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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
出会いの章

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第三話 没落のアムズフェルト家

 唸り声を上げ、女達を睨みつけるゴブリン。


 怯える女性を庇うように、ライラが前に出た。


「ヴィクトル様……彼女たちは傷ついているだけです。どうか……」


「……わかっている。お前達、人間の女より従順な同族の女を選べ。突入組が優先、足りない分は分かち合え」


 ヴィクトルが指示するとゴブリン兵団はその声に従い離れ、女達も安堵した。


「騎士さま……どうして、ゴブリンが従っているんですか?」


 女の一人がヴィクトルに尋ねる。


「お前達が今、オレに逆らえない理由と同じだ。……これ以上ゴブリンに関わりたくなければ、全て忘れて大人しく家に帰るんだな」


 女達はその物言いに反論することができず、ただ互いに慰め合い、やがて荷馬車で帰路に立った。


「彼女たちだけで大丈夫でしょうか?」


「ゴブリンらを連れて一緒に街に行くわけにもいかん。オレたちも一度家に帰るぞ」


「……家は、どちらに?」


「旧アムズフェルト領の砦だ」


 ――


 北のアルガス山脈に向かって、荷馬車が進む。


「見えたぞ。あの城がオレの家だ」


「……見た感じ、廃墟ですね」


 山間の朽ち果てた砦。かつては領土を守る関所だったのだろうが、あちこちに大砲の跡が残り、崩れ落ちていた。


「まぁ……実際廃墟だが、中は結構頑張って掃除したんだぞ」


 ヴィクトルが一生懸命掃除してる姿を思い浮かべ、ライラは少しはにかんだ。


 崩れ落ちた石の隙間を器用にすり抜けて、馬車は砦へと到着した。


「ありがとう御者ゴブリンさん。運転上手ですね」


「グギィ?」


「お前の馬使いが良かったとさ」


「グギー」


 ニンマリと御者ゴブリンが笑った。


「ゴブリンは動物を使うのは結構上手いんだよ。大型犬に乗る奴もいるぞ」


「……なぜヴィクトル様の言葉は、彼らに通じるのですか?」


「うん……? なぜかな……理由はわからんが、全て通じるわけではない。単純な言葉は覚えさせている」


「そうなんですか……」


 石造りの回廊を進むと、奥から長い髭を蓄えた老魔導師がやって来た。


「坊ちゃま! ご無事でなにより! そしてまたゴブリンを増やしましたな!?」


「ドル爺、坊ちゃまはやめろと言ったろ。増えたのは女ゴブリンが八人だ。あとは男ゴブリンが五人と子どもが……何人かだ」


「そんなに増やして教育と食料はどうなさるおつもりか!?」


「当面は芋でいいだろ……ギルド報酬もあとで入る。教育は任せる」


「そんな雑な! そしてそちらのお嬢様はどちらのどなたですか!」


「あ……私はメディスン家のライラと申します」


「これはこれはメディスン家のお嬢様でしたか。ワシはアムズフェルト家に仕える執事兼、教育係兼、錬金術師兼、魔導師兼、家政夫のブランドルと申します」


「肩書が長すぎる。どうせ爺しか残ってないのに見栄を張るな。さっさと飯にするぞ」


「騎士の見栄を張り続けるご主人様の家臣ですから仕方ありますまい。ささ、ライラ様も中へどうぞ」


「は……はい」


 ――


 砦の中は、確かに片付いていた。そして、メスゴブリンだらけだった。


 彼女たちは料理をし、家事をし、子育てをし、帰ってきたオスゴブリンを労っていた。


「まるで、ゴブリンの巣ですね」


 ライラは食卓に出されたふかした芋と、芋のスープを食べながら感想を述べた。


「失礼な。彼らの巣に比べたらちゃんと綺麗にしてある」


「掃除は主にワシとメス達ですが」


「ゴブリンが料理までできるなんて……」


「彼らに教えてできないことは発音と算術ぐらいだ。簡単な事は教えればちゃんと理解する」


「それは坊ちゃんが算術できないからでは?」


「……オレは算術ぐらいできる」


「ならなんで食料もないのにゴブリンを増やすんじゃい!」


「ゴブリン兵団は増やしつづける。そのためには女ゴブリンも必要だ」


「……近隣に噂は広がっております。そのうち、討伐令がでますぞ」


「その時は返り討ちだ」


 はぁ……と諦めたようにブランドルが嘆息したあと、ライラに話が振られた。


「ライラ様は、なぜこんな坊ちゃんについてきてしまったので?」


「あの、私は奴隷に売られて逃げようとしたところをヴィクトル様に救われて……」


「は……? 奴隷商を襲ったと言うことですか?」


「ちゃんと全滅させた」


 老魔導師はプルプルと震えはじめた。


「ち、ちなみにどこの商団で?」


「ロンドミル商会だ」


「ふぅ……」


 ――バタン


 老魔導師は天を仰ぎ、大げさに倒れ伏した。


「ブ、ブランドルさん!?」


「やっぱり……まずかったか?」


 ――ガバッ!


「まずいなんてもんじゃありません! 帝都御用達の大商会じゃないですか!」


 その言葉で、ライラは自分が置かれた状況に思い至った。


 治癒の力で財を成した貴族の家が、一体どれだけの値段で自分を売り払ったのかを。


「わ……私、とんでもないことを!」


 自分がここにいるだけで、彼らを窮地に追いやる可能性があると言うことに。


「……とんでもないことをしたのは坊ちゃんです。お嬢様はお気になさらず」


「なに、どうせゴブリンだらけの強盗騎士だ。逃げた奴隷がいようといまいと、何も変わらん」


 ――ザパァ


 突如、老魔導師の魔術がヴィクトルの頭上に水球を生み出した。


「あんたはちょっとは反省せい!」


 水浸しのヴィクトルは、怒りもせず髪をかきあげ、快活な笑い声をあげた。


「ワハハハハ! 許せ、ドル爺!」


 ゴブリンらがその声に乗じてギャハハと笑いはじめた。


「アハ……アハハハ!」


 ライラはその光景がなぜか可笑しくてたまらなくなり、数年ぶりに大声をあげて笑った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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