作中神話要素解説
◇見えない手【クリーチャー】
「貴方が無残な亡骸を見つけたとする。
もしもその亡骸に、まるで巨大な手で首が握り潰され、引き千切られた跡を確認できたとしたら、貴方は一刻も早くその場から逃げ出すべきである。
なぜなら、そこには闇に溶け込む恐ろしい異形の怪物が潜んでいるかもしれないからだ」
その犠牲者に残された無残な跡から『見えない手」と呼ばれる事もある。
その正体は満たされた闇の奥から現れる悪夢の獣であり、闇の大地母神とされるシュブ=二グラスの生み出した怪物の一種である。
その姿は足の生えたイソギンチャクと呼ぶのがふさわしいが、体格はバッファローを上回る。
頭部と呼べる形は無く、五本の長い管が首から伸びており、捕食対象に突き刺して体液を吸ったり内臓を溶かして吸収するのが主な使用用途だが、相手に絡みつかせて絞め殺したり、部位をもぎ取る事も可能な器官である。
また、脚は歩行だけではなくちょっとした木を登る事も可能なほど器用であり、壁に張り付く事すら可能である。
一見ムーンビーストと似ているが、知能は高くはなく本能的に行動する。
しかし、最大の特徴は何と言っても闇と体色を同化させる能力だろう。
色のついた液体などが降りかかると僅かな時間、その体の形を浮かばせてしまうだろうが、すぐに人間の視覚では捉えられなくなる。
一方、日光は苦手であり、本能的に避ける傾向がある。
ただし、電気灯は弱点と言えるものではなく、むしろそれを頼りに人間を襲う可能性もある。
この恐ろしい存在は幸運な事に地上ではほぼ遭遇する事は無い。あるとすれば、シュブ=二グラスについて記された忌々しい魔道書の一節に記された召喚の呪文と魔法陣の儀式で呼び出すくらいである。
古代ムー大陸では、シュブ=二グラスの信者が重罪人を処刑する際に利用した、とも言われるが定かではない。
また、『異界のミント』と呼ばれるマジックハーブの匂いを苦手とするため、意図して召喚した者の庭には対抗策としてこのハーブが植えられている事が多い。この悍ましい獣は何故かそのハーブを避ける傾向がある。
もしこの存在と対決する事があるならば、必ず日光の下に引きずり出さなければならない。
日光に数分全身をさらせば、この獣は骨も残らず朽ち果てる。
しかし、この際に注意をしなければならない事がある。それは地下への逃げ道を与えない事だ。
もしも下水道にでも潜られたなら、この悪夢じみた獣を解き放ったも同然なのだから。
◇異界のミント【アイテム】
一説ではムー大陸原産の植物であり、現在では環太平洋のごく一部に原生する。
匂いはミントと同じ系統だが、微かに脳を焼くような異臭が混じっている。
繁殖力は通常のミントと同じく極めて強い。
このミントでミントティーを作って飲んだり、ミント風呂にして入ったりすると、意識が混迷として悪夢を見ると言われる。
一部地域では麻薬の一種として根絶が行われているが、魔道に係わる者たちの手で拡散しているのが現状である。