ロクガウツノ01ドーコ ←
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この街、桜京市は平和だと思う。
あくまでも、世界一般的な平和で、平穏で、平淡だという意味だ。
少々刺激が欲しいと思うのなら他の街に行けばいい、俺はお勧めしないが。
理由は、この平和が、平穏が、平淡が、こんなにも保たれているのはこの街だけだからだ。
さて、紹介が遅れたけど俺はレオと言う。
もちろん、これは本名ではない。
この話で本名が出てくることはまずないと思ってもいいだろう。
これからも、この先も、きっとない。
俺はいつものように通学路を歩く。
蝉の声が煩わしい。
家から学校まではわりと近い方なのだ。
部活も引退、俺に残されたのは受験勉強だけ、その為だけの学校だ。
もちろん、これも俺なりに平穏を保つ行動である。
どうしてここまで平穏を保ちたいかと言うと、それが俺の定めであり、必然だからだ。
悪く言えば偶然だったからだ。
唐突に変な物が見えるようになった。 【偶然カラノ】
突飛な事件に巻き込まれた。 【必然デ】
当然のように殺した。 【定メナンダ】
そう、丁度このあたりだ。
このような十字路のど真ん中で、俺は魂を殺した。
死神よろしく、魂を狩った。
結局のところ、状況を飲み込めたのはそれから少し経った後の事だった。
強いて言うなら、この前出会った死神の言葉を借りたら、この状況を譲許した事になる。
有無なんて必要ない、やるしかない。
そんな不気味な言葉で丸めこまれただけなのだが。
さて、家の前に来たぞ。
今日はアイスでも食べながらテレビを観るか?
この馬鹿みたいに暑い中、頭も沸くのが普通だろう。
俺はあの事件以降、普通に執着するようになったのだ。
人間離れした異形の人間だから、せめて表面だけは普通でありたかった。
家の鍵を開けてゆっくりとドアを開いた。
そして俺は目を見開く。
白いノースリーブのロングワンピースを着た死神が、そこにはいた。
無表情で振り返る死神。
ふわりと広がるスカート。
死神なのに、白くて、黒い。
そして死神は開口一番こう言った。
「普通を装うんだったら私の電話くらいちゃんと出ろ」
「不通だったじゃないか」