パスワードと主従
二週間ぶりの投稿です干からびたナマコです。第四十四話、投稿しました!
気が付けば、そこは暗闇の中。周りには何もなく、自分の身体だけがくっきりと見える。
「ここは……。」
辺りを見回す。しかしどこを向いても景色は変わらず暗闇。違う方向を向いてる筈なのにそんな気がしない感覚が気持ち悪い。
だが、次の瞬間そんなことはどうでもよくなった。
「ん?」
手に何か当たった。これは……
「虫っ!」
親指ほどの大きさの虫が手についていた。即座にそれを取り払う。
「何なんだよここ……ひっ!」
今度は背中に手を伸ばしくっついたものを掴み取るとまた虫が付いている。投げ捨てると同時に、上から無数の羽音が聞こえてきた。見上げると、無数の虫が自分に向かって飛びかかってくる。
「うわあああああああ!」
必死になって虫を払うが、次から次へと纏わりついてくる。足元からも虫が迫ってきている。
「来るな!来るな!来るなああああああ!」
振り払う気力をなくし、その場に蹲る。目を閉じ、耳を塞いだその時、
「はっ。」
目が覚めた。全身汗ビッショリの状態で仰向けで寝ていたようだが…ここは何処だ?見知らぬ天井が広がっている。いや、何処かで見たような…。
「起きたか、龍牙。」
顔を上げるとアルトガが立っていた。よく見ると眼鏡を掛けている。
「あんまり騒ぐなよ。ここを嗅ぎ付けられても面倒だ。」
「…ここは?」
「…………」
アルトガが無言で指を向けた先に、「管理室」と書かれた看板がぶら下がっている。アルトガは部屋にある無数のモニターをいじって何やら作業をしている。
「ここはギャルブリアの城だ。お前確か、一度誘拐されてたろ。」
「…………あ!」
そうだ、既視感があったが気のせいじゃなかった。言われてみれば確かにこんな天井だったような。
「城の中…ってことは、俺らギャルブリアに入るのか!?」
「シーッ!」
「あ、ごめん…。」
「ったく。」
アルトガはずっと何かを入力しているが、上手く行ってないらしく不機嫌そうに頭を掻いている。
「…何してるんだ?」
「この機械に入ってる情報を探してんだが…検索に使う言葉が大雑把すぎて見つからねえ。」
「検索って、ロックはかかってないのか?」
アルトガが紙切れを取り出す。そこには数字やアルファベットの列がいくつか並んでいた。
「最初に入ったり、重要事項に関するのはパスワードが必要だが、取引で手に入れてある。」
「わー。流石裏社会。」
「やり方教えてやろうか?」
「遠慮しときます。」
そっちに深く関わるのはNG。まあ今更な気もするけど。
「そうだ。おい龍牙、お前こいつらに改造された改造人間なんだろ?何か重要な単語とか知らねえか?こいつらの技術がわかるようなやつ。」
「そうは言っても…ん?一個なんか言ってたようなッ。」
「今すぐ思い出せ!今すぐにだ!」
アルトガがいきなり襟を掴み揺すってくる。痛い痛い、めっちゃくちゃ痛いんだけど!
「待って待ってオエッ…なんか六文字だった気がするんだよ…」
頭の中でイメージする。朧気ながら覚えている手術される直前の状況を。
「最初の字は…お段。次が…」
ぶつぶつ呟いていた次の瞬間、頭の中に電流が走ったような感覚とともに俺はその単語を口にした。
「『ゴルデミアス』!そうだゴルデミアスだ!」
何か最近聞いたような感覚がするが…何時だ?
そんな俺の疑問は他所に、アルトガは早速その言葉を入力していた。
「当たりだ。パスワードは…これだな。」
さっきとは打って変わって満足そうな表情でパスワードを打ち込むアルトガ。画面に映し出された文章を見て、さらに嬉しそうな顔つきになる。
「成る程、これが魔眼の正体…!真なる眷属の証と言われるわけだ。」
「今さらっと重要そうなこと言わなかった?」
俺が質問しても聞いちゃいない。血眼でメモ帳に文章を写している…ギャングって何だっけ?
「おお、おお!そうか、神にはそんな力が…!」
『…うるさい…誰だ…。』
「…え?」
何だ今の声。何処からした?
『ヴルトロス…ヴルトロスか…?』
響く声にアルトガが応えた。
「そいつならここにいるぞ。」
「おまっ!」
アルトガの言葉に背筋が凍ると同時に、俺は足元に空いた穴に落ちていった。
ギャルブリア城の最奥。闇を司る神にしてギャルブリアの女王「ジョーカー」を務めるアイラが座する玉座の間。
「……………」
アイラは沈黙し、今し方突き破った壁を見やる。すると、無数の闇の触手に捕まった少年、龍牙がやってきた。
「よく来たな…ヴルトロス。」
「…!」
龍牙の目つきがが強張る。しかし身体が震え、言葉が出ない。
「今からでも許してやろう…心から服従を誓え…」
「…嫌だ。」
龍牙の言葉にアイラの目つきが鋭くなる。
「よくそんなことが言えたものだ…失禁しそうな顔をしているくせに。」
「黙れ……………ババア。」
怯えながらも自身を煽る発言に、アイラが怒る。指がピクピクと動き、目を見開くと、龍牙を締め上げている触手が力を増し、龍牙を絞め殺した。
「私に歯向かうからだ…馬鹿が。」
力なく床に倒れ伏す龍牙。すると身体が紅く染まりその上から紫色に覆われ、肥大化していく。
「アグヴゥゥゥ…」
ゴキッ、いう音を鳴らして下顎を押し込み、ヴルトロスがアイラを睨む。しかし、アイラは怯まなかった。むしろ予定通りと言わんばかりに玉座に腰掛けている。
「それで勝ったつもりか…。愚かだな。」
「ギシャアアアアアアア!」
床を抉りヴルトロスが飛び上がる。そのまま天井に張り付き、重力を乗せてアイラの眼前に迫った。が、
『……無駄だ。』
アイラがゆっくり右腕を向ける。するとヴルトロスの動きが空中で不自然に止まり、地面に落下する。
「アガガガガ、ギギ、ギ。」
魔眼の効果が切れたわけではない。しかし、身体が動かない。思考に対抗するかのように身体が言うことを聞かない。
『お前は私の眷属…主人の命令には背けない。』
「ガ…………グ。」
ヴルトロスが完全に沈黙すると、アイラが人差し指を立てる。すると、ヴルトロスが立ち上がった。
『さあ…侵し、殺し、潰し、滅せよ。この世の全てを!破壊してしまえ!』
「グ、グアアアアアアアアアア!」
主人の命に応えるかの如く、操られる己を嘆くかの如く、邪龍が叫び声を上げた。
四十四話まで来ましたが、五十話までに終わるか不安になってきました…。ちょっとオーバーするけど、まあ問題ないでしょう!と言うわけで、龍の牙と龍の腕、第四十四話でした!




