翼と民衆
先週投稿できませんでした干からびたナマコです。第四十六話、投稿しました!
「うおおお!オズマ見ろ!城がでけぇキョジンの頭にくっついていくぞ!」
「見ればわかるけど、そんな楽しめる状況じゃ無いでしょ!」
オズマの言う通りだった。城は構造を変形させ、キョジンの体を成していく。ただ「くっつく」と言うより、城が「変形」していると言った方が正しかった。
「だよな!オズマ、『黒魔術』だ!」
「ガウ?」
勝気の発した一言にヴルトロスが興味を示す。
「黒魔術って言うのはこいつが創り出した魔術だ。見とけよ、凄いから。」
「ああもう。なんで期待させるかなぁ!」
オズマの右手に黒い霧のような物体が現れたかと思うと、オズマはそれを掲げて叫んだ。
「羽!」
その言葉に応えるように霧がオズマ達の背中に移動し、翼を形成していく。
「みんな、飛んで!」
「ギャウッ!?」
「おっしゃあ!」
慌てるヴルトロスを置いて二人が飛び立つ。ヴルトロスが「飛びたい」と願った瞬間、
「うおっ!?」
「……何今の。」
二人を飛び越え、遥か彼方へ飛んでいった。
「ヴヴ…………」
足元から、怪人の呻く声がする。
「し、城がキョジンになった!?」
その先からは、怯える人間の声。
「ああ、なんて良い気分だ。ようやく、私を馬鹿にした世界を破壊できる。」
巨大なキョジンの頭部の中で、アイラはそう呟いた。
戦場は、混沌を極めていた。
突如城が変形し、キョジンの姿を成した。その上、体を形成する城の壁や屋根だった部分が、じわじわと黒く染まっていく。
「全員、攻撃の手を緩めるな!アレに隙を見せたら、死ぬと思え!」
騎士団の前線指揮官が叫ぶ。しかし、敵は一体ではなかった。
「指揮官!キョジンの足元から、先ほど大量に出現した怪物達が再発生しています!」
「何!?」
指揮官が双眼鏡で確認すると、確かに怪物が生まれ、歩いてきている。
「仕方ない、怪物達は対抗可能な最低限の戦力で対抗しろ!キョジンを倒せば、奴らも消えるかもしれん!」
「了解です!」
「いや、あんたらはキョジンを攻撃しな。」
会話に割り込んだ声と共に、空から二つの人影が降りてきた。
「お前らは、勝気とオズマ!」
「騎士団には強え兵器が沢山あっただろ?俺が食い止める。惜しみなく使ってくれ。」
「わ、わかった。」
「後さあ、コソコソしてないで出て来たら?ギャングの皆さん。」
「何、ギャング!?」
そう言ってオズマが物陰に指を差すと、フルコースギャングの幹部達が現れた。ワイルドセコンド、ブルタが満足そうに肯く。
「お前、俺たちが隠れていると良くわかったな!ブルル!」
「いやアンタの角がはみ出てたんだけどね。」
「え?」
それを聞いたブルタが固まる。無視してブランドプリモのバラーバが続けた。
「私たちも戦うわ。あの中にボスがいるのよ。良いわよね?指揮官さん。」
指揮官は少しの間俯いたが、すぐに意を決して顔を上げた。
「…犯罪者などとは組みたく無いが、騎士の誇り以上に、私にも守りたい家族がいる。存分に暴れてこい!」
「よし来た!いくぞギャング!」
「一括りにするな!俺は幹部のワイルドセコンド、ブルタだ!」
「どっちでも良い!早く行くよ!」
「…また面倒臭そうなのが増えた。」
あるものは叫び、あるものはボヤきながら、怪物の蔓延る戦場に躍り出た。
戦乱の影響は、王都コルソテクにも出ていた。
「ああ、この世の終わりだ!」
「そんなこと言うなよ!」
「だって聞いただろ!さっきの轟音!」
「アルマノス様、アルマノス様、どうか我が娘だけでも…!」
人々は恐怖し、ある者は暴れ、ある者は祈る。戦場に負けず劣らずの惨状だった。
「もうお終いさ!何もかも!」
「そんなこと言うなよ!きっとアルマノス様が助けてくれる!」
「もしかしてお前、アルマノス様を信じていないのか?」
都民の一人が発したその一言が、空気を変えた。
「ちょ、ちょっと待てよ。何もそこまでは…」
「こいつ怪しいぞ!」
「ギャルブリアの密偵か!?」
「そうだ、そうに違いない!」
信仰が狂気に変わり、人々を焚きつける。地獄のような最悪の空気を壊したのは、
「アナタたち、いい加減にしなさーーーーーーーーーーーーい!」
「…ノミクオ王子様!?」
突如として現れた意外な人物に、民衆がたじろいでいると、王子は言葉を続けた。
「この場に居もしない相手に縋る暇があるなら、自分で行動しなさい!アタシ達に出来ることを!」
「いやでも、こいつ…」
「わ・か・っ・た!?」
「「はいぃ…」」
鬼の様な剣幕の王子と勢いを削がれ従う民衆。その様子を陰から見たヴルトロスは、感激し、ノミクオに抱きつこうかと考えたが、踏み止まり、我が家の方向へと走り出した。
「ガウッ!」
オズマが作った翼が消えてしまった時、墜落したのが割と家の近くだったのは幸運だった。ヴルトロスは家の裏手、ノレアにも立ち入らせていない物置に入った。
『持ち主を認識、エンジンを起動します。』
龍牙の二輪、グレートパンサーが目を覚ます。正直出すのが面倒臭くなって使っていなかったが、今回ヴルトロスの考えた作戦にはこれが必要だった。
「ガルル。」
跨って、ハンドルを掴み、物置から飛び出す。邪龍は再び戦場へと向かっていった。
五十話で、五十話で終わるはずです!まあ終わらなくても続けますけど。龍の牙と龍の腕、第四十六話でした!




