ep.18 獅子
あらすじ
木こりを経験した
トレントを退治すること七本目。『騎士団』から交代要員が来たのでありがたく拠点に帰る事にした。三兄弟はたらふくリンゴもどきを食ってお昼寝中だ。
そんな俺は誰と一緒かというと。
「いやー強かったんだなぁヒナタ!」
一人はクリスだ。相変わらず雑魚そうな三下フェイスである。
問題はもう一人の方だ。
「トレントに突撃してもぎ取ってくるなんてなかなか出来ないぜ? ねぇ旦那!」
「…………」
無言で同行するヴゴールである。能天気なクリスと共に迎えに現れたかと思うと無言で後ろを付いてくるのだ。
何この人怖い。なんで着いてくんの?
「……これから貴様をお頭の元へ連れていく。舐めた真似をしたら許さん」
「お頭っていうと、ライオネルさんですか?」
「……そうだ。直々に面会をしてもらおう」
こんな怖い人を従えている人物はどんな人なのだろう? 絶対怖い人に違いない。舐めたことしたら指とか詰めさせたりするに違いない。
早速ビビっているとクリスが話しかけてきた。
「お頭はよぉ。俺らみてぇな荒くれ者が心から尊敬できるすげぇお人なのよ」
「クリスは別に荒くれてねぇだろ」
え? と不思議そうな顔をするクリス。もしかして言葉遣いだけで荒くれ者になりきっていたのだろうか。
歩くこと数分。大きなテントにヴゴールが声をかけると返事があり、促されて恐る恐る中に入る。
中には毛皮のコートを肩に羽織った男性が胡坐をかいていた。その顔は真っ青で明らかに体調が悪そうに見える。
しかし、その表情は不敵に笑っていて目には力がある。男が惚れる男といった感じのイケメンだ。
真っ赤な頭髪の中にネコ科の耳が生えている。猫耳なのに威圧感しかない。
ライオネルはエルフのレイラに続いて二人目の亜人、獣人だったのだ。
「よぉ、テメェがヒナタか。まぁ座んな。待ってたぜ」
「……お頭、お体はよろしいので?」
「野暮なこと聞くんじゃねぇよヴコール」
今日は調子がいいんだ、と笑うライオネルにヴゴールは無言で頭を下げる。そこには完全な上下関係が築かれていた。
じっ、とこちらを見透かすように見るライオネル。もしかして狙われているのだろうか。
「おうテメェら。コイツと二人で話してぇから席外せ」
「ハッ。……下手なことしてみろ、貴様は俺が殺してやる」
ヴゴールは去り際に俺を脅すとテントから出ていく。クリスは終始ライオネルの迫力に気圧されて喋れなくなっていた。情けない奴だ。
ライオネルは二人が出ていくとおもむろに口を開く。
「……こっちにきて三日。どうよ、ここの暮らしは?」
「死にかけたり、大儲けしたりと落ち着かないっすね」
「ハハハ、聞いてるぜぇ? 派手にやってるみたいじゃねぇか」
ライオネルが笑うと羽織っていた毛皮が床に落ちる。そこから見えたのは肘よりmも上で切断され、包帯で巻かれた右腕だった。
「その腕は……」
「ああ、これな。ちょっと前にしくじってドラゴンに食われたのさ。エルフの姉ぇちゃんに魔法で治療してもらっているが、どうにも具合が良くねえ」
「……神殿で復活したら元通りになるって聞いたんすけど」
「ああ、命数がありゃあな。俺のスキルには命数を消費して戦えるものがあってな? かわいい子分を守るためにトカゲ野郎と戦ってたらいつの間にか90くらいになっちまってた」
なんと。それなら少しくらいの命数を借りればいいのに。ヴコールをはじめとした子分たちは喜んで差し出すような気がする。
「命数貰えって思ったか? 右腕がねぇのよ。右腕がねぇと命数の受け渡しが出来ねぇ」
「そうか……だからシモンさんは」
「あのメガネがなんか言ってたか? 悪口の可能性が高そうだ」
そう言って笑うライオネルは心底面白がっているようだ。最初の使徒同士、長い付き合いなのだろう。
「体調の良い日は狩りに出るんだがな。そこで無理をするとまた熱が出やがる。結局、稼いだ命数がパァになるばっかりでな、今じゃあもう30くらいしか残ってねぇんだ」
適切な医療設備も薬もない。レイラの魔法だけでは腕の切断という大怪我を治療しきれなかったのか。
「……このままならあとひと月で?」
「ああ。くたばっちまうだろうな」
何の気なしに返すライオネルは諦めた顔をしていない。むしろ、今の状況を楽しんでいる風ですらある。
少し震える膝を残った左手で叩き、俺を見据える。
「そこで、テメェが来たってわけよ! 俺は昔からツイちゃいるが今回は特別ツイてやがる」
「へ? 俺っすか?」
おうよ、と笑うライオネルに訳が分からなくなってしまう。
「いや、医者じゃないし、魔法も使えないっすよ?」
「俺ゃあもう他人に治して貰おうなんて思っちゃいねぇよ。お前のスキルで俺に継承して欲しいスキルがあるのさ」
継承して欲しいスキル? 腕が生えてくるスキルでもあるのだろうか。
「先ずは騎士団のガキの『生命力強化』と『自己再生』だな。後はウチの奴が持ってる『痛覚遮断』と『疾病耐性』、ついでに『血液増加』もだな。おまけに誰が持ってたか忘れたが『毒耐性』に『持久力強化』と……」
「ちょ、ちょちょちょっと待ってくださいよ! それだけの命数は『赤槍の獅子』の皆さんが払ってくれるんですよね?」
「バァカ、子分に大金出させられっかよ。ツケとけ」
「ツケぇ!?」
ならず者の親分はやっぱりならず者である。ツケなんて人生で初めて要求された。
「一回30だっけ? きっかり満額分ツケろ。治ったら十倍にして返してやる」
先ほど挙げていたスキルは8個、満額なら命数240である。その十倍ってアンタ。
「安心しろよ。ここは『契約と代償の女神』様の村だぜ? 女神像の前で契約したら必ず守らなきゃ天罰が下るのよ。継承する時にどうせ女神像に行くんだ、ついでに契約しようぜ」
「それなら……あれ? 治ったらっていつになるんすか?」
「バレたか! ガハハハハ!!」
苦しそうにしながらも腹の底から笑うライオネルは、確かにお頭と呼びたくなるカリスマを持っているように感じた。
書きたかった兄貴分キャラです!
カッコ良く書きてぇなぁ……。
お読みいただきありがとうございます!
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ブクマ20件ありがとうございます!!!!!
うひょ〜





