進撃と記念日
皆さんおはよう御座いますorこんにちはorこんばんは干からびたナマコです!第四十三話、投稿しました!
『よく頑張りましたね…ノレア…』
空に浮かぶ光の源から声が聞こえる。その下で、ドリルの回転音が聞こえた。
「…」
ロボットは光源を見つめたまま動かない。しかし次の瞬間、挙動がおかしくなる。
「何でだ…通信が出来ない!」
『無駄です…封じていますから。』
光源が出す光が一際強くなった。その時、
「!!」
ロボットが無数の光線に貫かれた。
『悪は滅さねば…なりません…』
「…………」
呆然と立ち尽くすノレアにアルマノスが向き直る。向きなど認識できないが、光源が自分の方を向いているのを感じていた。
『その身で、よく頑張りましたね。身を癒しましょう。そのまま、気を楽に…』
言葉と共に柔らかい光が降り注ぎ、ノレアが涙する。
「有難う御座います、アルマノス様…。」
ノレアには見えていた。善を良しとし悪を拒むアルマノスの心が。
『良いのです、リラックスしなさい。』
その清い心に感動しながら、ノレアはゆっくりと目を閉じた。
安寧に浸るノレアとは裏腹に、ヴルトロスは猛っていた。
「ガルアァァァゥ!」
その四肢に力を込め大地を蹴る。向かう先はギャルブリアの城。突如現れた巨城を見ても、その足が止まることは無い。
「ハッ!」
後脚に力を込め、空高く飛び上がる。城と大きく距離を詰め、城の天井に着地する。
『誰だ……』
着地の瞬間に、声が響く。その声は、戦場にいる全員に届いていた。
「何だ、今の声…。」
「城の方から聞こえたぞ!」
騎士団の一人が城を指差す。すると、城はその色を暗い闇の色に変えていった。
「な、何だ、何が起こっている!」
「落ち着け!総司令部から伝令が来た!全員城に集中して陣形を組みなおせ!」
騎士団が動く中、城門が開く。するとそこから、
「ゴポルルル…」
「ガァッ、ガアウッ!」
漆黒の怪物たちが飛び出してきた。続いて窓が開き、空を飛ぶ怪物が飛び立つ。
「キョエエエエエッ!」
怪物の一匹が甲高い声で叫ぶ。すると次の瞬間、ヴルトロスの拳が貫いた。
「ガルルルル…ゴアアッ!」
不愉快そうにヴルトロスが唸る。すると城の窓の前に降り立ち、飛び出してくる怪物たちを蹴散らしながら城内に入っていった。
『ローザ…聞こえたか、今の。』
戦場の外れでラグナは呼び掛けた。彼を纏ったまま横たわったローザが答える。
「ええ…タイミングからいって…ギリギリで間に合ったようですわ…」
『これでまだ勝機はあるな…まあ、正直なところ、二割程度だが。』
「ええ…後は、皇帝であるアイラ様の実力次第ですわ…」
『あの御方がどれほど戦えるか…それによって勝率は上乗せされる…なあ、ローザ。』
ラグナは一拍置いて呟く。
『楽しかった…自分の最高傑作と殺し合えて…』
「良かったですわ。未練なんて残されたら私、堪りませんもの。」
その言葉を聞き、ラグナの心が痛んだ。
『だが、お前を付き合わせて…すまなかった。』
「!……はぁ。」
ローザは一瞬目を丸くしたが、すぐに落ち着いて言葉を返した。
「私の心配など必要ありませんわ。もう、折角最高のプレゼントが出来たと思ったのに、最後の最後で楽しんでくれないなんて…」
『だってお前…愛する女の、顔半分が…ねえんだぞ。それに…下半身だって…』
「…もう。」
ローザはゆっくりと胸の鎧にに手を置く。そこは、ラグナの頭部にあたる場所だった。
「愛する貴方と初めて出会った日に、こうして最期を共にできる。それだけで、私は嬉しいですわ。」
『はは…。俺は世界一の幸せ者だ…こんなにできた伴侶を持てて…』
「あら、幸せ者なら私の方が…。」
ローザが口を止める。ラグナは、一足先に息絶えていた。
「…言うだけ言って逃げるなんて、ずるいですわ、ダーリ……」
ローザの言葉が途切れる。死んだように動かない。しかし死んだわけでは無い。ローザは驚いていた。ラグナの機械の身体から流れ出したメロディーに。
「…あ。」
ローザの脳裏に、思い出が蘇る。初めてラグナと出会った、ずっと前の今日。
「はぁー。お父様もお母様も、堅苦しくてもう嫌!」
幼き日のローザは西洋の国の町外れを飛んでいた。
「愛してくれてるのはわかってるけど…もうすこーし柔らかく接してくれないかな〜。」
『誕生日プレゼントだ、受け取りなさい。』
『今日は貴方の好きなローストビーフです。』
父と母の言葉を思い出す。プレゼントもご馳走も嬉しいが、ローザの欲していたものはくれなかった。
『歌…わかった。今すぐ手配しよう。』
その数分後に使用人達による合唱があったが、彼女の心を満たすことは無かった。
「私は、二人に歌って欲しかったのに…もうっ!」
ローザは夜空に向かって叫んだ。
「あーもう!誰か私のために、愛を込めて歌ってー!」
「…ハッピバースデー、トゥーユー。」
「え。」
ローザの動きがピタリと止まり、声のした方を向くと、小さな家が建っていた。声はその中から聞こえている。
「ハッピバースデー、トゥーユー。」
「え…え?」
窓から中を覗くと、一人の男が机の上で作業をしている。手元には、見たこともない道具が転がっていた。
「ハッピバースデイ、ディアお前ー。ハッピバースデー、トゥーユー。」
歌い終わると男はそのまま作業に集中する。
「ねえねえ、貴方何してるの?」
ローザが問いかけると、男は作業をしながら答えた。
「言っても良いが、誰にも言うなよ?」
「うん。」
「…装置の回路を作ってる。これが出来れば、俺を鋼の肉体にする機械の完成だ。」
男が後ろを向くと、人一人が入れそうなカプセルが置いてあった。
「これで俺は研究を続けられる。永遠にな…。」
「へー。あ、後一つお願いがあるんだけど…」
「何だ?」
ローザは恥ずかしそうに頬を赤く染めながら言った。
「もう一度、歌ってほしいな…」
「…はいはい。じゃ、歌うぞ。ハッピバースデー…」
ラグナがもう一度歌い始める。その記憶に、ラグナの身体に記録された電子音が重なる。
『〜♪』
「あっ、ああ…!」
二人の出会いを思い出しながらローザは泣いた。
「ダーリン!ダーリン!うわああああん!」
動かぬ夫を抱きしめ、ローザは泣いた。そして、その泣き声が止まった時、
「ダー……リン。」
静かに微笑んで、その生涯を終えた。
ラグナとローザは初めて会った日の翌日、ラグナは人を辞めた異端者として、ローザは魔族というのがバレて国を追われてしまいます。ローザの家族は焼き討ちに会っており、逃されたローザは一人逃げ延びました。その後にアイラと出会ってから再開を果たして今に至ります。と言うわけで、龍の牙と龍の腕、第四十三話でした!




