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龍の牙と龍の腕  作者: 干からびたナマコ
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エピローグ〜龍の牙と龍の腕〜

皆さん丁度一ヶ月ぶりです干からびたナマコです。エピローグ、投稿しました!

朝が来た。目を擦りながら身を起こすと、目の前には姉が立っていた。

「あ、起きた?やっほー、お姉ちゃんでーす。」

ぼんやりとした目の先で姉が手を振っている。ちょっとふざけた感じの笑顔に向かって手を伸ばした。

「…ん?」

おかしい。確かに届く距離のはずなのに、何故か姉に触れられない。

「姉ちゃん、何かした?」

問いかけても返答はない。姉はたださっきと同じ表情で無邪気に笑っている。その姿が、周りの景色とともにぼやけ始めた。


「…………夢、か。」

ゆっくりと身を起こす。今いるのはボンドル城の一室だ。そこに姉はおらず、代わりに目の前の机の上に十冊ほどの書類が積み立てられていた。

「寝落ちしたか…。」

「亜守斗様。起きられましたか?」

部屋の外から女性の声が聞こえる。扉を開けると、騎士団の連絡兵が立っていた。

「お仕事、お疲れ様です。」

「ああ。何かあったのか?」

「それが…、いやそれ以前に。ちゃんと休まれていますか?見たところ、寝落ちされたと見受けますが。」

「心配ない。キリがいいところまでやっただけだ。」

敵組織の幹部だから責任を感じてる。なんて口が裂けても言えないから、適当に誤魔化しておく。連絡兵は数回頷くような素振りをした後、「そうだ。」と零して手紙を懐から取り出した。

「要件を忘れるところでした。こちらを。」

「王子からか。…わざわざ労いの手紙を書いてくださるとは。あの方が一番忙しいだろうに。」

「今や王子と平民対貴族と王子以外の王族ですからね。いやはや、我々騎士団もどうしたらいいものか。」

「まあ、暴徒化した奴らを抑えるだけで良いだろうが…それだけでも数がな。」

「ああそうだ。デヴィッド殿からも連絡がありまして。フルコースギャングとの和解が決まったそうです。」

「!そうか。」

デヴィッド以外は知らないが、一応俺が考えた案だからな。まあ、多分アルトガにもバレてるけど。

「キョジンの合同調査を行うということで折り合いがつきました。」

「やはりそうなったか。」

正直何故キョジンがギャルブリアの最終兵器と同じ姿をしていたかは俺も気になる。ラグナは技術の横流しなどはしないだろうし…。そもそも形は同じだがこちらのは機械だしな。

「あと、邪龍の件は白紙化だそうです。何でも「下手に手を出せないから解剖できない」とぼやいていたとか。」

「…そうか。」

…龍牙が多量の出血などをして瀕死になればヴルトロスの力は目覚める。万が一を考えると、やらないのが得策だろうな。

「報告は以上か?じゃ。」

軽く挨拶をして部屋から出る。少し遅れるだろうが、龍牙の様子を見に行かなければ…今日こそは、何か少しでも反応してくれると良いのだが。

「あ、どちらに行かれるんですか?」

「少し、知り合いの様子を見に。」

その言葉を聞いた連絡兵が顔色を変え、駆け寄ってくる。

「どうした?」

「そうだそうだ忘れてました!デヴィッド殿からの連絡で、今日は自分にいかせて欲しいとのことです。」

「あいつの担当は月水金だろ?今日は木曜日だぞ。」

「何でも急な用事だそうで。血相を変えて出ていかれました。」

「…………わかった。今日はあいつに任せよう。」

何があったんだ?後で事情を聞く必要がありそうだな。

「では私はこれで。」

「ああ、ご苦労。私も仕事に戻る。」

「はっ!」

そう言って彼女は走って行った。

「じゃあ、仕事に戻るか。」

そうして仕事に取り掛かってから一時間が過ぎた頃、また部屋の戸を叩く音が聞こえた。

「おい、グル…亜守斗!いるか?」

「この声…デヴィッドか。」

丁度いい。龍牙に会いに行った理由を聞かなければ。

「おはよう、デヴィッド。」

「今はこんにちはなんだが…まあ良い。調子はどうだ?」

「良くも悪くもない。寧ろお前の方が心配だ。騎士団の仕事も楽じゃないだろう。」

「まあな。ああ、そうだ。今日は個人的な考えで意見をもらおうと思っていてな。」

「考え事か?」

俺の質問に、デヴィッドは頷く。そうすると彼は俺の部屋の窓から外を眺めながら呟いた。

「この国で信仰されてる光の神、アルマノスは死んだ。でも未だにあいつを信じ続けてる人達がいる。もう既にいないものをいると騙すのはどうかと思ってしまうんだ。」

デヴィッドの横に並び、同じように空を見上げる。

「…変わらないさ。今までと。」

「変わらない?」

「ああ。寧ろ今の方が良い。下手に実在なんてしたらそれこそ厄介なことになるのは、俺が一番わかってる。神は、形が無いくらいが丁度良いのさ。」

「そうか…そうだな。ああ、そうだ。」

デヴィッドは何かを思い出すと、景色を見るのをやめ、部屋の中の椅子に座った。

「今日の龍牙の様子は?」

「…………は?」

「いや、は?って言われても。今日は木曜日だぞ?今日はお前が龍牙の様子を見に行く日だろう。」

「え?お前が行くって連絡兵から聞いたが…。」

デヴィッドが首を横に振る。その後ろを連絡兵の一人が通り過ぎた。

「ちょっと待て!」

「はい!?」

「あ、急に声を荒げてすまない。私に連絡をした連絡兵を探しているんだが。」

「はあ…特徴は?」

「あー…女性だった。」

まずい。さっき会ったばかりなのにもう情報が出てこない。連絡兵も困ったような表情をしている。

「えーっと、亜守斗様。」

「待ってくれ。今思い出すから。」

「いや…連絡兵は男所帯ですが。」

「…何?」


ぼんやりと虚空を眺める。そのままごろんと寝転がると、頭に新聞紙が当たった。

「はあ…。」

その一面には、名無しのライダーに関する記事が一面で載っていた。その裏には、邪龍に関する記事が、これまた一面で載っている。

「うっ…オエッ!」

記事ではそれぞれ「天使を救いし英雄」「最強最悪の邪龍現る」と書いてある。

「…あーもう、どうすりゃ良いんだよ!」

部屋の中をゴロゴロと転がり回る。この国一の名声と悪名、そのどちらもを背負うことになるなんて思いもしなかった。

「もしどちらかでもバレたら…あぁ嫌だ。考えたくもねえ。」

それでも脳裏をチラつく二つの影。緊張と恐怖で一人苦しみ、悶える。そんな生活をもう一週間は続けただろうか。

「あんだけノレアに言っておきながら、情けねえ。」

顔を手で覆ったその時、部屋の戸を叩く音が聞こえた。

「…今日は、亜守斗か?」

声をかけるが、返答は無い。その代わりに、ゆっくりとドアが開かれた。

「…連絡兵?」

「顔見ろ、顔。」

連絡兵が自分の顔を指さしながら兜を外す。

「よっ。久しぶりだな。」

「荒…斬…?」

連絡兵の正体は、悪戯っぽく笑っている荒斬だった。

「無事退院出来たぜ。といっても目が覚めたから抜け出して来たんだがな。」

「…………」

「おい、せっかくこんな美人が目え覚ましたんだから、祝いの言葉くらい………?」

「あっ…荒斬…?」

荒斬がキョトンとしてこちらを見つめている。その瞳に映る俺の顔は。

「荒斬…生きてた…!」

ぐしゃぐしゃの顔で泣いている俺だった。

「あー、そうか。確かにお前と会ったのアレが最後だったもんな。」

「荒斬!」

「うおっ。」

形振り構わず荒斬に抱きつく。その頭を、荒斬が優しく撫でてくれた。

「大丈夫だよ。生きてる。」

「良かったぁ…!良かったぁ…!」

一頻り泣いて涙が止まったので、ゆっくりと手を離した。荒斬は優しい笑みでこちらを見ている。

「亜守斗の奴が俺を見つけて運んでくれたんだと。まさかあいつとデヴィッドがグルだとは…あ、お前これ聞いた?」

「まあ、大体裏で起こってたことはザックリと。」

「そうか…大丈夫か?怖くなったりしてねえか?自分の境遇とか。」

「いや、そこはあんまり…何ていうか、世界を云々って話されても実感が湧かない。」

「はー、そんなもんかねぇ。ま、良いや。お前外出てねえんだろ?出かけようぜ。」

荒斬が手を引っ張る。尻込みすると、荒斬はまた優しく微笑んだ。

「大丈夫。何かあっても俺がついてるから安心しろ。」

「荒斬…!」

「…それにサプライズもあるしな。」

「ん?何か言った?」

「いや何も?行こうぜ。」

…この時の荒斬の呟きが聞こえていたら、俺はまだ心の準備が出来たのかもしれない。


荒斬に連れ出され、色んなところを周っている内に、日が暮れていた。

「つ、疲れた…。」

「今まで塞ぎ込んでたんだろ?その反動だよ。」

「お前が何時間も連れ回すからだろ!」

しかも都の人みんな忙しくてお店ほとんど閉まってるし!

「忙しそうな人の間をただ通る気持ち考えろよ…。」

「自分だけサボれてるっていう優越感が、」

「起こらない!」

「ふーん…。」

否定されてちょっぴりつまらなさそうな荒斬と歩いていると、荒斬が袖を引っ張って来た。

「おい、あそこ寄ろうぜ。」

「えっ、あそこって…。」

…ギルドの本部じゃん。

「ヤダヤダ絶対行きたくない!帰ろ!帰ろ!」

「そんなこと言うなって!職場の面子に顔出せよ休んでたんだから!」

「休んでたから気まずいんだよ!」

「そんなこと言わずに!…ここだけはマジで寄って欲しかったんだって!」

やけに必死に頼み込む荒斬の目を睨みつける。

「…ホント?」

「ホントにホント…あ、丁度出てきた!」

荒斬の視線の先を見ると、本部の入り口が開いて誰かが出てきた。

「あっ、龍牙!荒斬さん!」

「ノレア!」

以前の塞ぎ込んでしまった時の面影を感じさせないほどに明るい笑顔でノレアが走ってくる。

「こいつ、お前が萎えてる間ずっと一人で頑張ってたんだぜ。」

「そうだったのか…偉いな、ノレア。」

「エヘヘ…。」

頭を撫でると、ノレアは嬉しそうに体を揺らした。

「龍牙、ギューッ!」

「わっ、ノレアは甘えん坊さんだな〜。」

人間不信も治ったみたいで本当に良かった。

「…ごめんなノレア。心配かけて。」

「お詫びにいっぱいイチャイチャしてもらうもんねー!」

「お、おいおい。お前の好きな人はライダーさんだろ。」

俺が誤魔化すと、ノレアが固まった。横を見ると、荒斬が吹き出しそうになっている。

「え?え?何?」

「…そうだよ。好きになった人は龍牙だよ?」

ん?あれ?なんかおかしい。てか荒斬は絶対何か知ってるだろ。そう思っていると、荒斬が笑いながら口を開いた。

「龍牙、被り物しながらキスって出来るか?」

「は?」

…………………………あ。

「…キスした時に、素顔見えんじゃん。」

「ブフッ。」

俺が呟いた瞬間、荒斬は吹き出しやがった。ノレアも全て察したようで、何とも言えない表情になっている。

「龍牙、お前バカだろっ、ハハハッ。」

「…………」

死にたい。まさか最後の最後でこんな失敗をしているとは。

「……龍牙。」

その雰囲気に似合わないほど冷たい声で、ノレアが口を開いた。

「龍牙は私のこと、好きだよね?」

「…うん。」

気圧されながら答えると、ノレアは嬉しそうに微笑んだ。

「良かったぁ…龍牙、私も好きだよ?私の家族ね、私が大天使だって知った瞬間、私のこと崇め出してね。だから…龍牙だけなの。私をちゃんと対等な目線で愛してくれる人。」

なんか怖いオーラを出しながら、ノレアの両手が俺の頬を包む。横で見てる荒斬は一言も発さない。

「だから、捨てないでね?ライダーの姿になってる時とは、ちょっと性格が違うけど、『愛してる』の一言はハッキリと伝えてくれるもんね?」

「だ、大丈夫か?龍牙。」

「黙ってて。私の龍牙を取らないで。」

容赦無い口撃に沈黙する荒斬。

「見栄なんて捨てて?そのままの愛で、そのままの私を愛して?龍牙。」

じっとこちらを見据えるノレア。こんな仕打ちを受けたら、俺が返す答えは一つしかないじゃないか。

「……ありがとう、ノレア。俺も大好きだ!」

満面の笑みでノレアを抱きしめる。

「俺も大好きだ、愛してるぞ、ノレア!」

「…嬉しい!ありがとう、龍牙!」

「おいちょっと待て。」

「「…なに?」」

折角イチャついてるのに水を差すとは。荒斬のやつ、一体どういうつもりだ?

「いや、ノレアの愛情表現、なんか怖いんだけど!オーラ発してたよね!?」

「いや確かに最初はビックリしたけど、俺を愛してくれてる証だから良いかなって…。」

「人刺してもおかしくないオーラだったぞ!?」

「荒斬さん、そんなに私たちの仲を引き裂きたいの?」

ノレアにさっきのオーラが宿る。そんなノレアをすかさず後ろから抱きかかえた。

「こーら、はしたないぞ。」

「いやはしたないってレベルじゃ…もういいや。でもそれ、治してやれよ?そのままだとマジで危ないから。」

「ノレアは我慢できる良い子だから大丈夫だもんねー?」

「ねー!」

「こいつら…。」

まあ内心荒斬の言いたいこともわかるが、今はまだいいだろう。だって今はこんなに、

「あはははっ!」

楽しそうなんだから。

ようやく1シリーズ書き終えました!エピローグの構想自体は去年に出来上がってたんですが、忙しかったのと持ち前の惰性でこんなにも先延ばしになってしまい申し訳ないです!龍の牙と龍の腕を読んでいただき、有り難うございました!

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