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ep.17 伐採

あらすじ

ヤンキーに絡まれた



 三兄弟に連れてこられた南の森は恐ろしいくらいに木々が密集し、濃密な植物の匂いに顔をしかめてしまう程だった。

 様々な種類の木が生い茂っているのにも拘らず、その全てにあのリンゴもどき――――通称『赤い実』が生っているのは明らかに異常だ。


 森と荒野の境目では『騎士団』と『赤槍の獅子』の人々が木々を伐採している。木を切り倒し運んでいるところを見ていると、それを監督するように立っているディアナを見つけた。


「お疲れ様だな、ディアナ」

「ヒナタか。別に疲れてなどいないぞ」

「俺の国の挨拶みたいなもんだよ」


 なるほどな、と頷いたディアナは俺の横でメンチきっている三兄弟を見て溜息を吐いた。


「それで、なんでこいつらを連れてきたんだ?」

「俺が連れてこられたんだよ」

「文句あんのかコラァ!」

「仕事しに来たんだよコラァ!」

「アラリコのクソが手伝えって言ったんだコラァ!」


 うむ。忠実な馬鹿どもである。

 しかし仕事とは何をするのだろうか。


「そうか。それではそろそろ現れるであろうトレント共を討伐してもらおうか」

「トレントって木の化け物だろ? 歩けんのか」

「ああ、根を動かしてゆっくりとな。普段は森の奥にいるんだが、木を切ったり果実を大量に取ると少しずつこちらに向かってくるんだ」

「やったんぞコラァ!」

「皆殺しじゃコラァ!」

「腕がなるぞコラァ!」

「うるせぇなぁ」


 おっと心の声が漏れてしまった。聞こえてないよね?

 それよりも、敵が木の化け物なら背中の刀では心許ないような気がする。コイツの切れ味は何でも切れそうだが流石に木材相手には不安が残る。


「ほらヒナタ、この戦斧を使ってくれ。そこの三人は普段から使っているからいらないな?」

「おうよ!」


 初めてコラァ!を付けなかったのはゴロス(長男)だ。後の2人が「信じらんねぇ……!」という顔をしている。そんなに珍しいのかよ。


 それから伐採現場を眺めていたのだが、その時は唐突に訪れた。


「トレントが出たぞー!」

「逃げろ逃げろ!!」


 現場から作業員が素早い動きで逃げていく。

 森の奥から現れたそいつは高さ10メートル程もある太い幹に顔が付いた化け物である。根を動かしてゆっくりと移動していて気味が悪い。


「奴の弱点は上部の枝に生っている巨大な赤い実だ! そいつをもげば直に動きを止める」

「まずは根っこ切るんだぞコラァ!」


 叫びながら突撃したのはクラアス(次男)である。鋭く突き出される根を避けつつ斧で切り落として行き、後の2人もそれに続く。

 三人は言動からは考えられないような連携で次々と根っこを切り飛ばしトレントに近づいていく。


 トレントの攻撃パターンは「根で突き刺す」と「根で叩く」と「根で捕まえる」の三つ、つまり根を切り落とせば後はまな板の鯉という訳だ。木なんだけどさ。


「うわぁ……。これ俺もやんの?」

「ああ、ヒナタならやれるさ」


 トレントは根を地面に張ってはいない。すべて地表で蠢いているので三人が切り飛ばした部分から推測すれば倒れてきそうな方向がわかる。

 木の根に襲われないように慎重に近づくと三人のうちの誰かがトレントを支えていた根を切り落としたようで、想像通りの場所に倒れてきた。


 狙っていた好機に俺は飛びつくように走る。


「おっしゃぁー! 行くぞ『粒子波』!!」


 枝葉の中に突っ込み『粒子波』で葉や小さな枝を吹き飛ばして巨大な赤い実とやらを探す。トレントは抵抗するように枝を振り回すが『高速思考』の力で避けるのは難しくない。

 三度目の『粒子波』を放ったところでスイカよりも二回りほど大きなリンゴもどきを発見した。


「もらったァ!!」


 借りていた戦斧で実の付け根を切り落とし、暴れるトレントから赤い実を強奪して枝の中から離脱した。


「とったどぉぉ! トレント殺ってきたマジで」


 少ない戦闘経験から学んだが俺はどうも戦いになるとテンションがおかしくなってしまうタイプのようだ。そうでもないと怖くて動けないだろうから助かってはいるのだが。


「やるじゃねーかコラァ!」

「生意気だぞコラァ!」

「上手い動きだったぞコラァ!」


 むさ苦しいコイツらに褒められてもあまり嬉しくない。俺が褒めて欲しいのはディアナなのだ。

 そんな期待を込めてディアナを見ると満足そうに頷いている。


「よくやったな、見事な手際だ。これでまた一本良い木材が手に入ったよ」

「えぇ? これ、木材に使うのか?」

「ああ、これだけ太い幹は中々ないから使い道は多いしトレントの木材は腐りにくいんだ」


 出たなファンタジー素材。いや、普通に木材としての特徴かもしれないが。


「それじゃあ、この実も食うのか? ちょっと得体が知れないんだけど」

「それを食べると少しだが命数を得られるぞ? それに美味い」


 やっぱ食べるんだ。食ったら命数が増えるということはこの実自体が眷属なのではないのか。他の神の眷属を食べるのか。複雑な心境である。


 周りを見ると伐採作業に戻ってきた作業員たちがトレントの枝葉を刈って木材にしている。


「では引き続き護衛を続けてくれ。次からは私も参戦するぞ」

「ああ。ディアナがいれば心強いよ」


 あの木材、どうやって持って帰るのだろう?


 そんなことを思いながら作業の護衛を続けるのであった。



ファンタジー素材って胸が高まりますよね!



お読みいただきありがとうございます!

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