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解答編

犯人が仕掛けたトリックはわかった。けど、それができるのはあの人とあの人。2人も犯人候補がいる。一体どっちだ? 当てずっぽうで言うってのもカッコ悪いし……。

犯人がわからず、俺は少し迷走していた。トリックは回転寿司らしいトリックだった。

考え事をしていると、鑑識の制服を着た人が海藤かいとうの近くに寄ってきた。

「海藤刑事、毒がどこについているのか判明しました」

「ほう、どこだ?」

「シャリです。シャリに毒が含まれていました」

何かのプリントを渡し、鑑識は去っていった。俺は海藤が持っているプリントを覗き込んだが、それは毒の成分などが書かれているプリントだった。

シャリ……。

シャリ……。

シャリ……。

回転寿司……。

回る……寿司……。

はっ!

ついに犯人がわかった。犯人は、あの人だ! それに、俺がすぐに客を店に留めさせたから犯人はアレを始末できていないはずだ。

「刑事さん、わかりましたよ。犯人が」

「お前もわかったのか?」

「“も”というと海藤刑事も?」

「ああ……まあな」

「やります? あれ」

「やるか。あれ」

「いきますよ? せーの……」

「「犯人がわかりました! 犯人は、この中にいます!」」

俺と海藤の2人は同時に言った。息がピッタリ合い、俺はなんともいえない変な感覚を覚えた。容疑者の3人を集め、他の客はとりあえず連絡先を聞き自宅に帰した。

「ちょっと、何で私たちは帰ったらだめなのよ!」

播磨は富田に食ってかかった。富田は少したじろぎ、「そ……それはですね」と、モゴモゴと口を動かしている。

「犯人がわかったんですよ」

俺は播磨に告げる。

「犯人だって? 私じゃぁないよ」

播磨が犯人ではない事はわかっている。犯人は、富所とみどころ鮫咲さめざきこのどちらかだ。そして恐らく犯人は––––。

「今度は俺の番だ。犯人は鮫咲さん! あなただ!」

海藤は俺の前に躍り出て最高にカッコいい見せ場を奪った。

「なっ––––。なんで私なんですか! そもそも、あの寿司は飯島さんが勝手に取った寿司なんですよ? どうやってあの人に狙い撃ちできるんですか! 寿司に名前でも書いてましたか? それとも、殺すのは誰でもいい、無差別殺人だったとでも?」

「無差別殺人でもなんでもないですよ。犯人はきちんと飯島さん1人を狙い撃ちしたんです。魔法を使ってね」

今度は俺が犯人の鮫咲に説明する。全く、やった本人が1番よくわかっているくせにどうしてこうイチイチ説明せにゃならんのだ。これだから解答編は面倒なんだよ。

「は? 魔法? まさか私が魔法使いとでも?」

「ま、この探偵が魔法って言ったのは一種の比喩ひゆだよ。答えは簡単だ。アレだよ」

海藤はレーンに乗ってある皿を指差した。そこには金色と書かれた皿がある。それを見た鮫咲は言葉を失い、脂汗が滲み出していた。次は俺の番だ。

「被害者が座っていた席は金色。被害者はマグロを注文した。その時あなたはシャリを握りその中に毒を入れた。違いますか?」

「ま、待って! それなら、富所さんも同じ事ができるんじゃありませんか?」

鮫咲が反論し、俺は後を海藤に譲った。

「それは毒の場所だよ。シャリに毒を入れるなんてのは客の富所さんなら絶対に目立つ。できてマグロの表面に塗るくらいだ。シャリン中に毒を入れる事ができるのはそれを作る本人しかできないんだよ」

「た……確かにそういう事になりますね。でも、それはあなた方の想像に過ぎない。見たんですか? 私が毒入り寿司を握っているシーンを」

さて、こういう証拠を求める時はたいてい犯人は切羽詰まっている時だ。そろそろトドメを刺そう。海藤は「タッチ」と俺の肩に手を触れた。

「証拠ならありますよ」

「なに?」

「毒を持っていくのは普通どうします? 小瓶か何かに入れますよね? あの時、俺はすぐさま客を帰さないようにした。誰も店から出ていない。つまり、あなたはまだ持っているはずですよ? 毒が付いているビンがね!」

俺が最後の言葉を言う前に、鮫咲はガクッと膝が曲がり、床に手をついていた。認めた証拠だった。

「どうしてこんな事を?」

と、俺は鮫咲に聞いた。

「復讐ですよ」

「復讐?」

「5年前、私には当時付き合っていた美沙みさという彼女がいましてね、美しい女性でした。私は彼女といるだけで毎日が幸せでしたよ。彼女は食べるのが大好きで、特に寿司には目がない方でした。5年前彼女は私を連れて銀座のある寿司屋に連れてきたんです。そして彼女はここのブリは本場の氷見ひみのブリ、最高のブリよって私に言ったんです。その時、飯島のクソジジイが隣に座っていて、因縁をつけてきたんです。氷見のブリだって? カッカッカお前、味覚は大丈夫なのか? これが氷見なわけなかろう! って、とことん彼女をバカにした。けど、今日はたまたまいつも仕入れている所が品切れで輸入物のブリを使っていたんです。それを、クソジジイは知っていた。美沙は知りませんでした。それを利用してクソジジイはネットに美沙の事を書き込んだんです! すると途端に2ちゃんねるとかで広まりましたよ。美沙はそういうバッシングの耐性はとても低くて、その1年後毒を飲んで自殺しましたよ。それでもあのクソジジイは今でもこんな事をやらかしている。許せなかった」

「それで、決行したと?」

「ああそうだよ! 同じ毒を飲ませてやってやったんだ! 食べる事が大好きだった彼女の分までなァ!」

髪を振り乱し、鮫咲は正気を失っていた。

「ふざけるなよ」

と、俺は小さく言う。

「なんだと?」

「お前、彼女は食べるのが大好きで寿司は特に好きだって言ってたよな? なら、どうしてあんたは寿司を殺人のトリックに利用したんだ。今のあんたに、そんな事を言う資格はねぇ! 悲しみは必ずある。それを乗り越え、あんたは強くならなくちゃいけないんだ。彼女の気持ちを踏みにじるつもりかよあんたは!」

俺は鮫咲に言うと、鮫咲は意気消沈し、目から涙が大量に溢れ出した。

「あああああ。美沙……美沙アアアァァー」

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