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龍の牙と龍の腕  作者: 干からびたナマコ
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行動と本心

お久しぶりです干からびたナマコです!三十五話、投稿しました!

ノレアが拐われた翌日。慌ただしく動くギルドの職員たちをよそに、龍牙は空を眺めていた。

「どうしたの龍牙くん。元気ないけど。」

「…………オズマさん。」

「やっぱり、ノレアちゃんのこと?」

「……はい。」

龍牙は適当に返し、また空を見上げる。

「そっか。」

気を遣い、オズマが去っていく。それと同時に、

「怪物だー!」

外から誰かの叫び声が聞こえた。


龍牙やオズマ達が駆けつけると、ギャルブリアの兵士たちが暴れていた。

「た、助けてくれ!」

逃げ惑い、命乞いをする市民達の声を

「断る。惨たらしく死ね!」

非情な斬撃が切り裂く。

「これは……」

「龍牙くん、下がってて。」

オズマは呆然と立ち尽くす龍牙を下がらせると、バイオリンを取り出した。

「待て、アリンコ共!…僕が相手だ。騎士団のみんな!救助に専念して!人命優先だよ!」

オズマが騎士団に指示を飛ばす。

「わ、わかった!」

「貴様正気か?こっちは三十人だぞ!」

「上等。全部倒してあげるよ!」

オズマと兵士たちがぶつかる。と思いきや、

「うおおおああああああああああああ!」

建物を突き破り、横から巨大な百足が現れた。


龍牙は退いた直後に襲われている家の内の一つに忍び込んでいた。

「よし、変装するか。」

いつもの服とヘルメットを着用する。すると、着替え終わる頃にリビングの方から声が聞こえた。

「おい坊主。大丈夫か?」

その声に龍牙は戦慄する。

「ゲルモンド……!」

静かに物陰から顔を出すと、フードに画面をつけた男が怪我をした少年に注射器を見せていた。

「お、おじさん誰?そ、それに、何それ?」

「こいつはな、お前を怪物に変える代物だ。」

「!!!」

龍牙が構える。最高速で近寄り、ゲルモンドの頸を落とそうと決めていた。が、

「安心しろ。強制はしねぇ。」

「……何だと?」

何を考えているのか分からない。自らの手の内をわざわざ明かして何をしたいんだ?

「今から言うことをよく聞いとけ。」

少年の肩に手を置き、ゲルモンドは続ける。

「これを使えばお前は周りの奴等から化け物呼ばわりされるだろう。」

「…うん。」

「だがこれを使えば、あいつらを返り討ちに出来るんだ。乗るか?」

少年は少し黙った後に、顔を上げた。

「やる…やらせて下さい!」

「わかった。じゃあちょっと痛いけど我慢しろ。」

ゲルモンドが注射の針を刺した、次の瞬間。

「う、う、うおおおああああああああああああ!」

少年は大百足に変貌した。


「な、何だこいつは!?」

「で、デカ過ぎる…!」

「…まとめて相手するしか無い、かな。」

オズマと兵士たちの視線を浴びながらも、少年の覚悟は揺らがなかった。

あいつらをやっつける。みんなを守る。

その想いを胸に、兵士たちに突撃する。ただの突進だが、その体躯では最早雪崩に等しい。

「うわあああああ!」

「グギャッ!」

兵士たちはなす術なく、その巨体に押し潰されていった。

「こっちを攻撃してこない…?」

オズマが大百足の様子を観察する。どうやら兵士たちは倒し終わったようで、こちらに向き直った。

「来るか…!?」

しかし、オズマの予想とは反対に、百足の動きは止まった。そして、

ブシュゥゥ…………

大百足が蒸発し、一人の少年が立っていた。

事態の収束を感じ取ったのか、野次馬達が集まってくる。

「あいつが、やったのか?」

「でもあいつ、今、怪物に…」

「恐ろしい…化け物!」

みんなを守るために戦った。それでいてこの仕打ち。しかし少年は泣かなかった。

「ああ、そうさ。俺は化け物さ!」

「ちょっと待て。」

突如上空から声がした。見やると、そこにはフードと仮面の人物が立っている。

「今し方その坊主を怪物にしたのは俺だ。」

「な、何!?」

「人を、怪物に…!?」

どよめく民衆を見ながら男は続ける。

「だが、こいつはお前らを守るために覚悟を決めたんだ。その仕打ちはあんまりだろ。」

男の言葉に、静まりかえる民衆。すると男は、明るい口調で言った。

「落ち込むなよ!こいつはあいつらを返り討ちにしたんだぜ!?喜べ!お前らは無力じゃ無い!奴等に一矢報いることができるんだよ!やられっぱなしは嫌だろ?」

「そ、そうか。俺たちだって、やられっぱなしじゃ無い!」

「やってやるんだ、俺たちも!」

盛り上がる民衆から少し離れたところで、名無しのライダーは隠れていた。

「あまりにも隙だらけだ。今ならやれる…!」

そう思い、動こうとするライダーが、止まった。

「…でも、またやり過ぎはしないか?」

振るった記憶のある、過剰な暴力。心の中で、自分に問いかける。

「やって、大丈夫なのか?」

「じゃあ、俺はお暇するぜ。」

耳に入ったその言葉に男の方を見るが、もう遅かった。

「…いない。」

「おい。」

「!!」

突如後ろからかけられた声に飛び退くと、そこに立っていたのは…。

「デンジャラス…デザート。」

「アルトガで良い。それよりお前。」

アルトガが龍牙を睨み付ける。

「何で今やらなかった?」

「それは……」

言葉を返せない龍牙を見て、アルトガはため息をつく。

「ハァ……お前、グズだな。」

「…………そうさ。」

「あぁ?」

「俺はグズだよ。この世界に来てから良いこと続きで調子乗ってたけど、俺はやっぱり……」

パン!そんな高い音がした。アルトガが龍牙を引っ叩いたのだ。

「お前の自虐にゃ興味ねぇんだよ。さっきやらなかった理由を話せ……別にブチ切れはしねぇよ。」

「……正義を盾にするのが、怖かった。」

「ほう。」

「それを盾にして過剰な暴力を」

「嘘だな。」

唐突に、アルトガはそう言った。

「…………は?」

「お前は嘘をついている…自分自身にもな。」

「どういうことだよ。嘘なんか…」

「お前が真に恐れているのは、『孤立することだ』。」

その一言で龍牙が固まる。

「ギスギスした空気は嫌い。そういう奴はすぐ自分を騙す。空気を壊さないためにな。」

「……………………」

「でも、こうしている間にも、あのガキが何をされているか想像しただけで胸が痛い。助けたい。」

「……………………」

「でも、今あいつを倒せば、自分は悪者の烙印を押される。大衆からの冷たい視線、そんなの耐え切れな」

「じゃあ、どうすれば良いッ…!」

声を荒げる龍牙を、アルトガは容赦なく殴り飛ばした。

「世間様の評判か、愛する女を救うのか、どっちもなんて選べねえんだよ!一個捨てることもできない奴にゃ、何も守れやしねぇんだ!」

「!!!」

「俺はフルコースギャングという組織の『誇り』を第一に考える。俺の組織は最高だと思ってる。お前の『最高』を考えろ…龍牙。」


数分後、龍牙は立ち上がり、ヘルメットを脱いだ。

その横で、アルトガが言った。

「そういやぁ、ゲルモンドは『弱者が強者を見返す』…即ち、下克上が好きなだけだ。さっきのアレもその一環だ。」

「…もう評判はどうでも良い。気持ちを揺るがせるつもりか?冗談ならタチ悪いぞ、このタイミングで。」

龍牙の言葉にアルトガは高笑いする。

「ハッハッハッハッハ!俺はギャングだぜ?聖人じゃねぇんだよ。」

「…まあ良い。覚悟は決まった。有難う、アルトガ。」

「どういたしまして。ま、ここからはお前次第だ。政府はヘレシーキメラを潰しに明後日には騎士団を送るそうだぜ。」

「騎士団には知り合いがいる。そいつに頼んでみるよ。」

「そうかい。俺にゃ関係ねえ。好きにしな。」

「ああ…………好きにする!」

個人的にこのシーン大好きです。書いててメチャ楽しかったです!読んでいただきありがとうございました!

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