主人と奴隷
皆さんおはようございますこんにちはこんばんは干からびたナマコです!第四十七話、投稿しました!
『ーーーー!!』
巨大なキョジンが雄叫びを上げる。既に無数の矢や砲弾が当たっているが、怯む素振りすら見せない。
「あいつバケモンかよ。いや、バケモノには違いねえけ、ど!」
無数の怪物を倒しながら勝気がキョジンを見上げる。しかし勝気たちには目もくれず、キョジンは王都に向かって走り出した。
「まずい!ブルル!」
「撃てーーー!!」
騎士団の必死の攻撃も虚しく、キョジンは猛進して行く。近づいて止めようにも、無数の怪物たちがそれを阻む。
『ーーーん?』
「何だ?」
「動きが、止まった?」
『!!貴様、貴様ああ!』
そう発すると、キョジンはピタリとも動かなくなった。
「どうしたんだ…うお!?」
キョジンに気を取られていた勝気の真横に塊が墜落してきた。その正体は、
「ん?なあオズマ、これって確か…。」
名無しのライダーが乗っていた二輪、グレートパンサーだった。
キョジンが走り出す少し前、ヴルトロスは少し遠くからその背中をを見つめていた。
「…………!」
何かを見つけ、ヴルトロスはバイクに跨る。先程まで見つめていたキョジンの背中の一部は、黒い布の様なもので覆われていた。
「……………………」
息を殺し前傾姿勢を取る。キョジンとの間には、ヴルトロスの殺した怪物の死体が積み重なっていた。
「………!」
死体の山を駆け上がり、ヴルトロスが飛ぶ。キョジンの脚にぶつかったが、何一つ音も衝撃も発生しなかった。当然キョジンは気付かない。
これがヴルトロスの狙いだった。グレートパンサーの無音走行によって、敵に一切気付かれることなく近づくことができる。
「…!」
キョジンが走り出す。ヴルトロスはバイクから跳躍し、布の様な物体にしがみ付いた。
「…ガウッ!」
ヴルトロスが小さくガッツポーズを取る。物体の奥は、城の壁が無くなっていた。勝気が脱出のために放った技によって。
「ガア、ウ!」
物体を破り捨て、ヴルトロスはキョジンの中へと入っていった。
「…………くそっ!」
キョジンの頭部を形成する玉座の間で、アイラが舌打ちをする。もっとも、舌はおろか口に値する部位すらなく、闇の塊の様なものが浮遊しているだけだったが。
「ゴアア!」
床の一部を突き破り、ヴルトロスが姿を表す。その姿を見て忌々しげにアイラは睨みつけた。
「言うことを聞かず、せっかく起動した最終兵器とすら碌に戦わず入ってきて…。本当にムカつくやつだな。お前は。」
「ガアアアアアアアアアアアア!」
ヴルトロスが飛びかかる。それを迎え撃つ無数の黒い腕がヴルトロスに襲い掛かった。
アイラが戦闘を開始した瞬間、キョジンの方にも変化が生じていた。
「ねえ勝気、キョジンが…!」
「黒色がとれて、元の城壁に戻っていってる。てことは、チャンスだな!」
勇み足の勝気の前に、怪物たちが立ちはだかる。しかし勝気は得意そうに首を鳴らした。
「こいつらももう増えねえだろ!だったらやる気出てきたー!!」
「待って勝気、そう決めつけるのはまだ早いかも、」
「うおおおおーーー!」
「…………はぁ。」
頭を抱えるオズマの肩にブルタが優しく手を置いた。
「ドンマイ。ブルル。」
「…うん。」
脳裏に、奴の顔が思い浮かぶ。私を殺そうとした奴の顔が。
「ではこれより、アイラの処刑をーー」
あいつが憎い、あいつを殺したい。そして、あいつを崇め、私を邪神と罵る世界が許せない。
だからここまで来た。才能がある故に未来への翼をへし折られた騎士も、技術が退化して行く時代に一人異常な速さで進歩し続けた男も、もう彼方の世界にはいないであろう種族としての悪魔も。
あと一人幹部はいたが…、それはまあどうでもいい。
とにかく私は足掻いてきた。だから、
「ここで、諦めるわけには行かない…!」
体を人間に近い姿に変える。眼前にはヴルトロスの拳が迫っていた。
「ゴルアアアアア!」
闇を纏い、同じ拳で迎え撃つ。龍の腕が砕けるのを感じるが、瞬く間に再生していく。
「ガアア、アアアアアウ!」
勢いを止めずヴルトロスがしがみ付いてくる。だが、
「伸びろ、『剣山』!」
右腕を突き刺し、魔法を一つ打ち込む。次の瞬間、ヴルトロスの体内から無数の針が飛び出した。
「アッ、アグウルルル…。」
針が前に進もうとするヴルトロスの筋肉を突き刺す。再生しても針は幾度となく伸び続ける。
「これで、再生能力も封じた、私の、ゲボッ。私の勝ちだ!アッハハハハ!」
良かった、何とか乗り越えた!ザマアみろ、主人に歯向かうからこうなるんだ!
「ガッ、ウッ…………。」
ヴルトロスが倒れ伏す。その首根っこを掴んで持ち上げた。
「安心しろ、私が有効活用してやる。」
ゆっくりと傷だらけのその身体を抱きしめる。全身を巡る魔眼の力を感じて、
「…………え?」
次に感じたのは、腹部に重い衝撃。私の身体は壁を突き破り空中に投げ出されていた。
「何で!?何で取り込めない!?」
魔眼は眷属の証、手足として働き、矛となり盾となり、いざとなれば主人である神の新たなる身体となる。それが魔眼。隷属を示す証。
「ガルル…!」
ヴルトロスが城内からこちらを見つけ口を開ける。そこに魔力が集まっているのを直感した。でも、おかしい。有り得ない。どうして。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
そんな私の困惑を吹き飛ばすかの様に、轟音と共に邪龍の口から放たれた雷光に貫かれ、私は地面へと落ちていった。
遂にアイラを破りましたが、もうちょっと続きます。次回もお楽しみにしていただけると嬉しいです!龍の牙と龍の腕、第四十七話でした!




