団員達である。


「団長から今回は協力しろと言われてはいるが……」

「ヴゴールを始めとする『赤槍の獅子』の素行には辟易しているんだ!」


 抗議の声がヴゴールに向かって集まっている。スキンヘッドに血管を浮かべ、睨みつけるヴゴールの事を右手で制して立ち上がる。


「赤槍の獅子が荒れたのは俺が倒れちまったからだ。そのせいで子分たちは行き場のねぇ怒りを溜め込んじまったんだろう。俺の責任だ」

「お頭……!!」

「黙ってろ。……ガウェインの奴が死んだのも俺に一因がある。だが、俺たちは死力を尽くしてドラゴンと戦ったんだ。いけ好かない奴だったが、最後まで漢を貫いた。それに対して俺が謝ることは出来ねぇ」


 そう言うと、ゆっくりと胡坐をかいて座ると片拳を地面につき頭を下げた。

 少し黙った後に、顔を地面に伏せたまま口を開く。


「今の対立も、元はと言えば俺とガウェインの好き嫌いから始まったもんだ。そんなもんに拘っちゃいけねぇ。俺が責任をもって『赤槍の獅子』を纏める。……だから、力を貸してくれ」


 静寂が辺りを支配している。ライオネルは俺だけでなく、皆から荒くれ者の大将として見られている。その男が冷静に頭を下げているのだ。

 察するに、右腕を失い何も出来なくなった自分が不甲斐なかったのだろう。頭を下げ続けるその背中には確固たる決意が秘められているように感じた。


 言葉を失う『騎士団』の団員。その中から一人だけ歩み出てきたのはセシリオだった。彼もライオネルが所望したスキルを所持しているので集められていたのだ。

 セシリオは地べたのライオネルに近づき膝をついて語りかける。


「ここ数ヶ月、初代団長と貴方という柱を失った我々は、情けないことにその喪失感をお互いに押し付けあっていました。この村には貴方が必要です、ライオネルさん」

「……すまねぇな、坊主」

「そ、その呼び方はやめてください!」


 年相応の表情で恥ずかしがる頭をくしゃりと撫でたライオネルは、セシリオに肩を借りて立ち上がった。

 周囲を見回すと、不満げな顔をしている者はいない。むしろ自分を恥じているような表情をしている。


「じゃあ、ヒナタ。ひと思いにやってくれや!」

「……良い男だな、アンタ」

「だろう? 何故かしらんが皆そう言う」


 にやりと笑うその顔は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。



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 全てのスキルを継承し終える頃には日が落ちかけていた。継承したスキルの全てで1/5以上の数値を叩き出したライオネルは物凄い強運、もしくは相性の良さである。

 多くのスキルを手に入れてかなり体調が良くなり、立って歩くどころか走れるようになっていた。


 そんな彼が先ず何をしたかというと。


「今日は俺の復活祭だ! テメェらの自腹で飲めェ!」

「「うおおおお!!!!」」

「お頭ー!」「獅子が蘇ったぞぉ!」「アニキー!」


 宴会である。惜しげもなく昼間に切った木材を燃やしている。後で絶対ディアナに怒られるぞ。


 俺は関わらないぞ、と決意を固めているとライオネルが俺のことをテントに呼び出してきた。


「よお、兄弟。来てくれたか」

「兄弟ってなんすか。それで、用って?」

「ま、座って飲めや」


 勧められた酒を飲んでライオネルの言葉を待つ。

 一口で酒を煽ったライオネルが静かに語りだした。


「ガウェインの奴が何故死んだか、聞いたか?」

「何も。さっきの話だとドラゴンと戦ったとか」

「ああ、そうだ。……俺と奴は毎月、河原で決闘をしていたんだ」


 何その不良漫画みたいな話。というよりも、河原なんてあったか?


「その時だな。あのドラゴンが現れたのは」


 そう言って手酌で酒を注ぐライオネルの話は引き込まれるような力があった。



次回、団長の死



漢臭い話になってしまいました。

でもアチチなお話も好きやねん。


お読みいただきありがとうございます!

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