2.テーブルトークRPGとロールプレイング
テーブルトークRPGとは
TRPGとは、テーブルトークロールプレイングゲームの略称とされています。
ちなみに「TRPG」は現在日本において、ホビージャパンの登録商標になっています。
その為ホビージャパン以外で商品化されている作品については、似たような別の言葉を使用しているはずです。「テーブルトークRPG」等。
新作のゲームを作って売ったり、小説を販売する場合など、この単語を使用する場合はその事を知って置くことは大切なことです。
ただし、あまりにも言葉が普及されているために商業的に使用する以外は、お目こぼしされている気がします。仲間内の会話ではTRPGで、ホビージャパン及びそれ以外のゲームも含むと十分に通じます。
テーブルトークRPGとは元々アメリカで作られたシミュレーションゲームが発祥で、それを元に一人一キャラクターを扱うゲームに変更されたものでした。
細部を調整している内に、戦闘シミュレーション以外の要素を盛り込んでいって出来たものが現在のテーブルトークRPGとなります。
その名残があるためか、現在でも多くのゲームが戦闘要素を多く含んだ仕上がりになっております。
もちろん戦闘はテーブルトークRPGをやっていく上でとても楽しい部分であり、重要な要素であります。
しかしテーブルトークRPGの楽しさはそれだけではありません。他にもイロイロな楽しみ方があるのです。
テーブルトークRPGとロールプレイング
ゲームの楽しみ方の一つであり、テーブルトークRPGの語源ともなっている、ロールプレイング、日本語訳で役割演技と言われているものがあります。
これはゲームを進める上で扱うキャラクターと呼ばれるユニットにつけられる人物設定のことを表します。
例えばそれは、「先生」や「生徒」であったり、「戦士」や「魔法使い」であったりします。プレイヤーはゲームを進めていく上で与えられた役割に応じて演技をしなくてはいけません。
あるいは、役割に応じて様々な行動ボーナスがありますので、それらを活用して与えられた困難に挑戦することになります。
参加プレイヤーの数が多くなることで役割が増え、互いの長所短所を補うことで、より複雑な困難に立ち向かうことが出来るようにもなっていきます。
では、この役割を少しずつ複雑にしていきましょう。
「先生」は「若くてイケメンの新人教師」に「生徒」は「容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、他の生徒からの信頼も厚い生徒会長」と言うように。
この方がキャラクターをイメージしやすいですし、プレイをするに当たっても面白くなっていくことでしょう。
この設定をさらに深めていくことで、キャラクター同士の恋愛とか、友情などちょっと特殊な状況を作り出すことも可能です。
ただしやり過ぎには注意が必要です。みんなで一つの目標を達成するシナリオをやっているのに、キャラクター設定が目的に反発してしまい、一緒に行動出来なくなることもあるのですから。
慣れない内は、出来るだけ簡単で判りやすいな設定にしておきましょう。慣れてきたら少しずつ複雑にして、その設定の中で上手くやりくりすることでシナリオを楽しむことが出来るようになります。
例えば、「あるキャラクターのことを嫌っていて同じサッカー部で活動したくないとする。しかしサッカーで都大会に出場するにはこの学校のサッカー部が優秀な成績を収めなくてはいけない。とにかくそのキャラクターは嫌いで一緒のチームに居たくないけれど、病弱な妹に都大会での雄志を見せる約束をしてしまった。だから嫌いな奴でも協力して頑張らなくてはならない」と言うように、マイナスになる設定を別の強力な思いで上書きする方法などがあります。
なお、あくまでこれは一例であり、イロイロな人が、実に多彩で納得出来るやり方を成されていると思われます。
それこそが、ロールプレイングの楽しみ方の一つでもあります。
再三注意しますが、あくまでも楽しみ方の一つです。この楽しみ方が苦手な方も多数いらっしゃいますのでそこは上手く折り合いを見つけましょう。
何故こんなことを長々と記載しているかと言いますと、まさにこのロールプレイングを突き詰めた所に今回のセッションがあるから、とあえて私は言います。
ロールプレイングを突き詰めていきますと、キャラクター同士の利害関係が不一致となることがあります。
一般的なテーブルトークRPGにおいて、利害関係の不一致は推奨されるべき行為ではありません。この不一致によってシナリオ進行に不具合が生じることが多いからです。
特に初心者向けのシナリオにおいては、キャラクター同士が協力することを前提としたシナリオが多いです。そしてその方がセッションの全体管理も行いやすく纏まりのあるセッションとなるでしょう。
利害関係が一致していても、個人行動の多いセッションでは纏まりに欠けるときがあります。例えばセッションの始まりから終わりまで、プレイヤーキャラクター同士が出会わないとしたらどうなるでしょう。
そう言うセッションを行うことは可能ですが、特定のプレイヤーが行動している間、他のプレイヤーが暇になってしまい全体として纏まりのないセッションになってしまいます。
もちろん個人行動をすることがいけないのではありません。状況次第でグループ行動するよりもメリットを生み出すことは多いでしょう。是非行っていくべきです。
ただし、それにこだわりすぎることは面白さを減少させる行為になると思われます。
話を利害関係の不一致に戻します。
例えばキャラクターの個人目標が「世界一の金持ちになる」とします。この目標を持つキャラクターが二人以上居るとお互いの目的達成に対して利害不一致が発生します。なぜなら一番は一人しかなることが出来ないからです。
まぁ、この程度の目標なら考え方を変え、「複数のプレイヤーで一番になる」と目標を修正することも可能でしょう。
ここで言いたいことは「目標の設定次第で利害不一致が発生する」と言うことです。これはキャラクターを一人の人として考えていけば、当然ながら発生する問題です。
利害不一致を上手く修正してセッションを行っていくことが一般的です。ですがあえてこの利害不一致を利用してセッションをしてみよう。
そう思って行われたのが「国境を越えて」のセッションであります。なお、この思いつきについては参加プレイヤーに対して事前に伝えませんでした。
その方がより新鮮でナチュラルなロールプレイが行えると判断していたからです。
「国境を越えて」セッションにおけるロールプレイング
今回のセッションでは、各々のキャラクターに対して特別な設定がマスターより与えられています。その詳細については次章で紹介します。
まずはその設定がロールプレイングに与える影響について簡単に説明しておこうと思います。
各種設定はそれぞれ本セッションにおける個人的な目標が指示されています。そして一部ではありますがその目標がキャラクター同士で相反しています。
この個人目標は、プレイヤー個人にのみ公開されており、他のプレイヤーキャラクターの目標を知ることは出来ません。もちろん公開することを禁じては居ないのですが、あえて公開するメリットは殆どありません。
個人目標が他のキャラクターとどのぐらい相反しているかを知るには、ある程度自身の情報を公開する必要がありますし、セッション前にそれを公開することはデメリットにつながります。
例えば四章のキースですが、六章のクーナを暗殺することが目的です。この目的をセッション前にクーナプレイヤーに知られてしまっては、暗殺を達成することが非常に困難になることでしょう。
また、設定資料を手渡されてからセッション開始まで半日ほどのインターバルを用意しておきましたので、セッション開始までに疑問点をマスターに確認することも出来ました。
資料や質問を元に各プレイヤーはキャラクター作りを行っていきます。
もちろん特殊な目標を持っているキャラクターだけではありません。そうではない普通(?)のキャラクターを含めることで全体のバランスを取ってあります。
ゲームシステムにも幾つか仕掛けがあります。オリジナルシステムと謳っていますが、非常に簡単なシステムです。ルールを文章に変えて表記するとA4、一ページでおつりが来ます。なお、システムについては四章で紹介するつもりです。
これ程簡単なシステムを導入しているのは、プレイアビリティを高めるためです。キャラクターロールとシステムを同期することも可能ですが、それを行うと判定が複雑になりプレイアビリティを損ないます。
また、今回用意されたシナリオにおいて、キャラクターロールにランダム性を取り入れるとシナリオ崩壊に繋がることが判っているのでそれらを排除しました。
要約すると、システムに縛られず自由にロールプレイを楽しんでほしい。と言うことです。実際その試みは成功したと言って良いでしょう。
ある特定のシナリオを行う場合、それを表現するためにシステムを調整する。このことは有効な手段であると言っておきます。