Mock game of introductory chapter
久々の更新。
楽しみにしてる人皆無だと思うから最初から期待していない。
閲覧者には拍手をプレゼント。
そんなに長くは無いが、最近書くのが時間かかるので疲れた。
――――名も無い場所にて。
見渡す限りの砂漠。
辺りに人などいるわけも無く、そこにいるのは神無と悠菜の二人。
どうやら、草薙先生は本当に悠菜と戦わせるようだ。
確かに、砂漠は時々起こる砂嵐と体の水分を全て蒸発させる程の暑さ以外は戦闘に向いている。しかし、別に砂漠じゃなくてもいいのではないか…。
神無には苦手なものが二つある。
一つは、救いようの無い人。欲望に忠実で自分に甘い、そんな人間が神無は昔から大嫌いなのである。
もう一つは、暑さ。神無は魔法で温度調節された空間で幼児の時から過ごしている。出掛けることがあったとしても、北の国や雪山ばかりであった。だから、初めて夏という季節を南の国で味わったとき、神無は味わったことのない感覚を感じた。体からエネルギーが抜けていく倦怠感、頭がボッーとして脳の回転がスローになる感じ。要するに、ダメ人間になるというわけだ。
そんな状況下で、茶髪のイケメンと勝負をするのである。
面倒だ。
腹の探り合いは終わり、神無と悠菜は互いを睨み付けている。互いの視線は交差し、まるで泥船に乗っている感覚。いつ、崩れるかわからない、小さな均衡。
だが、不思議とこの緊迫感の中、両者の口元は微笑を浮かべていた。
先に口を開いたのは、沖世悠菜だった。
「上治って、どこの派閥の者だ?」
荒い呼吸を抑えながら問うた。
神無は答える代わりにクスっと声を出して笑った。
「何がそんなに可笑しい?」
悠菜は初級魔法《レベル1》の炎の弾丸を飛ばした。
神無の顔面を目掛けて飛んだ。それは神無に近づくにつれて、不自然に右方向へとズレていき、神無と離れた所へ飛んでいった。
神無は、悠菜の方に目を向けてクスっと微笑んだ。
「雑談は終わりにして、そろそろ終わらせようか」
「いや、お前は全く喋ってないから」
悠菜は神無に思わず、突っ込む。
「うるさいな…、人のキャラ作りに文句言うな!」
「はいはい。そうですね…」
「うるさい、ツッコミ系のモブキャラ」
「酷い言い様だな…」
突然、神無の右手から空気の渦が広がり始めた。
あっというまに、神無と悠菜を囲んだ。
「何だそれは?」
「………」
神無は答えない。
「まあ、いいさ…」
悠菜はトランプマジックの如く、空間から符を取り出した。そして、符を悠菜を中心に円のよう空間に貼り付けた。
悠菜が発動させるのは、円術。
符術の創始者である御津界が愛用してた術で、遠隔攻撃に適している。
術式は符を円形に並べ、術者は円の中心で構える。術者は氣を円の中心から広がるように篭めるだけ。
言葉上は簡単だが、実際に行うには2つの難点がある。
一つ目は氣のコントロールが難しいこと。
円術をするには、符の空間維持の氣、符に篭める氣、術を行使する氣。最低、3回もの氣を同時に篭めならない。同時に氣を篭めるというのは、右手と左手と口でペンを持ち、違うものをかくようなもの。難しいとかいうレベルではない。
二つ目は円術を行使している間術者が動けないため無防備なこと。
円術の発動条件として、術者が円の中心にいなければならない。もし、中心から離れると円術は停止してしまう。それ故、防御も回避も難しく劣勢に陥りやすい。
リスクが大きい故、並みの術者は一人で円術を行使したがらない。
大概、3人以上で円術を行う。
しかし、悠菜は違う。
悠菜は一人で円術を行使するために、二つの難点を魔法で解決した。
符の空間維持の氣と防御を魔法で行うのである。そのおかげで、氣の同時行使が2回で済む。
しかし、魔法と氣を同時に行使するのである。
右手で日本語を左手で英語を同時に書くようなもの。結局、難易度は変わらないが術者が無防備になるリスクはなくなった。それに、円術に魔法を重ねて使うことで攻撃の威力が格段に上がるというメリットができた。
悠菜は符に氣を込め、術を行使する。
追尾型の風刃竜巻。
風の刃による竜巻である。
さらに、魔法を加え、砂の刃を造り竜巻に混ぜる。
風の刃・砂の刃を持った竜巻は神無を追い続け、いづれ神無を八つ裂きにする――――筈だった。
神無が右手の親指と人差し指を擦り、パチンと鳴らすと竜巻は跡形もなく消滅した。
「………何を、し、た?」
悠菜は呆然とした顔で神無を見る。
神無は興味なさげに悠菜を一度見て、もう一度指を鳴らした。
――――柘榴学園の教室にて。
「草薙先生、何の用なんですか?」
桜夜は草薙先生を睨みつける。
「怒るなよ。ちょっとした事情があるんだ」
「何ですか?」
「学校に妖皇軍第二隊隊長が来た」
「………!! 本当ですか?」
「本当だ」
「まさか彼らが派遣されるなんて………」
「幸い私の部下が何とか誤魔化し通したが、今後ばれる可能性もある。だから、星桜と桜夜はこれをつけてくれ」
草薙校長は銀色の輝きを放つ首飾りを2つ、桜夜に渡した。
「銀製の弾丸に銀製の十字架………。悪趣味なデザインですね」
「そっちのほうがばれないからな」
「はあ………仕方ないですね」
桜夜は溜息を吐いた。
――――名も無い場所にて。
「もう終わりか………黒王家も廃れたものだな………」
茉莉亜は呟いた。
神無と悠菜のフィールドとは異なり広がっているのは草原。そこで、茉莉亜は仁王立ちし、倒れている星桜を見下ろしていた。
「まだ終わってないよ」
星桜の周囲に黒い霧が漂い始めた。黒い霧は茉莉亜の方まで広がり、辺りの視界を奪い拡大し続ける。
「何だこれは?」
茉莉亜は黒い霧に覆われ、はっきりとしない視界の中呟いた。
「塊」
黒い霧は段々と小さく凝縮し、小さな黒い球となった。黒い球は轟々と音を出しながら、空間に停止した。
「波」
黒い球は爆発した。
FILE 3:妖皇軍
所属:黒
詳細:各部隊からの選りすぐりの人選で選抜され、3部隊で形成されるエリート軍。1部隊に隊長、副隊長、隊員8名の合計10人。
鉄則:黒血に剣を捧げる