拳と刀
クーラーが気持ちいいです。干からびたナマコです。第8話、投稿しました!
…一緒に来い、か。
おそらくこのロボ?はあの蜘蛛男や蟻男達の仲間だろう。多分。
「連れて行ってどうする気だ。」
「それはだな……」
「それは?」
「…………」
ロボが急に黙る。やはり言えないような理由があるんだな。
「ちょっと待てよ。」
「うん?」
ロボが何やら独り言を呟き始める。
「俺は、マスターに「川浪龍牙を連れてくる任務の実行者が急遽お前に変わった」って言われてそのまま出動して今ここにいるから…」
「…………うん、知らん!」
いや知らなかっただけかーい!
「知らんがきっとちゃんとした理由があるんだろう!いやでも来てもらうぞ!」
そう言い放ち飛び掛かってくるロボを横に避けてかわす。
「捕まってたまるかよ!」
左腕を変身させ、森の中を逃げ回る。速さはこちらが勝っているが、ロボはその巨体で木々を薙ぎ倒し猛進してくる。
「逃げるな!止まれ!」
「飛び掛かってくるから逃げてるんだよ!」
それを聞いたロボが止まる。
「じゃあ追いかけなければそっちから来てくれるのか?」
「いや、逃げるね!」
「だろうな!」
そうしてまた追いかけっこ再開。捕まったら大変なのは予想できるが、正直こいつと話すの楽しい。
「でも、そろそろお終いかな。」
俺だって闇雲に逃げていたわけじゃない。この森にある崖、その下に向かっていたのだ。
「ええい、ちょこまかと!」
ロボが後ろから迫ってくる。俺は跳躍し、そこから更に岩壁を蹴り高く跳び上がった。
「オォォラァァァ!」
落下の加速をつけて、渾身の一撃を頭にぶち込んでやる!
「くらえぇぇぇ!」
俺の渾身の一撃は見事にロボの頭にヒットし、鈍い音が響き渡る。そしてそこには…
「か、硬え…」
小さな凹みすらつけられず、悶絶してる俺がいた。
「嘘だろ、渾身の一撃だぞ?」
倒れている俺の横にロボがやってくる。
「観念するんだな。」
あ、もうだめだ。いくらこいつより速くてももう掴まれたらどうしようもない。
「そこまでだ。」
え?
「ん?」
俺とロボがその声に反応すると同時に、ロボの腕が輪切りになっていた。
「何…!」
「おい、逃げるぞ!」
声が聞こえるが早いか後ろに思い切り引っ張られる。
「しまった、待て!」
ロボが手を伸ばすも遅く、その姿は遥か遠くのものとなっていた。
「大丈夫か?」
コルソテクの外れまで来たところで俺は手を離された。
「有難うございます。あなたは…」
声のしていた方を見ると、いかにも侍な見た目の女性が立っていた。
「俺か?俺の名は荒斬。荒斬悪鬼だ。」
「…それ、本名ですか?」
「いや、違う。苗字は本当だがな。」
「じゃあなんでそんな不吉な名を…」
「過去に色々あったんだよ。」
荒斬さんが不機嫌そうな顔でそう言った。
「わかりました、詮索はしません。では、何か御礼を…」
「いや、いい。お前のその不思議な腕を見れたからな。元は取れてる。」
「これは…」
「大丈夫だ、深追いはしない。」
「…有難うございます。」
「ああ、じゃあ俺はこれで。」
「はい。本当に、有難うございました!」
そう言ってお辞儀をすると、荒斬さんは振り返らず、手だけを振って去って行った。
「よし、俺も帰ろう。」
俺は小走りで家に帰った。家に入るとノレアが飛びついてきた。
「龍牙!どうしたのその格好!?」
「あー、これな。ちょっと森の方でな。」
「森って、さっき立ち入り禁止になったところじゃない!なんでそこにいたの!?」
「えーっとな、その立ち入り禁止の原因になったであろうやつに襲われてな。通りすがりの人の助けが無かったらヤバかった。」
「ヤバかった、ってもぉ〜!そんな危ない所行かないで〜!」
ノレアが泣きながら俺の真似をポカポカ叩く。
ヤバイ。可愛い、可愛すぎる。
正直あのロボに感謝してしまうレベルで可愛い。有難う!ロボ!
ノレアちゃん可愛いヨォォォォ!というわけで「龍の牙と龍の腕」第8話、これにて終了、です!