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龍の牙と龍の腕  作者: 干からびたナマコ
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過去と弱点

皆さんこんにちは、干からびたナマコです!第四十二話、投稿しました!

突如城が現れ、混乱する戦場。しかし、森の中に城の出現に気付かないほど猛り奮う龍が一匹。

「ゴアガアアアアア!!」

もはや衝撃波に等しい咆哮を上げ、ヴルトロスはローザに向かって行く。

「『フレッシェ・デュ・サン』!」

『「デスロール」!』

ローザの魔術でヴルトロスを牽制し、装甲となったラグナが火を吐き攻撃しつつ後退する。三時間近く、この鬼ごっこは続いていた。

「グルアアアウ!」

矢が刺さり、血を抜かれ、炎に呑まれながらもヴルトロスは突き進む。その腕が僅かながらローザの腕をかすめた。

『危ねえな。でも、そろそろ来る筈だ!』

ラグナがその言葉を発した瞬間。先程まで災害の如く暴れていたヴルトロスが止まり、倒れ伏した。

「ガッ…………ハッ…」

意識はあるものの、身体が動かない。そんな龍の目の前に、ローザが降り立った。

「やっと来ましたわね、『反動』が。」

手の届く距離に敵がいるのに、全く動けない。焦燥感に駆られるも、指一本動く気配はない。

『にしてもとんでもねぇ強さだな。こいつの魔眼。確か、「傷ついている間は無からでも再生する」だったか?』

「ええ。ですからこうして、『反動が来るまで攻撃を加え続ける』ことで、魔眼の効力も失われ、無防備になるのですわ。」

二人の言葉をヴルトロスが理解することはない。が、二人が話しながら自分に止めを刺そうとしていることだけは本能で理解していた。

「…………グゥ…………」

死ぬ気で力を込めても、微かな唸り声が出るだけ。そうこうしている間に、周りに無数の魔力の矢が出来てゆくのを感じる。そして次の瞬間。

「『鎌倉吹雪』!」

周囲の全てが、吹き飛んだのを理解した。

『お前は…………前にうちの城に来たな。名は確か、荒斬と言ったか。』

ラグナが突如割り込んできた人影を見つめる。

「…………」

『無言で睨んでいるが、息があがっているな。すでに満身創痍か。』

「じゃ、殺しますわね。『カーリン』!」

ローザの手が影を纏うと、荒斬に向かって行く。すると荒斬は一歩も動かず。その手に握り潰された。

「あらあら。もう動かなくなっていましたわ。」

『また強い奴が来たと思ったが、とんだ茶番だったな。早いとこヴルトロスに止めを刺すぞ。』

ローザがヴルトロスに向き直った、その時。

「…『春風晴天』!」

背後から、荒斬が切り掛かった。

「!!」

『まだ動けやがったか!』

即座に対応し技を打ち消すが、荒斬は続け様に技を放つ。

「『陽炎昇天』!」

炎と共に刀を振り抜くと、振り抜いた腕から血が溢れ出す。しかし攻撃を止めることはない。

「『白牙満月』!」

幾つにも連なった円状の斬撃がローザたちを襲うが、無数の魔術と炎で打ち消す。

「良い加減に、くたばれですわ!」

『「バイキング」!』

ローザの装甲、ラグナの一部が鰐の頭のような形状に変化し、荒斬に食らいつく。

「『鎌倉吹雪』!『陽炎昇天』!」

一つ目の技で相手の攻撃を全て吹き飛ばし、二つ目の技の構えをとる荒斬。すると次の瞬間、荒斬の目玉を押し出し、血が噴き出した。

「ゴフッ。」

続いて鼻と口から血が溢れ、その場に倒れ伏す荒斬。

『限界だな。』

「…まだだ。」

『………ほう。』

飛び出した眼球をぶら下げながら荒斬が立ち上がる。視覚は失われたが、黄金鬼によって研ぎ澄まされた感覚が周囲の位置を正確に捉える。

「龍牙…」

荒斬の脳裏に、苦々しい記憶が蘇る。

「…あの時も、傷だらけだったなぁ。」


まだ十歳になったばかりの頃。俺は村長との勝負に負け、ボロボロの身で家に帰った。

「あー!蘭ちゃん、また村長さんのところに行ってたのね!」

俺の元に駆け寄ってきた娘は菊。捨て子だった俺を拾って、親を説得して住まわせてくれた。

「無茶だよ!村長さんに勝つなんて!村長さんの家って、元々は侍の家だったんでしょ!」

「うるせえ…俺は剣豪になるんだ…あのクソ爺が持ってる『白露の太刀』を、手に入れるんだ。」

今思えば馬鹿馬鹿しい。名刀を手にしたところで、剣の腕が上がるわけでもないのに。

「ほら、うちにあった小刀で我慢しなよ!ちっちゃいけど、私たちはまだ子供だし丁度いいよ!」

そう言って小刀『亀甲』を取り出した菊を、俺は蹴飛ばした。

「そんな鈍いらねえ!俺は剣豪になる女だぞ!」

叶うかわからない夢に縋り、師を持つこともせず、多少腕っ節が強いだけ。それが俺だった。

「…もう寝る!」

「ちょっと蘭ちゃん!」

…これが最後の会話になるなんて、思ってもいなかった。


その夜、俺は外から聞こえる大人たちの声で目が覚めた。

「煩えなぁ…。何の騒ぎだよ。」

まだ痛む身体を起こして外に出ると、そこには人くらいの大きさの糸の塊が転がっていた。

「おい、何だよこれ?」

ズカズカと割り込み、そこにいた菊の父親に声をかけると、父親は涙を流しながらその塊の中を見せた。

「……菊?」

冷たくなった菊は、身体はぐちゃぐちゃになっていたが、顔だけは綺麗に残されていた。

「…土蜘蛛が出たんだ。」

「土、蜘蛛?」

「人を喰う妖怪の一族だ。判別しやすい家に現れるって聞いてたから、来るなら村長様の家だと…。」

「儂もそう思い、家に沢山の兵を置いておった。」

声のした方を向くと、絹で出来た服を着た老人、村長が立っていた。

「偵察をするものが予め決めておくのじゃ。その数日後にその家から人を拐う。それが奴らのやり方じゃ。」

「…判別?」

地面を見る。そこには、昨夜自分が流した血がこびりつき、赤い跡を残していた。

「…………あ」

「どうした?蘭。」

「あ……ああああああああああああああああ!」

そこからはあんまり覚えていない。後で聞いた話によると、自分で自分の舌をもいで自殺しようとしていたらしい。

その後はただボーッと過ごし、時折発狂して自殺を図る日々。飯が出れば黙々と食い。村長の命で牢屋に入れられ、死なないように見張られ続けた。自殺の頻度も減ってきたある日、村長がやってきて一枚の紙を渡した。

「菊の遺体と一緒に入っておった。恐らく…菊が書いたもので間違いないじゃろう。」

そこに書かれていたのは、俺宛ての手紙だった。これから自分は食べられること、土蜘蛛たちが遺書を書くのを許したこと。自分のことは気にせず生きて欲しいと思っていることについて書かれていた。名前は書いていなかったが、その筆跡は間違いなく菊のものだった。

読み終わって顔を上げると、村長は真剣な面持ちで俺を見ていた。

「蘭、よく聞け。確かに土蜘蛛は、お前の血の跡で狙いを定めたのかもしれん。だが、過去を変えることは出来ぬ。変えられるのは未来のみ。強くなるのだ、蘭。我が家に代々伝わる剣術の極意全てをお前に叩き込もう。」

「極意…?」

「我が家には剣術そのものは伝わっておらぬ。一人一人に得意な動きがあり、何に秀でているかは人次第だからじゃ。」

そう言いながら村長は牢屋の鍵を外し、中に入ってきた。その手には、亀甲が握られている。

「お前の身の丈にはこれが丁度良い。遠慮はいらん。かかってきなさい。」

「……押忍!」


それから言われたこと全てを全力で学び、全力で覚えてきた。いつしか俺は、心から笑えるようになっていた。

「蘭よ。過去も未来も、分け隔てなく大事にせよ。それが儂の、最後の教えじゃ。」

村長は、師匠は、散々クソ爺呼ばわりした俺を我が子のように育ててくれた。そして死の間際、俺に白露の太刀を渡した。

「俺は負けねぇ、倒れねぇ。もう二度と、大事なものを失わない。そのために鍛え上げてきたんだ!」

敵はまだ傷一つついちゃいない。黄金鬼は使うだけで命を削る。相手を攻撃できなければ意味がない。

『「デスロール」。』

炎の渦が迫る。技を出さなければ。

「『鎌倉吹雪』…」

駄目だ。技がうまく出せない。焼かれ

「ガゥッ!」

!!この…声は…


『しまった…!』

ラグナが声を漏らす。その声色からは動揺が滲み出ていた。

「ガルルルゥ……。」

炎の渦を受け止め、ヴルトロスが唸る。反動は消え去り、元の力を取り戻していた。

「時間を、稼がれましたわね…。」

『ああ。さっきの反動は亜守斗の時の蓄積もあって発動したものだ。正直絶望的だが…やるしかねぇ。』

「ええ、わかっていますわ。」

そう言うと、ローザは上空に飛び上がる。

「ゴァァウ!」

復活した邪龍の咆哮が、周囲を震撼させた。

現在荒斬が悪鬼と名乗っているのは、戒めとして自分でつけたものです。村長は最後まで蘭呼びでしたが、荒斬がもう前に進むことを決意しているのを知っていたので、改名を止めることはしませんでした。と言うことで、龍の牙と龍の腕を読んでいただき、有難うございました!

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