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Act.4:二日目(2)【インターバル】おひるやすみ戦役・前編〜兵糧確保、それが罠〜


     ■


辞世の句を考えるので時間をください。

いや、別に命乞いしているわけではありません。



     ■



「ひろー」


 昼休みになり、僕たちは食堂に来た。

 授業終了を告げるチャイムと同時に月夜くもなしに連れられて来たにも関わらずバスケットコート二面分はある食堂は人でいっぱいだった。


「いつもこんな感じなの?」


 僕の隣に佇む月夜に聞いてみる。月夜は顎に指を添え首を傾げながら、


「んー、そうらしいね」

「……なに、その、らしいねって。いつもの無駄にある自信はどこに忘れてきたの?」

「だって初めてだし」


 僕の発言にやや拗ねたように月夜が答えた。


「来たことなかったの?」

「ううん。食堂自体は何度も来たことあるけど、基本的に昼休みの時は高等部専用なの。だからこの時間帯に来るのは初めてだったりー」

「そっか」

「あ、でも先輩の話だと場所さえこだわらなきゃちゃんと座れるって」


 何、その微妙なアドバイス。しかもこだわるって何をさ。


「隣に人が座るのが嫌だとか、トレイの返却口に近い方がいいとか、そんなのだよ」

「ああ、なるほど」


 とにかく臨機応変に空いてる場所にささっと座れって事か。


「そーゆーことでっ!」

「ことで?」

「あたしは場所にこだわりたいから迅速に行動しますっ!」


 周りの迷惑省みず大声で勇む月夜。どうやらアドバイスをくれた先輩に対して背反行為をするらしい。ん、いや、逆か。先輩のアドバイスを聞いた上で対処するんだもんな。だったらちゃんと受け止めているわけか。


「じゃあ、すずっち。あたしら席確保してくるから。食券の販売機はあっちね」

「月夜はごはんどうする?」

「あたしはコレ」


 僕の問い掛けに手にしたビニール袋を僕の目線近くまで掲げて見せた。中にはサンドイッチとパックのコーヒー牛乳が入っていた。

 僕はそれを確認したあと視線を月夜からずらし、教室から今まで一言も喋ってない彼女───月夜を挟んで隣の少女───弐条奈瑠にじょう・なるを見た。


 ───第一印象イメージは日本人形。漆を塗ったような髪を肩口で揃えたショートボブ。ややつり目の意志の強そうな瞳。雪のような白い肌に凛とした顔立ち。それに合わせて寡黙なていを取る彼女からは近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

 まあ、要するに月夜とは正反対の人種というやつである。月夜は人懐っこい子犬な感じで弐条さんは気品溢れる猫といった感じだ。


「あの、弐条さんは?」


 ごはんどうするの、という僕の問いに彼女は、


「お弁当」


 そう一言、簡潔に完結した。……まあ、同じクラスと言っても初対面だし、正直無視されるかもとかさえ思っていたので返事を返してくれただけで良かったと捉えるべきだ。それに生来口数が少ないのかもしれない。そう思えば……うん、別に嫌われている訳ではないと思える。


 そんなことを思いつつ僕は食券を買いに行くことにする。


「じゃあ買ってくるから席、任せたよ」

「おーよー、任されよ」

「あ、何かオススメとかってある?」


 僕の何気無い質問に眼をきらーんと、光らす月夜。


「ふっふっふっ。そりゃあ、すずっち、ミサキ定食に決まっているだわさ」


 だわさ?


「ふうん。キャラが変わるほどいいの?」

「モチっ! お金のない学生にも優しい低価格! 何より豚カツにしょうが焼き、酢豚に唐揚げの四重奏カルテットによるボリューム感っ! 学食におけるスーパーアイドルっ! そこの奥さんお買い得ぅ!」


 随分と筋肉質なアイドルだ。それに豚肉が多すぎる気配。節操無し定食と改めた方がいいと思う。あとそれだけあるなら牛肉があったっていいと思うのだけど。


「……わかった。参考にしておくよ」

「ぜひぜひ! ホント、オススメだから☆」


 月夜はニカリと笑いながら弐条さんを連れ立って席を確保しに行く。


 さて、僕もささっと買ってこよう。これでも一応男の子なんであまり女の子を待たすことはしたくない。僕は足早に券売機に向かった。



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