龍と砂
一ヶ月以上空いてしまいましたあーーーーー!干からびたナマコです!第四十九話、投稿しました!
「デヴィッド、もっと剣に力を込めるんだ!」
それが、父に一番言われた言葉だった。
俺は物心ついた頃から父に剣の稽古をつけられていた。それも大振りの両手剣の。
「デヴィッド、我が家には代々伝わる雷神の鎧があるんじゃ。お前はいずれそれを着ることになる。」
12歳の誕生日に祖父からそう言われた。まるでヒーローみたいだと喜び、申し訳なさそうな顔をする祖父の心情がわからなかった。
「お前が技を使いこなせるころには、この白銀の鎧を黄金に変えられるだろう。」
父のその言葉が誠だと分かったのは初めてそれを発動させた20歳の頃だった。
「あれからもう、10年か…。」
俺は結局、技を二つしか受け継がなかった。父は五種類、祖父は七種類使えたらしい。
それでも、やらなければならない。
「デヴィッド様、着きました。」
「うむ。」
馬車から降り、前方を見据える。丈の低い草が生い茂る草原に不自然に佇む物体が一つ。
背面と思われる部分から白い羽毛の生えた翼を三対生やし、周囲に無数の西洋風の装飾が施された盾のようなものを展開する巨大な球体がそこにあった。
「如何致しましょう。ギャルブリアの城はすでに無力化、怪物たちも見当たらないと報告を受けていますが。」
「…極めて危険な者だと報告を受けている。こちらを攻撃してきたら速やかに排除するぞ。」
「えっしかし、」
「あれが放つ魔力の属性は光!アルマノス様が使わした御使かも知れません!」
部下たちが動揺する。今ならわかる、祖父の気持ちが。たとえ命をかけて戦っても、この世界の人々からすれば悪党でしかないのだろう。報われない戦いに孫を差し出すことに、抵抗を感じていたのだ。
「よお、騎士の大将。」
「貴様は…アルトガ。」
騎士たちを押し除けアルトガが歩み寄ってくる。訝しげな視線を向けられると、彼は口角を上げた。
「そんな邪険にするなよ。俺の部下も協力しただろ?」
「ギャングの言うことを信じろと?」
「…仕方ねえ。」
アルトガがデヴィッドの肩を掴み、耳元で囁いた。
「俺は雷の神、グルーグの協力者だ。」
「!!!」
「ま、もう協力関係は終わったんだが…もうちょっと付き合ってやる。『魔眼』のサンプルが欲しいからな。」
「生捕りがお望みなら諦めろよ。相手は邪龍に匹敵する力の持ち主。大天使ノレア・アルマノリアなんだからな。」
「死体でも価値はある。じゃ、早速行かせてもらうぜ。」
「おい待てっ!」
止めようとするデヴィッドの手を掴みアルトガは地面を指さした。
「もう既に『仕込み』は済んでる。後は動けば良い。」
「団長!大変です!」
突如息を切らして伝令兵が会話に割り込んできた。その顔には大粒の汗が伝っている。何かが起こったのは間違いないが、ノレアは動いていない。
「どうした。」
「か、怪物たちの残党が現れました!」
「ギルドの者たちに当たらせろ。アルトガ、お前の部下も一緒だよな?」
「好きに使え。」
冷静に対処するデヴィッドとアルトガ。しかし兵は食い下がった。
「しかし!そ、それを率いているのは!」
「ギャルブリアの生き残りでもいたか。」
「邪龍、ヴルトロスです!!」
「ちょっと、さっきまで一緒に戦ってたでしょ!?」
「ガオオオオウ!」
「ぎゃっ!」
オズマの言葉に耳を貸すことなく、ヴルトロスが口から雷を放つ。そして、他と距離が取れていると気づくと、一目散に走り出した。
「逃がさん、ブルル!」
「ギャング舐めんじゃねーぞコラァ!」
「ゴアア!」
その後を追わんと迫るフルコースギャングに対しヴルトロスが吠える。すると無数の怪人が彼らに纏わりついた。
「ハングリーサラダ、何とかしろ!ブルル!」
「したいのは山々ですが、この数は無理です。御自分でやってください。」
「無茶言わないでよ!」
「ヤバい、ヴルトロスが逃げるぞ!」
「いや、その心配はいらねえ。」
その声は、ヴルトロスよりももっと遠くから聞こえた。
「ガゥッ?」
「デンジャラスデザート、アルトガ…!」
「ボス!何故ここに!?ブルル!」
「おいお前、大天使は俺の大事なサンプルなんだ。横取りしようとするんじゃねぇ。」
「ゴルラァ!」
アルトガの頭目掛けてヴルトロスの拳が飛ぶ。しかし、それより前にアルトガは回避の構えを取っていた。
「サンプル呼びがお気に召さねえか?」
アルトガは挑発するような笑みを一瞬浮かべ、すぐに睨みつけると同時に叫んだ。
「『煌砂塵嵐』!」
その瞬間、地面が揺れ、爆発したかと思えば、煌めく砂の嵐がヴルトロスとアルトガを包んだ。
「ギャウウッ!?」
「流石にこの量なら邪龍にも効くらしいな。仕込んだ甲斐があったぜ。」
砂の一部がアルトガに被さり、固まって鎧を形成して行く。
「魔眼について知りたいからな。邪魔するなら、死んで貰うぜ。『エスプレッソ・シュガー』!」
「ガアアア!」
鎧を纏った拳がヴルトロスの鳩尾に入る。しかし負けじと口を開き、アルトガに食らいつくが、殴られた腹から、無数の影の針が飛び出した。
「アアグゥ!」
「『剣山』、だな。死んでも噛みつくとは、流石は神と言ったところか。」
「グルル…」
「諦めろ。俺は絶対に魔眼を調べる。お姫様を取られたくないならお前がなるか?サンプルに。」
「…」
ヴルトロスは沈黙したまま立ち上がると、自分の腹に手を突き刺した。
「ガ、アア、ウゥッ!」
「…やるか。」
ゆっくりと近づくヴルトロス。しかし攻撃することなく、アルトガの肩に手を置いた。
「…ガゥ。」
「おい。何の真似だ。通り過ぎるんじゃねぇ。」
拳を構えるアルトガにヴルトロスは手のひらを向けた。まるで「待て。」と言うかのように。
「…待てって言うのか?」
「グルゥ。」
首を縦に振るヴルトロスに、アルトガは笑みを返した。
「面白え。いいぜ、待ってやる。改造手術も受けたお前の方が興味はあるしな。」
アルトガがヴルトロスを見送る。彼の起こした砂嵐が解除され、彼の元に部下が集まってきた。
「ボス、邪龍は…。」
かけられた言葉にアルトガが微笑む。
「お前ら、よく聞け。俺たちフルコースギャングは、ヴルトロスを援護する!」
五十話までに終わるとたかを括っていましたが、もう少し続きます。あと、これからも投稿頻度がバラつくかもしれませんが、最新話投稿の度、Twitterで報告するのでそちらからも確認していただければ幸いです(僕のTwitterでの発言内容には注意)。というわけで、龍の牙と龍の腕、第四十九話でした!




