バトコノカレダ
バトコノカレダ
まず初めに、今の状態を整理しよう。
この世は非常に不安定である。
不安である事が定まっているのである。
たとえば、誰かが死ぬとしよう。
突然の事故があろうとも、遺された家族が悲しもうとも、それはきっと【必然】である。
「偶然」ではなく【必然】だ。
各停電車が『横断歩道駅』を通過し、『脇見運転駅』を通過し、終点『ジ・エンド駅』に到着するような、立派な【必然】なのだ。
なぜここまで念を圧して説明するか、と言われたら簡単だ。
このような事例を「偶然」と思ってほしくはないからだ。
「偶然」とは、私が想定外だと思うほどのイレギュラーでなければならない。
そう、例えば……魂の寿命から諍い、漂い続ける浮浪物の出現などだ。
魂の寿命とはその名の通り、魂の寿命である。
本来、これは身体の寿命と密接に関わっており、身体の寿命を迎えた49日後に魂の寿命は迎える。
死した魂は天へと昇り、また再び生命として身体を与えられてこの世を生きる。
こんなものをわざわざ説明しなくても、わかっているだろう?
さて、冒頭でこの世は不安定だと言った。
不安定とは、まさにこの事だ。
私とて、魂ひとつひとつを監視できるわけではない。
ヒューマンエラーでは事足りない、神がかったエラーが生じる事がある。
それが先ほど話した「浮遊物」の話に繋がる。
「偶然」魂に未練があり、「偶然」神がかったエラーが生じ、「偶然」魂が寿命に諍う事が出来てしまった。
そう言った魂を私は「漂うもの」と呼んだ。
「漂うもの」はこの世の魂の循環を妨害し、生命に危害を加える事ができる。
心霊現象やら怪奇現象やらは、大体「漂うもの」のせいである。
そりゃあ、人間だって予想外の事があったら驚くだろう、私も驚くのだから。
しかし私はここから離れるわけにはいかない。
さて、どうしたものか。
そう考えた時に私は5秒で閃いた。
人間に私の一部の力を使って「漂うもの」を狩らせればいいじゃん。
こんな軽い発想だったが、善は急げとさっそく実行に移したところ…いやはや効率がいい。
その功績を称えて私は彼らを、皮肉の意も込めて“死神”と呼んだ。
後半が雑なのは仕方ない。
こんな事を話していたら早速、神がかったエラーが生じてしまった。
言霊とはよく言ったものだ。
ちゃんと仕事をしないと神様に怒られるから私も仕事に戻ろうと思う。
……私が神様、なんだけども。