涙人形
今日も私は、母親に殴られる。
私、井上 雫は母親が気に入らない事をすると殴られる。
頭や顔、腕など…上げたらキリがない。
その度に私は、涙を流す。
泣いたら余計に殴られるので、母親の前では泣けない。
殴られるのが一通り終わった後、私は一人で泣く。
その姿はまるで、人形みたいだな…と思う。
殴り返そうと思った事も、何度もある。
そんな事をしたら、きっと余計に殴られてしまうので出来ない。
それに、私が悪いんだから我慢しないといけない。
そしたらいっその事、人形になってしまいたい。
だけど、人形にも気持ちはきっとあると私は思っている。
人形以外になれるとしたら、何だろう…。
痛い気持ちも何もかも、なくしてしまいたい。
だけど、大好きなあの人の事も考えられなくなるのは…嫌かもしれない。
こんな時まで思い出してしまうのは、本当に好きだからなのかな…。
あの人がいるお陰で私は、涙人形にならずにすむんだと思う。
そんな事を泣きながら、思っていた。