第二十三話 アルゴ砦再建計画
「商隊は月二組が四台ずつ、定期便として往復する。山ゴブリンがいなくなるまで優先的に護衛とし、二班が三日ずつ随行する。他は不定期だ」
「えっと……通行料が10✕2商隊×4馬車の往復で16ダリヴル、傭兵11人で22銀、三日で66銀……食費が浮くから約7ダリヴルを2回……ちょうど30ダリヴルです!」
カリカリと定期収入を算術したライラが、ゴブリンの食費にかかる目標金額の達成に喜んだ。
「良かった……とりあえず食費はなんとかなりそうだな。商隊からも一割引きで買えるから、これで暮らしは成り立つだろう」
「無事収支が黒字化したようですな。それでは本格的に、アルゴ砦の再建を検討するとしましょう」
「はい!」
ブランドル主導のもと、アルゴ砦の区画整備図がテーブルに広げられた。
「本来アルゴ砦は主砦と居住区です。現在はモットーと片側の城壁しかありません」
「今私たちが住んでるのがモットーですか?」
「そう、そして南に面した城壁部と城門、西部の温泉と鍛冶場が現在のアルゴ砦です」
「ふんふん」
「今後は北からの襲撃に備え、北の城壁を再建。この南北の城壁に囲まれたエリアが居住区のベイリーとなります」
「わぁ……お城みたいですね!」
「実際城だからな」
「少し狭いですが、ライラ様が出入りする以上、教会と治癒院は砦横のモットーに建てると良いでしょう」
「ありがとうございます! ちなみに果樹園は……」
「それはスペースがありません。東に下ったベイリーに果樹園をつくり、他のベイリーからは隔離しましょう」
「はい!」
「そういえば、なんで教会と果樹園はセットなんだ?」
「果樹は神様の恵みで、活性の祈りで芽吹き、治癒の祈りで元気を取り戻すからです」
「マジか……」
なんとなく宗教とは距離を置いていたが、エセル教が大陸を越えて信仰される理由がよくわかった。
「若は開拓経験がございませんからな。昔は開拓と言えば、教会の果樹園から始まるものだったんですぞ?」
「知らなかった……だからエセル教徒はみんな果実が好きだったのか」
「はい! 私は果実だけで生きていけます!」
ヴィクトルはライラの肉付きの良さにも合点がいった。最近はスラッとしてきたが。
「それと、いい加減オスゴブリンの居住区を分けて、不浄場も変えてくだされ」
「そうだな……そろそろ硝石も取れるだろう」
「硝石……?」
「不浄場でとれる火薬の原料だ」
「え……火薬って、ゴブリンの糞から作ってたんですか?」
「別にライラからも作れるぞ?」
「やめてください!」
「こほん……居住区は建築を依頼しましょう。宿と穀物庫も必要です、城壁はどうされますかな?」
「そっちはゴブリンに任せよう。門はともかく城壁の修繕ならずっとやらせてる」
「まずは、そんなところですな」
「ちなみに建築費はおいくらに……」
「さて……それはわしにもわかりません。職人と材料の運搬だけでも相当な費用です。現地で石材と鉄がとれるだけマシと言ったところでしょうな」
「……そういえば、ヤクール族の家がポーションで買えるって言ってたような」
「ホウッ……確かに、ゴブリンならそれで十分ですな」
「むしろその方が良いんじゃないか? ベイリーの外でも立てれるし、ゴブリン向きだろ」
「じゃあゴブリンのお家はクルにしましょう!」
――
ヴィクトルが傭兵に出立し、ユールのところに向かうライラ。
「ゴブリンのクル、建てるですか?」
「そうなんです、おいくらぐらいかかりますか?」
「売ったことありません。ヤクー10頭分の皮と毛、木と鉄が必要です。大きいの、その倍」
「そっか……鉄と木はご用意できると思いますが、急にそんなにヤクーがいなくなったら困りますよね」
「毛皮は蓄えあります。でも、クルなら古いのあります。修繕して、贈ります」
「え!?」
「ポーション、助かりました。私、クル建ちます、言いました。約束守ります」
「そんな……でも、助かります。ありがとうございます」
「もっと欲しいとき、毛皮二十枚、毛織物十枚買ってください。木と鉄あれば、クル作れます」
「はい、じゃあ早速なんですが、大きいクルをもう二軒お願いしてもいいですか……?」
いつも細いユールの目がくるっと見開いた。
「古いの一軒、毛皮40枚、毛織物20枚ですね。作るの人手いります。仕事なりますか?」
「いくらぐらいがいいんだろ……じゃあ人手は一軒につき銀20枚でどうですか?」
またユールの目がカッと開いた!
「とてもいい仕事、すぐ人手集まります」
よかった、喜んでくれたらしい。
「それなら、お古の方も人手の20銀はお支払いしますね」
「はい、とてもうれしいです」
ユールが腕を掲げて感謝の意を示し、ライラと交易を終えた。
――
砦に戻り、帳簿をつける。
――コンコン
「ん? メイドかしら?」
ライラが扉を開けると、初めてみる女性が薙刀をかついだトモエたちに囲まれていた。
透き通るような青く長い髪、蒼玉の瞳。ローブ姿の妙齢の女性。
「キィ!キィ!」
「すいません、助けてもらえませんか……」
「あらぁ……?」
「うえぇん……こんなとこ来るんじゃなかった……」
「キィーー!」
師匠ブランドルの便りを受けやって来たアルゴ砦。ゴブリンの徘徊する閉じた城門を避け、こっそり中に侵入した女魔導師――アクアライナは、メスゴブリンに捕らえられ、ライラの前に引っ立てられた。
――ライラの帳簿
大きいクル一軒(10ダリヴル)
皮20枚 4ダリヴル
毛織物10枚 4ダリヴル
鉄と木 ランディさんのお酒と煙草
ヤクール族の人件費……2ダリヴル
3隊分で3軒。1軒はお古贈答品。
計22ダリヴル。
宿と穀物庫……わかんないのでヴィクトル様に。
残金256ダリヴル
★★キャラクター紹介★★
ヴィクトル・アムズフェルト
称号:元辺境伯嫡男・炎の騎士・追放騎士・強盗騎士・冒険者・ゴブリンキング
スキル:剣術・狙撃・馬術・指揮
術技:炎の剣・着火・燃焼・放熱・製水・風読
ギフト:異世界知識の断片・意思疎通・十進法の呪い




