表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
出会いの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/18

第六話 ロンドミルの猟犬

 日が沈み、暗い森に身を潜める二人と一頭。


 ヴィクトルは息の荒いアロを落ち着かせるように水を与え、ライラにも水袋を手渡した。


「しばらくここで休む。追っ手が見えたら森を抜けて一気に逃げるぞ」


「はい……」


 身動き取る度、ガサリと鳴る音にも怯えてライラは水袋を抱えていた。


「火が見えるまでは大丈夫だ。今のうちに休んでおけ」


 ヴィクトルがアロと一緒にドサリと腰を下ろし一息つくと、ライラも水袋に口をつけた。


 ――ザクッザクッ


 やがて遠くからゆっくりと近づく足音。二人は息を潜める。


 ヴィクトルが木を背にして警戒をはじめている……アロの息はまだ戻っていない。ライラはなにか、自分にできることを考えていた。


 水袋……これが魔法の水だったら……。


「ヴィクトル様……」


「シッ」


 ――ザクッ……ザクッ……


 足音が遠のくのを確認してから、ヴィクトルは声を発した。


「ライラ、どうした?」


「あの……ヴィクトル様は水の魔法を使えますか?」


「あぁ、その水も魔法のものだ。それがどうした?」


 やっぱり! 炎の騎士とは言え彼は水も使える。それなら……。


 ライラは水袋に指を差し込み、光が漏れないよう慎重に治癒の祈りを唱えた。


生命(いのち)の輝きよ、我が指先に宿れ……」


 活性化の祈り……体力を回復し、身体機能を高める即興の活性の水(スタミナポーション)を作りだす。


「これを……アロとヴィクトル様に。少しですが、体力が戻るはずです」


 ヴィクトルの黄金の瞳が、丸く開いた。


「……こんな状況で、スタミナポーションを作ったのか?」


「はい……ガラス瓶でなくともすぐ飲めば効きます。触媒がないので、強すぎるかもしれませんが……」


「むしろ願ったりだ!」


 ぐび、一口喉を鳴らすと、ヴィクトルは大きく息を吐いた。


「はぁぁ……これは効くな。芯から熱くなる。アロ、飲みすぎるなよ」


 ――ブルルルル!


 アロが水袋から口を上げると、嘶いて蹄を掻き出しはじめる。


「ハハッ! とんでもないな! メディスンの名は伊達ではなかったか」


「お役に立てて、なによりです」


 足手まといにだけは、なりたくない。ライラは自分の役割を見いだし始めていた。


 ――ザクッザクッ


 火の手が上がり、まっすぐに足音が近づいてくる。


 ヴィクトルはアロに跨り、ライラを引き上げた。


「さぁ森を抜けるぞ! 枝葉に気をつけ、しっかり捕まっていろ!」


 かつてなく滾るヴィクトルとアロに振り落とされないよう、ライラは力一杯しがみついた。


 ――


 剣を燃やして灯りを灯し、バキバキと枝を払って逃亡騎士が行く。


 落ちる枝葉は火種となって、過ぎ行く道を燃やしていく。


「ご、豪快ですね」


「木々には悪いが、燃えて朽ちても森はまた生き返る!」


「でもこんなことしたら、みんな追ってきませんか!?」


「どうせ火を灯したら一緒だ! どうせなら遠くからも見えるよう、派手に逃げよう!」


「活性の水、効きすぎてませんか!?」


「そうかもな!? ハハハハハ!」


 背後には火を避けて追っ手が迫る。二頭足が速いのが迫るが、アロの速度も落ちない。ゆっくりと距離が縮まっていく。


「ライラ、手綱を持て。握っているだけでいい」


「は、はい!」


 ギュっと腕を引き寄せ、綱をつかむ。ヴィクトルは懐から小型の銃を取り出した。


 ――パンッ!


 馬が嘶き、一頭が沈む。硝煙が昇る銃をしまい、次の銃を取り出す。


 大きく体をよじらせて、両手で狙いをすませるヴィクトルの横顔が、ライラの眼前に迫った。


 ――パンッ!


 再度馬が嘶くも、その脚は止まらなかった。


「チッ……外したか」


 懐に二丁の銃をしまうと、綱をたぐり寄せた。


 耳がキンキンする……。


「銃はカンバンだ。あの一頭は剣で倒すしかないな」


「ど、どうしたらいいですか?」


「神にでも祈っててくれ」


 ――シュラン


 ヴィクトルが炎の剣を抜き、追い立てる傭兵は槍を構える。


 互いに右手に武器を持ち、左へ位置取りを奪い合う。背面に迫る槍は、いつでもライラに届くだろう。


 一触即発の空気が迫り、リーチの差で槍が先手を取った。


 剣が弾き、位置取りを奪う。ヴィクトルが左、傭兵が右。


 傭兵は体を捻り、馬を狙った槍の一撃が突き刺さる。腕ごと斬り払うも、アロが体勢を崩し、ライラが振り落とされた。


 ――ドサッ


 転がり落ちるライラ、体を丸めて痛みに耐えるも、衝撃で息ができない。


「ライラ!」


 ヴィクトルが踵を返し、ライラを迎えに行く。


 自力で立ち上がれないライラをヴィクトルが担ぎ上げ、アロに乗せる。続く追っ手の火の手が、周囲を取り囲み始めた。


「夜通し走らせやがって……その女を引き渡してもらおう」


「……断ると言ったら?」


「どうでもいい、お前は殺す」


 構えるヴィクトルを傭兵達が取り囲み、じわじわと距離を詰める。


「最後に一つだけ、お前達に伝えたいことがある」


 ヴィクトルが燃える剣を掲げ、もったいぶった口調で言う。


「なんだ……?」


「ようこそ、我がアムズフェルトの砦へ」


 一閃、龍のように横切る焔が砦を照らした。


 ――ドバババババン!


 横一列に瞬く火砲、弾ける跳弾、嘶き倒れる馬、踊るように倒れる傭兵達。


「はっ……?」


 ヴィクトルの正面に立っていた男だけが、煙の中で立っていた。


 ――ザッザッザッ


 ライラはその見覚えのある小鬼達の隊列と、先導する老魔導師の姿に安堵の息を吐いた。


 遠くから、見えていたんだ――


「お迎えが遅れましたかな? 若様」


「いいや、完璧だ。老練の魔導師(ブランド・ファイエル)


 ニヤリと口角を歪め、ヴィクトルは剣を片手に歩み寄る。


「さようなら、ロンドミルの猟犬よ。汝らに神の導きがあらんことを」


 騎士は炎の剣を振るい、最後の影を薙ぎ払った。

続きが読みたいと思ったらブクマ&評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ